転生
基本1章完結型となっております。
エリザベート篇を読んだ後でも読む前でも大丈夫です。
あれ?ここは何処?
身体がフワフワとまるで雲のように浮いているような不思議な感覚。
見覚えのあるような無いような街並み…。
どうにか思い出そうと唸っていると叫び声に驚いてしまった。
叫び声が聞こえた方に視線をやると、ドアの開かれたまんまの黒っぽい車の脇に血溜まりを作り倒れている女性を発見した。
近くには包丁を持った人が立ってる。
何事かと近づくと、倒れている女性のどこか見覚えのある顔に血の気が引いた。
今まで毎朝散々鏡で見てきた見間違えるはずのない私の顔。
私はここに居るのに、アレは一体何なの?
周囲の人に気づいてもらおうと声を出してみた、しかし誰一人として私に気づくことは無く、触れようにも、触られない。
信じられないがとある可能性に理解が脳裏に過った。これは認めなければいけないかもしれない。
それが半ば確信に変わると、ある種の使命感に苛まれ、包丁を持っている人の顔は確認しなければならない気がした。
こちら側からでは確認できない位置にいるあの人の顔、回り込もうとした時辺りに靄がかかった。
「待って…まだ、見れてない…」
私の叫びも虚しく、あたりは真っ白になった。
息が苦しい、途轍もなく不思議な感覚。
さっきまで何かを見ていたのに、内容が思い出せない。
思い出さないといけない気がするのに…。もどかしい…。
「アイリーン様!どうされましたか?酷く汗をかかれているようですが…。」
気づくとメイド服を来た女性が立っていた。
「えぇ、少し夢見が悪かっただけよ。もう、大丈夫。」
本当は大丈夫では無いが、得体の知れないモヤモヤ感に苛まれる。
プライドが惨めな姿は見せるなと叫んでる様な気がしてついつい見栄を張ってしまった。
ノックもなく扉が勢いよく開かれた。
逆光によって顔はよく見えないがそこから現れたのは、小さな人影だった。
こちらによちよちとでもはっきりと歩いてくると、そこでやっと姿を確認できた。
縦巻きのツインテール、大きくクリクリとした 色の瞳、小さく丸い可愛らしい手足。
「お母ちゃまは起きたかしら!やっとお願いすることが出来るわ!」
幼い女の子が何かを言っている。滑舌や背格好からして3~4歳ってどこかしら。
「ワーリス様、はしたないですよ。」すかさずメイドが窘めた。
「うるちゃい!それよりお母ちゃま!私私だけの魔道具が欲しいわ!」
勢いに圧倒されていたが、きっとお母様と呼ばれているという事は、この子は私の子で、ワーリス様…ワーリス…
何処かで聞いた名なのよね…いったいどこだったかしら…
「ねぇ、お母ちゃまったら、まだ目醒めてないのかしら、それとも私のびぼうにみりょーされてしまったのかしら。」
「あぁ 、あれね、考えておくわ。」
二人がポカンとしている。
「ど、どうしたのよ」どうして二人がそんな顔をしてるのか分からず思わず尋ねてしまった。
メイド服の女性は言い淀んだが、「全く!お母ちゃまはまだ目が醒めて居ないようね!
まぁいいわ、また来てあげるわ。」
それだけ言うと颯爽と去っていった。
数日過ごして段々思い出してきた。
この世界は私の親友、梨花に猛プッシュされ高校生の時に初めてやった乙女ゲーム『ベアーズリーン』の世界であるということ。
更に、娘の名前がワーリス・チェリ・エリザベート。このゲームでの悪役令嬢だ。
そして、私の名前はアイリーン・ベア・エリザベート。
今の自分の身分は、皇太子妃。
うん。転生者<私>が主人公でもないまさかのモブ!!
ゲームにだって悪役令嬢の母親なんて出てこない。
そして、この乙女ゲームの悪役令嬢のあゆむ道は散々。
(目も当てれないぐらい悲惨だ。)
産んだ時の記憶は無いが、私の娘である事に違いはない。なんとしても回避したい所だ。
しかし、無情にも時間は刻々と過ぎていった。
何の対策も思い付かずに…
その間もチェリは歳を重ねるごとにお淑やかになるどころか我儘に拍車をかけていた。




