プロローグ 3 【終】
「誰…」
僕が見ているとその鏡に移っている青年はやがて不気味に笑った。
「今のあなたには何を言っても通じないんだった…」
意味の分からないことを鏡の中の青年は言う。けれど、まるで口調が女性だ。
「仕方がないから私が止めていた記憶を開放してあげるよ…でないと君はこの実験のスタートラインにすら立てない」
その瞬間…頭の中に1つの名前が思い浮かんだ。
『城崎 恋』
「それが君の名前。それを思い出した君はどう行動する?」
頭の中でもやがかかった記憶が複数現れた。
「それこそが私の実験…私はあなあの記憶に干渉することができる。いや…正確に言えば【脳】にかな」
鏡の中の青年は淡々と話す。
「私はこの体を内側から侵略する。そこで死んでる研究員も私の実験で死んだ」
「………」
「まだ私の実験は終わってないんだよね。だけど私は今あなたのもう1つの人格としてこの体に保存されている。」
だから…と青年は付け加える。
「この体の所有権をかけて勝負しようよ。あなたが勝ったら私はこの体から潔く手を引く。だけど私が勝ったらあなたは消える。そして私はこの実験を完成させる。でもあなたの目的は私の実験を止めること」
鏡の中の両目が赤い瞳の青年はいたずらっぽく笑って元の僕に戻った。
「………」
鏡から目を離しそこにある死体を見て言葉をこぼす
「絶対に勝つ」
と。