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新入部員

 その日の昼食後、あたしはラク様と実験クラブの部室に向かった。ラク様の『ご友人』になってから、強制的にお昼は一緒にさせられるので、リューネはおかんむりだった。ロラン様とご一緒できる時間を奪う事になってしまい、申し訳ない。ただ、殿方がいると恐縮するからと、殿下も席を外してもらったのが救いか。


「ようこそ、実験クラブへ。部員は少なかったから、君たちが入部してくれるのはありがたいよ」


 出迎えてくれた部長が室内へと案内してくれる。机の上には数々の実験器具が所狭しと並べられていた。部屋の隅には籠が置いてあり、中には白い鼠が数匹いる。う……あれも使うのかしら。


「少ないって、何人で活動されているんですか?」

「幽霊部員を含めて五人だね」


 本当にギリギリだった。こちらに背中を向けて、ビーカーの中をかき混ぜていた生徒が作業を止め、振り返る。見覚えのない顔だったけれど、その不自然な無表情は間違えようがない。


「あ……」

「ああ、彼はアステル=ディアンジュール君。こないだまた部員が辞めて、クラブの存続が危うくなった時に、入部を申し出てくれたんだよ。遠巻きにされる境遇にいるけど、ここもあまり入りたがる人がいないし、過ごしやすいんじゃないかな」


 よろしく、と差し出された手を握り返しながら、あたしは他人のふりをする。アステル様の婚約者は『エリザベス』であって、リジーではない。

 一方、ラク様は戸惑いを思いっきり態度に出し、またも顔が変わったアステル様をジロジロ見てしまっている。当然、部長は訝しく思ったようだ。


「あれ、知り合い?」

「ええ、ディアンジュール伯爵は同じ委員会なんです。ラク様は殿下の誕生日パーティーでお会いしたと伺っています。……ところで、こちらでは調味料を作ってもいいと聞いていたのですけれど」


 あたしが話題を逸らすと、部長は苦笑いする。


「まあ、いくら何でも既存の調味料だったら、調理クラブに行ってもらうしかないけど。異世界のものの再現なんだろう? 実験クラブでは、数種類の薬草を調合して作った薬の効果の研究もしているんだ。だから名目上は『薬』という形になるね」

「薬、ですか……」

「ディアンジュール君が持ち込んだ薬草、君の領内のものなんだってね。上手く成果が出せれば、特許を申請できるかもしれないよ」


 部長に言われて、ハッとしてアステル様を見る。そうだ、あたしは男爵領のために、医者や研究者たちが作った薬をアステル様に託した。だけどそれだけじゃなく、自分でも理解しておく事が大切だ。ここに入部した経験も、将来的に役に立つかもしれない。


「学園祭まで日数はないけどさ、せっかくだから気楽においでよ。実験器具も好きに使っていいし」

「ありがとうございます」


 その日は初日という事もあり、部長が(ビーカーで)入れてくれたお茶を飲みながら、ラク様と実験室を見学した。



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