表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

1-4 タイムマシン

 地球環境保護事業団の格納庫は体育館ほどの大きさだった。

 その内部には、見たことも無いデザインの流線形の乗り物が置いてあった。


 全長五メートル程の本体が、六本の着陸脚によって接地している。

 ちょっと、虫っぽい見た目である。


「パパ、紹介するね? この子の名前は『ガイアコア』。未来のパパがそう呼んでいた。わたしは、このガイアコアに乗せられて二十年後の未来からやってきたの」


 この、オブジェみたいな機械がタイムマシンってこと?


「リリカちゃんが、地球環境保護事業団の敷地内に『出現』したのは、二週間前のことよ」

 飯田青梅は、語る。


「調査の結果、この機械に用いられている技術レベルは、現在の地球の技術レベルから大幅にかけ離れている。本当に未来から来たとしか考えられない機械だということがわかったの」


 リリカは、本当に未来からやってきた。と言うことか?


「あなたの携帯にメールを送信していたのもこの機械よ」


 飯田青梅は、真面目過ぎて嘘をつくようなタイプではない。

 ドッキリにしては手が込んでいる。


 俺に、何が起きているんだ?


「ほら、あなたのパパに伝えることがあるんでしょ」

 飯田青梅が、リリカの背をやさしく押した。


「俺に、伝えること?」

「うん。それは、私が過去に来た本当の理由――」


 リリカは、俺を真剣な表情で見上げた。


「お願いパパ。ガイアコアに乗って。未来の人類を助けて欲しいの」

「人類を助けるって? 俺が?」


「そう。ガイアコアには、パパしか乗れない。そういう風に出来ている」


 おいおい。

 未来の俺は、一体なにをやったんだ?


「そして、この子なら敵を殲滅できる」

「いや、そもそも敵って誰の事だ?」


「人類の敵、宇宙人。アイツら宇宙人エルフを一人残らず殲滅して欲しいの」

「リリカ、なに言ってる。宇宙人エルフは敵じゃないぞ」


「パパ。あの宇宙人エルフは、人類の敵だよ。侵略者なんだよ!」

「いや。まさか、そんな……」


「パパは、私の言う事が信じられないの?」

 リリカは、悲しげな表情で俺を見上げた。


「彼女が持ってきた動画や画像には、未来の地球の姿が記録されていたわ。あの資料が本物ならあの宇宙人エルフ達は、侵略者よ」


 そう言って、飯田青梅は、タブレットを差し出した。


 そこに表示されていたのは、壊滅した都市部の様子。

 それに、表現するのも息苦しい、人類が虐殺された記録だった。


「あの日。あの宇宙人エルフは、人類に対してこう言ったの。『地球に人類の数は多すぎる。半分に間引くべきだ』って」


「マジか……」


 俺のアパートの隣の部屋に住んでいる、美少女エルフのディードも侵略者なのか。


「少し、考えさせてくれないか」


 いきなりそんな事を言われても、俺には何が真実で誰が正しいのか判断できない。

 俺には考えをまとめる時間が必要だった。


--

 その日の夜。

 俺は、アパートには帰らず、地球環境保護事業団の宿舎に泊まることになった。


 ベットに入って、目を閉じて思い出すのは美少女エルフのディードの事だった。


 異星人のくせに、子猫のように無防備で人懐っこい。

 困ったことがあると、すぐに俺の部屋にやってくる。


「ディードは、一人でちゃんと飯を食べているかな?」


 そう言えばアイツ、毎日俺の部屋に来て、一緒にご飯を食べている。

 もしかして、ディードは自炊できないんじゃないか。


 アイツは宇宙人だし、地球の調理器具の使い方がわからないのかも知れない。


「料理を教えてやれば良かった、かな?」


 だが、俺の娘を名乗るリリカの言葉を信じるならば、ディードは人類の敵で侵略者だ。

 俺が心配してやる必要は無い。


 そのとき、俺の部屋のドアがノックもされずに開いた。


「パパ。まだ、起きている?」

 ひょっこりと部屋に入って来たのは、枕を抱えたリリカだった。


「ちょ、リリカ。なんで勝手に入ってくるんだよ!」

「ドアに鍵をかけない癖。変らないんだね」


 そう言って、手慣れた様子で俺のベットに潜り込んだ。


「な、なんでベットに入ってくるの!?」

「えっ? 久しぶりに一緒に寝ようと思って」


「俺は、リリカと一緒に寝た記憶なんてないんだよ!」

「まぁまぁ、細かいことは気にしないで。今日は、一緒に寝よ?」


 そう言って、リリカは目を閉じた。

 そして、すぐに寝息をたてはじめた。


「この子、本当に寝ちゃったよ」


 その表情は、本当に安心しきった幼子のような寝顔だった。

 リリカは、誰も知り合いのいない未来から来て、本当は不安だったのかもしれない。


 でも、こんなに可愛い子が俺の娘?

 全然、実感が無いんだが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ