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襲撃の回想

 あたしたちは話を聞くため、ラク様を中心に円を描くように座る。絵本ではなく自分に注目されている事に、先ほどよりも緊張しているラク様だったけれど、好奇心に満ちた眼差しに押し負けるように口を開く。


「あ、あの日……私は、夜の神殿に、ひとりで来るように、言われました」

「一人で? どなたから?」

「わ、分かりません……部屋に、手紙が置いてあったんです。今、私を苦しめている状況から、逃げたければ、女神さまに祈れば、聞き届けられると」


 神殿の門は夕方には閉められるが、例外として夜通し祈りたい者は事前申請すれば平日の夜に利用できる。ラク様は最初、手紙の事は伏せて夜の神殿で祈りたいと殿下にお願いしたそうだ。


「その頃は、まだこの国の言葉に、慣れてなくて……でも女神さまなら、きっと聞いてくれるって、思ったから。一生懸命、祈ってたんです。そうしたら……出たんです」

「出たって、エリザベス様が?」

「いえ……ヒトダマ」


 誰?


 聞き覚えのない言葉に首を傾げるが、ラク様の拙い説明から察するに、どうやら異世界のお化けの一種らしい。と言っても、向こうで見た事はないそうなのだが。ラク様は礼拝堂を虫のように飛び回る炎の塊に悲鳴を上げ、廊下へ飛び出したという。


「そこで、並べられている鎧の間を、走って逃げようとしたら、斧を持った鎧が全部、倒れてきて……」


 ん?


 ラク様が話す当時の状況に、あたしは引っ掛かりを覚える。同じ事を子供たちも考えたらしく、次々に声を上げる。


「エリザベスさまに斧で襲われたんじゃなかったのかよ」

「違うわよ、それはお話。ラクさまを襲ったのは鎧の騎士四十人だから」

「でもさっき、倒れてきたって」

「ラクさま、嘘ついてたの?」


 子供たちの責めるような視線に涙目になったラク様は、必死で言葉を紡ぐ。


「ちが、違うの……あの時は、本当に襲われたって、思って……もう少しで、斧が当たるところだったし、私、こわくって」

「はいはい、みんな。ラク様をいじめちゃダメよ。彼女は、えーっと……ヒトダマ? を見た直後だったし、恐怖で何が起きているのか分からなかったのは仕方がないわ」


 ただでさえ斧を持ってるんだから、それが倒れてきたんじゃ、充分危ないわよ。

 あたしが庇うと、ラク様は救世主か何かのようにキラキラした目を向けてきたけど、早いとこ話を聞いてしまわないと、ドロン様が戻ってきてしまうわ。


「それでラク様、続きは?」

「は、はい……あの、それで廊下の反対側に、誰かが走り去っていくのが、一瞬見えました」

「それが、エリザベス様だと」

「わ、分かりません……エリザベスさまと同じ髪の色でしたが、後ろ姿だったので」


 何ですって? それじゃ、あたしだって断定はできないじゃない。まあ、確かにプラチナブロンドの髪なんて、公爵家ぐらいしか見かけないけども。いざとなればカツラも作れるわけだし……

 誰かが、あたしを陥れようとして仕組んだ事だったのかしら?



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