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才能は開花する 2

「フウカさん、お久しぶりです!」

「ユナちゃんにセラくん、こんにちは。今回はどっちが何をやらかしたの?」

「ユナの方ですよ。二人分の能力検査と書類申請をお願いしたいんですけど、出来ますか?」

「その様子からして、中々に深い事情がありそうね。分かったわ、確認してみるからちょっと待ってて」

「完全に私が悪いとは言えないんですけどね……」

「はいはい、言い訳はまたあとで聞かせて」


建物の中央部分のカウンターに立っていたのは、ここの受付嬢として有名なフウカさんだ。

白銀の糸は腰まで伸びており、髪とは正反対に日本人を思わせる黒い瞳の左には印象的な泣きぼくろが描かれている。

白のブラウスに紺のロングスカートを合わせた姿はユナより数十センチほど高く、左胸にはユナやセラ同様に緑のバッチを光らせている。

手元にあるモニターをいじって数分も経たないうちに、すぐに顔が上げられる。


「今なら機器よりも直接見てもらった方が早いかも知れないわ。これが鍵ね」

「分かりました。ありがとうございます」

「あ、そうそう。ユナちゃんに伝言。タツが、近々また顔を見せなさいって」

「了解です!そのうち訪れるって伝えておいてください!」

「ええ、分かったわ。じゃあ、また」


セラとユナは丁寧に頭を下げると、二人を連れて歩き出す。

受付の奥へと進めば、幾つかの扉が半円状に並んでいる場所へと辿り着く。

扉の穴に鍵を差し込んで回したセラは、そのまま扉の先へ声をかける。


「警備守護者(しゅごしゃ)のセラです。ユカに能力検査のお願いに来ました」

「入りなさい」


丁寧にノックと要件を述べたセラに、若い男性の声が返答する。

会議室のような空間に若い男性たちがズラッと座っている中、ただ一人の少女が部屋の奥で立ち尽くしている。


「それでユナ、君は今回は何をしでかしたと言うんだ」

「真っ先に私を疑うんですねーー自身の持つ世界で魔法の練習をしていた際、突如視界が光で奪われ、この子たちが現れたわけです」

「近くに僕も居たのですが、全くその通りでした」

「ユカよ、能力検査をしてくれ」

「分かりました」


黒髪ショートの少女ーーユカは彼らへと足を踏み出す。

白いTシャツにジーパンとラフな格好ではあるものの、左胸のポケットにはユナと同じ金のバッチがつけられている。


「能力抽出」


ミライとソウトの頭上に謎の魔法陣が描かれる。

不思議そうに頭上を見つめる本人たちに対し、ユカは気に留める様子もなくある一点を見つめ続ける。

次の瞬間、橙色に魔法陣が光りだす。


「これって……」

「……何が、起こって……」

「能力検査。人それぞれが持つ能力を一時的に引き出すことで自分の力を発見するものだよ」

「ミライちゃんは懐中時計に青色が現れているから、時に関する防護魔法を使えるってこと。ソウトくんは紫にピアノだから、音に関する修復魔法ってことだね。二人とも凄い能力の持ち主みたいだね」


オーラのように見える色と、近くに浮かび上がる物体。

手を伸ばしても触れることのないそれらに、セラとユナによる説明を聞いた二人は興味津々のように見つめている。


「君の能力にはいつも関心させられるよ、ユカ」

「とんでもないです……彼らに特に異常は見られませんでした」

「ならばそれ以降の手続きも君に任せよう。ユナ、くれぐれもこれ以上の問題はよしてくれ」

「分かってますよ」


先程までの様子を傍観していた彼らが立ち上がると、腕時計を操作しては次々と姿を消していく。

最後まで笑顔を貼り付けていたユナは、全員が消えたところで安堵するかのように息を吐く。


「全く、形苦しくて仕方ないな」

「僕も彼らは好きじゃないよ。だって中身はただのオッサンだし」

「……あの、さっきの勝手に消えたんですけど、」

「あくまで一時的に能力を目に見えるようにするだけだから、消えて当然だよ」

「ユナ」


ソウトとユナの会話を遮るように、彼女とはあまり背の変わらないユカは先程よりもトーンを下げる。

その様子にユナは動じることなく、むしろお気楽に首を傾げる。


「特に異常はないと言っても、彼らが一般的な方法で来ていないことに変わりはないんだけど」

「でも書類申請には問題ないはずでしょ?」

「彼らのための仮拠点が確保できないけど、それでもいいなら」

「え、ここじゃダメなの?」

「最近、拠点側の土地が崩れてるって……僕、いつだか話したんだけど」


そう告げられたユナは、どこか遠のいていた微かな記憶を呼び起こす。

セラがそのようなことを話していたとき、魔法の研究結果をまとめていたことに。


「それなら私の世界でいいじゃん」

「はぁ?」

「却下。第一、あそこはユナの世界の一部でしょ?」

「あの、さっきから話についていけてないんですが……」

「「「あ」」」


ミライの一言で、綺麗に三人の声が重なる。

表情の変わらないユカと苦笑するセラに対して、ユナはやらかしたという表情で顔に手を当てている。


「……とりあえず座って。それから説明するから」


ユカの一言は、妙な静けさの中で響き渡ったのだった。

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