アイリーン・ベア・エリザベート篇Ⅱ
これから話すのは私、アイリーン・ベア・エリザベートの二度目だと気づけなかった二度目の転生のお話。
どうして私がこの世界にやってきたのか思い出していた。
思い出していたというより、過去の空間に飛ばされたという言い方の方が適切かもしれない。
今だから言えるが、私はあの人を知っている。
目が醒めた時、私が最初に思い出したのはプライドだった。
まだ意識もはっきりしてなく、大分元の体に意識を占領されていた。
まだぼんやりとしてたらいきなり扉がひらいてとっても驚いたのよね。
あの頃は何にでも驚いていた気がするわ。
そしたら小さい女の子が入ってきて、私の事をお母様なんて呼ぶものだからとっても驚いたわ。
あら、私ったらあの頃ずっと驚きっぱなしね。
それもそうかしらなにせ二回目の転生だと気づかないぐらいだったし…
数日を過ごしてやっとここがゲームの世界だと気づいて、自分の子が悪役令嬢だと気づいて、あれよあれよと時が流れて、あの頃の私は何にも出来なかった。
今悔やんでも仕方が無いが、後悔している。
アランと顔合わせの時になって別室にやってきたチェリとアラン、どうやらお互いあまり良い印象は持たなかったようだった。
その日のチェリの荒れようは大変だったけ。
私はただ聞き役に徹して、アランの人柄を垣間見ただっけ。
次の日はハチェット達が我が家にやってきて、何事もなく事が進んだんだけ。
最後にハチェット・ツーラーさんにある依頼をしたのよね。
大分細かい指示と何に使うかもわからないような形状の魔道具をよく引き受けてくれたものだわ。
ツーラーさんには本当に感謝しかない。
チェリ達のお茶会とは名ばかりの読書会を影から見守っていたら1人の少女が気になったのよね。
最初はアランは王様だし、アランに恋焦がれる何処かのご令嬢だろうと気にしてなかったんだけど、どうやら違ったのよね。
と言うのも、その日の帰り私たちが帰ろうとしている時にも同じ子がいたのよね。
今見返すと、チェリが王宮に来たら大抵何処かに映っているのよね。
もしかしたらチェリと仲良くなってくれるかもしれないと思って、その子の事を調べたらジーニアス・クローバ・フラワーと言う子でなんとびっくり、チェリ達と同い年だったのよね。
これは学園でも仲良くしてくれるかもしれないって期待して、次の日クローバに声をかけに行ったのよね。
最初こそ戸惑っていたようだが、憧れのチェリと話す絶好の機会に最後は首を縦に振ってくれたんだっけ。
チェリにクローバを紹介して、2人が上手くいって安堵したんだっけ。
暫くは何もない日々が続いてんだけど、ある事件が起きるのよね。
チェリSide
グリーの10歳の誕生日と言うことでセレモニーが開催された。
そこではまだ、私がアランの婚約者であることは隠されていたわけだが、私に恥をかかせようとグリーは最初のダンスを私に申し込んだ。
それに気づいた私は逆にアランに恥をかかせようとある事を実行させた。
そう、とんずらしたのだ。
トイレに行く振りをして帰ってやった。
当然、グリーが激憤するだろうが、今回はダンスは無しと言う話を先に破ったのはあっちである。
これぐらい仕返しされても当然である。
当然次の日呼び出された私たち親子が謝罪することになったが、王様の前では自制しているグリーにどうしても笑いが抑えきれなくて、私は下を向き必死に堪えていた。
まさか、乳母まで引っ張り出され、教育が厳しくなることは想定外であったけどね。
鈴音Side
なんとかその場を切り抜け帰宅した私は乳母に最大限迷惑をかけないように対策会議を開いたんだっけ。
まぁ、乳母のせいにした時点で迷惑はかけているのだけれど、これ以上かけないようとにかく必死で対策を考えたわね。
あの私も私なのだけれど、この時の私は死ぬ前の私に戻ったみたいだったわ。
ふふっ。この時はとにかく必死で前世では、何をするにも資料は必須物だったからついつい作っちゃったのよね。
あんなに沢山の紙のやま乳母は一体どうしたのかしら。
久々に昔のように笑てしまた私を見て、彼はじっと私を見つめ何か言いたげな目を私に向けた。
視線に気づいた私は、務めていつも通りの声を意識したが、僅かに上擦った声で「何かしら。」と言ってしまった。
私は再び画面に集中することにした。
婚約発表まではあれこれあったらしいが、チェリとアランの婚約が発表され、チェリのもとにパーティーとは名ばかりのお茶会の誘いがたくさんやってくることとなった。
公表されすぐのダンスタイム、チェリ自らアランの前に現れたのよね。
今思うにあまり良い顔をしていなかったアランだが、形式通りにチェリに手を差し出した。
差し出された手を素直に受け取ったチェリは完璧にダンスを踊りきった。
私だけでなく、会場にいた誰もが拍手も忘れるほど。
でもこの会場で一番驚いた顔をしていたのはアランかもしれない。
その後も誘われるがまま踊り続けたチェリは本当に凄いと思うわ。
季節も進みとうとうチェリの入學式前日、ここでとっておきの魔道具である髪留めをチェリにプレゼントしたんだっけ。
そしてこれからお世話になる魔道具が、ハチェットさんに無理言って、細かく細かく細部まで指定して作ってもらったハチェットさんご自慢の特製の魔道具!
形だけで観ると前世の人間にはポータブルゲーム機にしか見えないが、あの世界の人には何なのか全く分からなかっただろう。
ハチェットさんは本当によく再現してくれたものだ。
チェリSide
お母様に挨拶を済ませて、馬車に乗り込んだ私はふっと息をついた。
グリーとの婚約が発表されてからひっきりなしにくるパーティーの誘いには正直飽き飽きしていた。
将来妃となる身として私とパイプを作っておきたいのも分かるが、正直ああいう腹の探り合いはあまり好かない。
お陰で他人の考えてることが分かるようにはなったが、その分気も遣う。
そんなパーティーも今日で一旦は無くなる。
學園でも同じような事が起こるかもしれないが、他所の家へ招かれることも無くなる。
そうこうしてると學園に着いた。長い長い道のりで途中に足場の悪い崖も通る結構な長旅だった。
入學式会場へ案内された私は式が始まるまでクローバが話しかけてくれたことで退屈せずに済んだが、これから毎日こんな生活かと思うと正直乗り気はしない。
そんな事考えていても仕方が無いなどと考えているとグリーの新入生代表挨拶がすみ退場する場面だった、
教室へ向かい道すがらもひっきりないしに話しかけられたが正直顔も名前も覚えられていない。
妃教育の一環で有名ご子息、ご令嬢こそ諳んじて言えるが、それ以外はからっきしだ。
暫くは何事もない日々だったが、カナディアが編入してきて流れが変わった。
グリーに対して時に厳しい態度はとっていたが、それも妃になるものとして当然だと思っていたし、言い合いになる事もあったが、グリーもこれが役目だと理解していた。
しかし、周囲の目は違った。
貴族としてのある程度の教育を受けているものだけならこんなことにならなかったかもしれないが、この學園はそうではない。
様々な人が居る中で核心的な事件が起こる。
あの日私はクローバに誘われておすすめの場所があると言われて後を着いていったの。
ぐんぐん進むものであまりに校舎から離れていくからクローバ。
信用しているといっても限度がある。
その時よね、校舎裏の人影に気づいたのは。
クローバに声をかけようとした時にはもういなくて、よく観察してみるといつも私の周りにいる子たちのように見えた。しゃがみこんでいる生徒が誰なのかは確認できなかったが、妃になるものとして不適切な言動は事実は自身の目で確認しておく必要がある。
茂みから出て何をしているのか問いかけた時にグリーが現れた。
どうもタイミングが良すぎる。
しかし、そんな事あの時は考えている場合では無かった。
私が中心となってカナディアを囲っていた事になったのだ。
とんでもない疑いだが、養護しているように見えて私が手をまわしたようにも見えるタイミングでクローバが現れたのだ。
私に疑いの目を向けたまま解散したが、私がカナディアを大勢で囲っていたという噂だけが広がってしまった。
元々カナディアを良く思っていない人がいたのは事実だが、私を担ぎ上げてカナディアと対立させようとしている何者かの策略にしっかりとはまってしまったのだ。
学園祭の準備の活気づいている学園内。
あんなことになっても私たちの學園生活は続いている。
普段とは違う学園に私を含め多くの生徒が胸を高鳴らせていたと思う。
特に私たち初界生は初めての学園祭、来年は先輩たちがしている事を私たちが行わなくてはならない。
高揚感と少しの覚悟を胸に忙しなくあたりをキョロキョロしていた。
そしてその時は来てしまった。
いつもは解放される事のない旧校舎、ここでその事件が起きてしまう。
カナディアが薄暗い旧校舎の階段から転落し、第一発見者になってしまったのだ。
どうして旧校舎にいたのか聞かれたので、素直に手紙が来たからだと答えたが、さっきまで持っていたはずの手紙が無くなっている。
さっきクローバに抱きつかれた時、私のポケットから手紙を抜き取ったことに気づいたのは今だった。
前に私がカナディアを囲っていた疑いをかけられて以来グリーとの関係はより悪くなっていた。
今に思えばこれも相手の策略なのだが、そんなことに当時気付くわけもなく、ただただ私たちと私たちを取り巻く環境を悪くさせていた。
鈴音Side
今日で学園生活は一旦終了。領地へ帰省する。
領地へ帰るために馬車に揺られ馬車一台がやっと通れるぐらいのいつもの細い崖路を通過しようとした時、チェリの乗っている馬車めがけて大きな岩が落ちてきたの。
確実にチェリの命を狙った犯行だった。
この作為的に引き起こされた事故で生き残った私付きの侍女のマリーは本当に運が良い。そして、生きててくれて本当に良かった。
マリーや馬車をひいてくれてた従者、馬たちには申し訳ないことをしてしまったと思うの。
こうなる事が分かっていれば、対処などを考えれたというのに…
どうしてあの時もっと早く私は思い出せていなかったのだろうか。
ここでやっとこれが初めての体験じゃないとぼんやり思い出したのよね。
もっと早く思い出せていれば…そんな事今更思ったて何の意味もない。悔やんでも悔やみきれない感情を心の底に感じながら続きを確認していく。
チェリが居なくなったと聞いて、執事長の言葉を最後まで聞くことは出来なかったわね。
あの時はそれどころではなく聞いていなかったけれど、執事長曰く、チェリ付きの侍女、マリーは何かを抱きかかえるかのような恰好で発見されたと言う。
それもちょうど、チェリがすっぽりと収まりそうな格好で。
すぐに騎士団がチェリの捜索に向かったが、血痕ひとつ残さず、騎士団の優秀な狼ですら臭いを辿ることが出来ず、一切の痕跡を残さず消えてしまったチェリの捜索に暗雲が立ち込めているらしい。
一切の痕跡を残さず消え去ったチェリ、我が国一番の腕を持つ医師でさえ、死因を判別出来ない心肺停止状態のアイリーン。エリザベート家からほぼ時を同じくして消えてしまった二人もの人間。
これからエリザベート家は呪われた家として末代まで国民どころか隣国にまで恐れられる事になるだろう。
「今回もずいぶんと長い振り返りだったようだね。」
いつものように音もなく現れた彼が話しかけてきた。
紅茶を人啜りした私は静かにカップを置くと余裕のある笑みを返した。
「ええそうね、少し疲れたわ。」
そう答えると私は自室へと帰った。




