転生
目が覚めた時私は知らない男性に抱きかかえられていた。
少し視線を動かすとそこには、その様子をベットに体を預け横になっている女性と如何にもメイド長と呼ぶのに相応しそうな初老の女性が微笑ましく見守っていた。
突然、私を抱えている男性が興奮気味に話しだした。
「この子が私たちのもとにやってきた天使なのだな!なんと美しい。綺麗に透き通ったエメラルドグリーン色の瞳。まるで背中に天使の羽が生えているようだ。」
「ええ。幼い頃の奥様によく似たお姿ですわね。」
初老の女性が続く。
ベットに横になった女性は複雑な笑みを浮かべている。
男性があまりにも私を高く掲げるものだから流石に酔った私は泣きだしてしまった。
そんな私を救い出してくれたのは初老の女性だった。
暫くし、落ち着いた私は泣き疲れて眠ってしまった。
「ねぇ、鈴音。私たちこれからもずっとこうしてヲタク話に花を咲かせることが出来るわよね?」
私は唐突に鈴音に問いかけた。
こんな事言うのも自分らしくないと思うが、さっき見たアニメ映画の影響か大人になった今でも自分のこれからについて考えこんでしまっている。
鈴音
親友で私のヲタク趣味を最も理解し納得してくれている私の良き理解者、熊田鈴音。
私が男同士の恋愛に嵌まった時も女同士の恋愛に嵌まった時も嫌悪感を示すことも無く、都心までわざわざCDを集めに走り回る!という計画をたてた時だってついてきてくれ、声優や2.5次元に嵌まった時もライブや舞台、トークショーまでついてきてくれた。
もちろんどんなアニメーション映画でも昔から全部一緒に行ってくれているとてもありがたい友達だ。
鈴音は一瞬きょとんとしたが、すぐにさっき観ていた映画を思い出したようで、「何をくよくよしてるの。私たちが離れるなんて事、未来永劫ないわ。例え神様が何度意地悪したって何度だって私は君を探し出すんだから。」ときっぱり言い切ってくれた。
さっき観ていた映画で主人公がヒロインに言っていたセリフだ。
本当に鈴音にはかなわない。
中学からの仲だが、こういう男前なところは一向に変わらない。
私はふふっと笑うと「そうね。貴方が私を見つけてくれる事を待ってるだけじゃなく私も貴方を探すか。これでかかる時間は半分こね。」
暫くして我に返った鈴音は耳まで真っ赤にして照れていたけれどそんな所もほんと可愛い。
これが彼女との最後の会話になるとは思ってもいなかった。
静かだったカフェに鈴音の携帯が鳴り響いた。
鈴音は私に断ってから着信を受けた。
暫く話し込んでいたが、携帯を切ると私に「ごめん、梨花。仕事入った。久々に呑めると思って楽しみにしてたのに…ほんとにごめんね。この埋め合わせはまた今度するから!」
「仕方ないよ。社長!頑張っといで!!」と少し茶化すと鈴音は照れたように「もう!」とだけ言うとお金を置き去っていきました。
私は鈴音を見送ると鈴音の置いていったお金をもってレジへと進み家へ帰った。
私が病院に駆け付けた時もう息を引き取った後だった。
彼女のそばで泣き崩れている鈴音のご両親になんて言えばいいのか分からず俯いていると、鈴音のお母さんが私に気付き、「梨花ちゃん。ありがとう来てくれて。」と気遣ってくれた。
鈴音のお母さんだって辛いはずなのにこうして私にまで気を使ってくれて、私は涙を堪えて鈴音のお母さんに抱きついた。
抱きつくと涙が止まらなくなって私は鈴音のお母さんと二人で泣いた。
私がこの場に来れたのも鈴音の秘書の人が私に連絡をくれたからだ。
これはお葬式の際聞いた話だが、鈴音は生前私の事を嬉々として秘書の人に話してくれていたらしい。
その時の顔はとても誇らしげでありながらもどこか子供のような表情だったそうだ。
私は涙を堪えるので精一杯だった。
その日ベットに入った私はそのまま深い眠りについた。




