プロローグ
神界。
それは小説や漫画、ゲーム、映画、ドラマなど様々な物語がそれぞれ一つの世界として確立している。
勿論その数は知る由もない。
睡眠中に自然と行けるとされているも、詳しい条件も何処にあるのかも正確に判明していない摩訶不思議な空間。
その中心部分である「夢のような場所」、またの名の夢幻郷には多くの人が住み浸っている。
自分自身の世界を所有する者、治安を維持する者、世界に起きる様々な異変を対処する者。
「君は武士なんだね」
前触れもなく森林の影から姿を現した一人の少女は、闇に包まれたその存在に語りかける。
世界にはバグという、異常事態が日々発生している。
例を挙げれば勇者が魔王を倒し、ハッピーエンドになる冒険物語のはずが、勇者が魔王にやられてしまうバットエンドに変わるのだ。
そのような出来事を正しく修正する者をここでは修界者と呼ぶ。
「ヒカリよ、輝け」
栗皮色の髪を肩下で下ろし、メガネ越しから見つめる黒水晶の瞳。
その先には暗黒に満ちた濃霧で形取られた鎧が彼女に影響されるように輪郭が揺れ動いた。
左手で光り輝く黄色の球体を生み出し、宙に放った途端に彼女は煌々の中で武士との距離を詰める。
握りしめていた何かはいつしか細身の剣へと形を変え、真っ直ぐ悪を切り裂く。
「縺ェ縺懈?繧呈判謦?☆繧九?よ?縺ッ縲∵?縺ッ謔ェ縺上↑縺??縺壹□??シ?シ」
修界者は各々の持つ力を駆使し、日々バグと戦っている。
もし神界で命を落とせば、その影響は現実にも反映される。
バグを直すとは、それほど危険な行為であることを示唆する。
「っ、随分と抵抗してくるね」
漆黒の刀は辺りの草を舞わせ、剣で防ぎ切れなかった彼女の頬に僅かな切り傷を生み出す。
一歩引いた彼女が腕で頬を擦れば残留するは蛍の光ほどの微かな明かり。
片手で細身の剣は溢れる粒子を纏わし、瞬く間に背後へと移動してしまう。
シュッ、と空を切ったそれをいつしか一本のペンに変えてしまった彼女は左耳へと手を伸ばす。
「こちらユナ、任務完了を報告します」
これは修界者ユナという少女の物語。