長期休暇
何とか学園祭も終わり今日から長期休暇だ。
チェリ我が家へ帰ってくる…はずだった。
…はずだった…と言うのも、帰宅予定日になってもチェリが帰ってくる事は無かったからだ。
今日はチェリが学園から帰省してくる日。
私は久々にチェリに会えることを心待ちにしていた。
メイドたちも皆巻き込んで大きなパーティーを開く企画を立てていた。
「奥様!!」
普段は何事にも動じない紳士的な私の自慢の執事長。
そんな彼が珍しく慌てている。
こんなに慌てているのを見るのは二度目だ。
ん?二度目?朧げな記憶と私が格闘していると、執事長がおずおずと口を開いた。
「その…ワーリス様の事で…」珍しく言い淀んでいる。
「どうしたの?全くもって貴方らしくないわね。普段の落ち着きはどうしたの?」
私の言葉にハッとした執事長は自分の仕事をしっかりと思い出したようで、
「申し訳こざいません。はっきりと申し上げます。どうか慌てず最後までお聞きください。」
私はふと思った。この感じがデジャブではないかということに。
「本日、学園からの帰り道、ワーリス様のお乗りになられた馬車が消息をお断ちになりました。
その後、馬車は崖下ですぐに発見され、同乗していたワーリス様付きの侍女は発見されましたが、ワーリス様は…未だ…」
…は?今なんて…?チェリが何って…?
どうして私はこの感覚をどこかで覚えているの?
私は激しく混乱していた。
チェリの事も私自身の不思議な体験も、全部全部…。
まだ執事長は話していたけれど、私の記憶は。
ぽちゃん。
次に意識を取り戻した時、雫が水に滴る音がしていた。
「おかえり。」
見覚えの無い場所、そしておかえり。と言ってくれた顔の見えない子。
私は…
何かを思い出しそうだった時、頭に激痛が走った。
思わず呻きをあげてしまう。
違う、ここは初めて来る場所じゃない。
直観的に感じた私は、体勢を起こした。
「やあ、目は醒めたかい?」
「…っ!?誰!?」その子は少し笑ったあと自己紹介をしてくれた。
「誰って、ひっどいなぁ× × × だよ。」
声がまたよく聞き取れない。雑音の音が混じる。
今なんて言ったの?
この質問はまだ目覚めたてだった為か、音になる事は無かった。
「まぁいいや。今はそんな話している場合じゃないしね。」
「貴方は、チェリを助けたいか?」
急な真面目トーンにビクッっとしたが、私は迷わず即答した。
「ええ、必ず助けたいわ。」今度こそハッキリとした音で答えた。
「まっ、そう言うと思った。だから貴方を選んだからね。」
?何か意味の分からないことを言っている。
「じゃあ、もう一回行っといで。また代償を支払うことになるけどチェリを救う為なら良いよね。」
再び身体が沈んだ。水に落ちたような感覚なのに息はできる。不思議な感覚。
先ほど体験したことと言い理解は全く追いつかなったけれど、この体験が初めてではないことだけは体が覚えていた。
あの人はまた何か言っているけれどよく聞き取れなかった。
結局あの人の顔も名前も分からなかった…
けれど、もう一回やり直しのチャンスを貰えたみたいだ…
今度こそ、チェリを助けて…みせる…。
そう、私はここでの記憶おろか、二度目の転生である事も覚えてはいなかった。




