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二組のカップル

 しばらくざわついていた周囲だったが、演奏が始まり、殿下とラク様が中央に進み出ると、それに合わせてパートナーとダンスを始める。あたしたちが挨拶に行った時から殿下の後ろで怯えながらこちらを窺っていたラク様も、ようやく緊張を解かれたようだ。


「エリザベス嬢、僕たちも踊ろうか」

「ええ」


 アステル様に手を引かれ、皆の邪魔にならない場所でステップを踏み始める。クスクスと嘲笑の声が聞こえるけれど、アステル様だけを見つめていれば気にならない。あたしの手を握る力が、ぎゅっと込められた。


「アステル様……?」

「さっきは、嬉しかった……僕のために怒ってくれて」


 頬を染めるアステル様が何だか可愛く思えて、あたしはクスリと笑う。


「それは、お互い様でしてよ。殿下相手に啖呵を切った時にはハラハラしましたが……スッとしたのも事実です」

「僕たちって本当、似た者同士なのかもね」


 何て事ない一言だったが、頷きかけて意味深な含みがあるようにも思え、しばらく返答に間が開いてしまう。


 ちらりと大広間の中央を見れば、ピンクのドレスを着たラク様が、殿下にリードされながらも、おっかなびっくりステップを踏んでいる。王子妃教育を頑張っているものの、日が浅いためかまだまだ慣れていないのだろう。あたしだったら鞭でぶたれているところだ。

 こうして殿下の婚約者という立場を離れ、改めて見てみると、ラク様の容姿は異世界人だけあり、この国ではあまり見かけないタイプだった。髪はあたしの地毛よりも明るい茶髪だけれど、小柄でスレンダーであっさりしたお顔立ちで。流行のデザインのドレスも、子供が無理やり着せられてる感があり、それがまた微笑ましくもあり。

 可愛いと言えば可愛いし、他の令嬢たちが陰口を叩くほど不器量でもない。彼女が殿下の好みなのであれば、そうなのですねと納得するだけだ。


 終わった事にいちいち文句を言う気はないけれど……ラク様にあってエリザベスになかったのは、何だったのかしら?


 そんな事を考えていると、テセウス殿下と目が合った。ラク様に悪意を向けていると思われたのか、親の仇のように睨んで来られたので目を逸らす。


「ご、ごめんなさい!」

「いや、気にするな」


 殿下がこちらに気を取られた時に足を踏んでしまったのか、ラク様の焦った声が上がる。と、アステル様が背中に手を回し、くるっとターンしてきた。


「よそ見しないで」

「はい、ごめんなさい」


 あたしも謝る羽目になってしまった。

 注目しているのは殿下だけではなく、周りのあちこちからも視線を感じた。それはだんだんと、最初に感じた嘲笑や恐怖だけではなくなってきている。

 アステル様にリードされるまま、あたしたちは少しずつ独特なステップに移行していた。見た目は雄々しくパートナーを振り回しているようで、初めて経験するあたしが乗り遅れないよう、優しく導いてくれる。まるで迷宮に迷い込んだところを獣の王に迎えられた気分で、いつしか緊張を忘れ彼の作り出す空気に溶け込んでいった。



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