長期休暇
何とか学園祭も終わり今日から長期休暇だ。
チェリ我が家へ帰ってくる…はずだった。
…はずだった…と言うのも、帰宅予定日になってもチェリが帰ってくる事は無かったからだ。
「奥様!!」
普段は何事にも動じない紳士的な、私の自慢の執事長。
そんな彼が慌てている。
「どうしたの?まったく、貴方らしくないわね。チェリの帰省祝いで皆忙しいはずよ?」
そう、今日はチェリが学園から帰省してくる日。
私は久々にチェリに会えることを心待ちにしていた。
メイドたちも皆巻き込んで大きなパーティーを開くのだ。
「その…ワーリス様の事で…」珍しく言い淀んでいる。
「あーもう!はっきりと言って頂戴!チェリが帰ってくるまでそんなに時間がないんだから!私も皆も忙しいのよ!貴方だって忙しいはずでしょう?」
私の言葉にハッとした執事長は自分の仕事をしっかりと思い出したようで。
「申し訳こざいません。はっきりと申し上げます。慌てず最後までお聞きください。」
さっきまで大慌てだった人が何を言う。
しかし、ただ事では無いと直感的に感じていた。
「学園からの帰り道、ワーリス様のお乗りになられた馬車が消息を断ち、
その後、馬車は崖下ですぐに発見され、同乗していたワーリス様付きの侍女発見されましたが、ワーリス様は…未だ…」
…は?今なんて…?チェリが…何って…?
まだ執事長は話していたけれど…私の記憶はショートした。
ぽちゃん。
雫が水に滴る音がする。
「チェリ!チェリー!!」
正しく息が出来ない。肩で息をしてしまう。
硬い床に身体の痛みを感じ、体勢を起こした。
「やあ、目は醒めたかい?
あの世界の君はショック死したからねぇ。
あっ、そっか。あっちの世界にショック死って概念は無いからさぞ大慌てだろうね。」
「…っ!?誰!?」
「誰って、ひっどいなぁ× × × だよ。」
声がよく聞き取れない。雑音の音が混じる。
今なんて言ったの?この質問はまだ目覚めたてだった為か、声になる事は無かった。
「まぁいいや。今はそんな話している場合じゃないしね。」
「貴方は、チェリを助けたいか?」
急に真面目なトーンになりビクッっとしたが、私は迷わず即答した。
「ええ、必ず助けたいわ。」今度はハッキリとした声で答えた。
「まっ、そう言うと思った。だから貴方を選んだからね。」
?何か意味の分からないことを言っている。
「じゃあ、もう一回行っといで。代償を支払うことになるけどチェリを救う為なら良いよね。」
身体が沈んだ。水に落ちたような感覚なのに息はできる。不思議な感覚。
あの人はまだ何か言っているけれどよく聞き取れなかった。
結局あの人の顔も名前も分からなかった…
けれど、もう一回やり直しのチャンスを貰えたみたいだ…
今度こそ、チェリを助けて…み、せる…。
そこで私の記憶は途絶えた。




