1-3 委員長と未来の娘
最近、迷惑メールが頻繁に送られてくる。
差出人名は、いずれも九門レイジ。俺の名前だ。
送信日は、なんと二十年後。
明らかに設定を間違えていてわかりやすい。
文面は二種類。
一通は、『エイリアンを信じるな』。
主に、近くに宇宙人がいるときに送られてくる。
そして、もう一通は『委員長に相談しろ』。
朝、学校に登校する頃に送信される。
委員長と聞いて思い浮かぶのは、俺のクラスの委員長。
黒目黒髪でスタイルの良いクール系美人だ。
成績優秀で、すごく真面目。
ちょっと近寄りがたい雰囲気があるが、意味ありげな迷惑メールの件はすごく気になる。
ちょっとだけ話をしてみて、関係なさそうなら退散しよう。
そう決意して、いつの間にか放課後。
俺は、意を決してクラス委員長の飯田青梅に話しかけた。
「よう、委員長。ちょっと時間ある?」
飯田青梅は、俺をキッと鋭い目つきで睨みつけた。
「九門君。キミ、どうしてもっと早く私に話しかけてこないの?」
えっ? なんで?
いきなり怒られてしまったぞ。
「用があるなら、委員長から話しかけてくれたらいいのに」
「それはできないわ。だって、メールにそう書いてあったもの」
「メール……だと?」
「あなたは受け取っているはずよ。未来の日付が付いた自分自身からのメールを」
そう言って、彼女はスマートフォンに表示されたメールの着信履歴を見せてくれた。
そのメールの内容は、いずれも『特異点からの連絡を待て』。
「事前情報から、特異点は九門君だとわかっていたけれど、こちらから余計なことはしたくなかったのよ」
あのメールは、ただの迷惑メールではなかったのか?
なら、『エイリアンを信じるな』という警告も本物なのか?
「あなたに会わせたい人がいるの。一緒に、来てもらうわよ?」
有無を言わせないその眼差しに、俺は頷くことしかできなかった。
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俺は、クラス委員長の飯田青梅に連れられて、郊外にある地球環境保護事業団の日本支部にやってきた。
地球環境保護事業団。
SDGsを推進するために設立された、環境保護を目的とする国際団体だ。
ゲート付きの厳重な警備。
広い敷地に、大小様々な建物。
さらにヘリポートや滑走路まで整備されている。
俺は、滑走路わきの、格納庫のような建物に案内された。
「これ、軍事施設じゃないの?」
「地球環境の保護団体ですが何か?」
飯田青梅に睨まれてしまった。
こわい。
「で、こんなところまで連れてきて、俺に会わせたい人。というのは誰なんだ?」
「あなたの、娘よ」
娘? は?
お前、何言ってんの?
俺、童貞なんですけど?
「彼女が、そう言っているのよ」
振り返ると、中学生くらいに見える黒目黒髪のツインテールの美少女が立っていた。
「あっ、パパだ!」
彼女は、俺に駆け寄ると躊躇せずに抱き付いた。
えっ?
どう言う事!?
「本物のパパだ。若い」
少女は、全身でぎゅっと抱き付いてくる。
俺より、あたま一つ小さい。
髪の毛があたってくすぐったい。
「ちょ、ちょっと待って。君は、誰?」
「そっか。まだパパは、わたしと出会っていないんだね」
そう言って、やっと少女は俺から離れた。
「初めまして、パパ。私の名前は、リリカ。あなたの娘」
「あの、ちょっと言っている意味がわからないんですが?」
「んーと。簡単に言うと、私は未来から来たの」
「未来!」
「それから、若いパパと出会って、ママより先に結婚してあげようと思って」
「け、結婚!?」
それ、時間旅行者が一番やったらダメな行動じゃないの?
飯田青梅に助けを求めると、生ゴミを見るような目付きで睨まれた。
本当に、どう言う事?