学園生活
私たちはまだ気づいていなかったんだ、これが救済の無い悪役令嬢の物語だということに。
王立ブルネット学園
この学園では、平民も王族を含む貴族も同じ教室で授業を受けている学生であり、扱いに差異があってはならない。
初界生と上界生の二学年あり、初界生では様々なことを広く浅く学び、上界生では専門的な事を学ぶ事ができる。
入学式を終えたチェリ達は各々の教室へと向かっている所だった。
移動中、ホーを見つけたチェリはいつものように声を掛けようとしたチェリだったが、
「お久しぶりでございます。ホー・ツーラーでございます。」
それを遮るようにホーが挨拶をした。
いつもと違う態度に戸惑うチェリだったが、クローバに声をかけられ後ろ髪をひかれながらもホーの元を離れたのでした。
その日の晩、ピンが入学祝いにチェリの部屋を訪ねてきてくれた。
ホーのように入学と同時に他人行儀な態度を取られたらどうしようかと余所余所態度になってしまったチェリに気づいたピンは優しく語りかけてくれたのでした。
流石は一流商人の娘、人の些細な変化に鋭い。
いつもの態度に安堵し、昼間あったことをピンに話しました。
それから、ピンはこの学園のルールをいろいろ教えてくれたのでした。
「まず、この学園では身分平等を謳ってはいるけれど、はっきりとした差はあるの。
だから、人目があるところで私たちは貴方に気軽に話しかけられないの。」
その言葉を聞いたチェリは少し悲しくなったようだけど納得したようだった。
しばらく話し込んだチェリ達は門限ギリギリに解散したチェリたちの顔はいつも通りの笑顔だったのでした。
元々病弱と考えられていた為、ベットの上で多くの時を過ごしたが、チェリと共に庭園の散歩が日課になっていたが、チェリが学園に行って以来散歩をする事もなくなってしまい、健康上の悪化を囁かれていることを知っている為、今日は散歩に来ていた。
季節の花が咲き誇る中、庭園の丁度中央にあるベンチ付近に聞き覚えのある声に悪寒が走った。
「ねぇ、ナイル?
アイリーンには特注の道具を買ってあげたのに、私には買ってくれないの?」
「なんだと!あいつ勝手にそんな物を購入したのか!」
「もしかして、アイリーンに勝手に買われたの!?」
旦那の怒鳴り声に、出会うと面倒な事になると感じた私はそそくさと部屋へと戻ったのでした。
クローバのお陰で徐々にクラスに馴染み始めた、チェリは楽しそうに学園生活を楽しんでいるようだった。
しばらくは平穏な日々が流れた…と思われた。
私たちは知らなかったのだある噂が流れていることに。
そして、とうとうこの日がやってきてしまったのです。
ストーリー上では今日カナディア・テンプルが編入してくる。
当然チェリは王族に嫁ぐ身としての振る舞いは完璧なはずだ。
今日まで公務の合間に様子を見ていたけれど、チェリの性格が悪いような感じは無かった。
そんなチェリが編入してきたばかりのカナディアに意地悪するようには思えない。
意識を魔道具に戻すと、丁度カナディアが先生に促され挨拶している所だった。
「今日からこの学園で皆と学ぶ事になった、カナディア・テンプルです。これからよろしくお願いします。」
平民らしく明るく元気な挨拶に教室がざわついたが、「ようこそ、王立ブルネット学園へ、明るく元気の良い挨拶じゃないか、これから共に学ぼうではないか。」王子のこの一言に一瞬で空気が変わるのを感じた。
少し遅れて入學して来たことで、分からないことだらけのカナディアにクラスの皆は丁寧に教えるのでした。
ある日は移動教室へ共に向かう為に声をかける者、教科書がまだ手元に無い為に教科書を見せる事を口実に授業中に喋りだす者。
徐々に秩序を失いつつある教室に私は戸惑いを隠せなかった。
何故なら、それは私が知らないストーリーの裏側だからである。