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顔合わせ

「はじめまして。私は、ラク=ハイドといいます。あなたの、お名前は、なんですか」

「はじめまして、ラク様! わたくしっ、リジー=ボーデンと申します。どうぞお見知り置きを!」


 あたしはテセウス殿下にラク様の友人となる事を承諾すると告げ、放課後にサロンへ招かれ彼女と引き合わされた。ここも『エリザベス』だった頃に殿下との交流のために何度か来た事がある……あの時の空気は最悪だったけど。


 そしてあたしたちと同じテーブルには、何故か殿下も同席していた。まあ、殿下にとっては庇護すべき対象だからおかしくはないんだけど、友人として仲を深めるには、何と言うか……


「どうした、お互い何か聞きたい事があるんじゃないのか」


 挨拶を終えてしまうと沈黙が続いたので、殿下が無理やりその場を取り仕切る。お見合いかしら?

 やがておずおずと、ラク様の方が口を開く。


「リジーさまは、好きな食べ物は、なんですか」

「わたくしの好物ですかっ? 胡桃パンと川魚の香草焼きですわ!」


 口調は狙って明るく振る舞ってはいるけど、自己紹介の内容は本当だ。『エリザベス』が同じ事を聞かれた時には用意された答えがあったので、差別化できてるんじゃないかしら。


 それはともかく、ラク様の話し方にはまだ少したどたどしさが目立つ。この世界へやってきた当初は言葉が全く通じず、読み書きすら覚束なかったのを考えれば、かなり上達したと言えるのだが……


 そうしていくつか質問に答えていると、殿下が口を挟んできた。


「さっきから、ラクばかりが質問しているじゃないか。ボーデン男爵令嬢、そなたからも何かないのか」

「何かと言われましても……で、ではラク様、苦手な食べ物などおありでしょうかっ?」


 戸惑って声が小さくなった時、殿下の眉がピクリと動いたのを見て、慌てて高音で訊ねる。危ない危ない、殿下は『エリザベス』の声をよく知っているんだから。

 すると今度はラク様の顔が曇り、小声で答えられた。


「……私は、チーズと、ヨーグルトが、嫌いです」

「乳製品が苦手なのですか? アレルギーでも?」

「それはないだろう、去年は大好物だと言っていたじゃないか。あとリンゴも好きだったよな?」


 どうやら殿下はラク様から好物を聞いて、食事やお茶の席によく出していたようだ。と言うか、今ここであたしが質問する意味ってある? するとラク様はチラチラと殿下の方を窺いながら、居心地悪そうに呟く。


「この世界のミルクは、少しくさいです。リンゴも、すっぱいです」

「どうやら異世界にも同じ食べ物があるけれど、味や匂いの違いが気になっていたみたいですね。……リンゴも?」

「発酵食品は仕方がないが、リンゴを使った菓子にはどれも砂糖を加えているはずだが」


 ラク様の話から察するに、異世界の食べ物は相当上質なものらしい。リンゴの酸っぱさなんて気にした事なかったけどな……あたしの脳裏に、無心でリンゴを齧るアステル様の姿が浮かんでクスッと笑う。が、即座に殿下に睨み付けられ、慌てて咳払いで誤魔化した。


(そ、それにしても、殿下の言う通りデザートはどれも甘いはずよね。それを酸っぱく感じるのであれば、異世界のお菓子がよっぽど甘いか、あるいは生で……あ)


「あのっ! もしかしてラク様は、リンゴを丸齧りされたのでは?」



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