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作られた悪役令嬢  作者: 白羽鳥(扇つくも)
学園祭準備編
92/111

クラブ活動

 翌日の放課後、初めてのクラブ活動という事で、あたしたちは実験のために部室に集まった。

 机の上には二つの箱があり、それぞれ番号をふり伏せられたカップが数個と白い鼠が入れられている。


「これから記憶伝達の実験を行う」

「記憶伝達……ですか」

「そう、カップの中には一つだけ餌が入っている。片方にだけ正解を見せ、その記憶を情報が遮断されたもう片方へと送るんだ」


 部長はそう言って目薬を二匹の鼠に差す。そして一方の箱のカップだけを持ち上げた。餌以外は【ハズレ】と書かれた紙だった。

 鼠が餌に飛び付くのと同時に、もう片方に異変が現れる。餌の番号と同じカップを、カリカリ引っかき始めたのだ。どれが正解なのか、伝わっている。


「この目薬には『トドキ草』が使われていてね。神託を受ける際に神官長が飲む薬にも使われる原料なんだ。今から君たちにもこれを煮詰めたものを飲んで実験してもらう」

「えっ、あたしたちがですか?」


 トドキ草は薬草の一種ではあるけれど、普通の病気には使用されない植物だ。部長が言うように、神託の前に飲む事で女神様のお告げが受けやすい状態になると聞く。いきなりの実験台に不安になってラク様と顔を見合わせていると、アステル様が安心させるように彼女に話しかけた。


「ラク様、飲んだ後は『ショーユ』の味を思い出してもらえませんか?」

「ショーユを……?」

「鼠の実験では視覚の共有が成功しました。次は味覚の記憶を、リジー嬢に伝えて欲しいのです」


 あ……そうか。ラク様は『ショーユ』の製法を知らないので上手く伝えられなかった。けれど味さえ知っていれば、こちらの食材で再現できるかも。


(うえ……苦い)


 煮汁を飲んで手を繋ぎ、舌の感覚に集中するために目を閉じる。ラク様と一体になるイメージで……


(え、しょっぱい……?)


 すると口の中に残っていた苦みが変わった。辛い……いや、これは塩気? でもそれほどきつくはない。

 浮かび上がったのは生の魚……続いて焼いた魚や肉……さらには煮物。


(どうやら料理に直接かけたりソースの材料にする他、隠し味にも使われるみたいね。必ずしも辛くするばかりが全てではなさそうだわ)


「再現できそうか?」

「ラク様の話では『ダイズ』と呼ばれる異世界の豆を発酵させた調味料だそうですけれど、あたしの印象では『塩蔓』に近いと感じました」


 ラク様から送られてくる記憶情報が途切れた後、あたしはアステル様たちに味のイメージを伝える。塩蔓というのは雑草で、噛むとしょっぱい汁がじゅわっと出るので、幼い頃お腹が空いた時などつい毟って口に入れていた。(汚いと叱られたけど)


「なるほど、正当な手順を復元するよりも、他の食材から近い味を作り上げる方が早いか。発酵ではないのなら、保存は効かないだろうが」

「ラク様にご満足いただけるなら、充分かと」


 ショーユの有用性には興味はあるが、この世界で再現するには時間も手間も足りなかった。それでも記憶の伝達でラク様が求める味が分かっただけでも一歩前進だ。


(実験の体を装っているけど、これも魔法なのね)



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