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作られた悪役令嬢  作者: 白羽鳥(扇つくも)
呪われた伯爵編
44/111

現婚約者と元婚約者

 午後の授業が始まっても、あたしはまだふわふわした心地でいた。男の人にぎゅっと抱きしめられたのは、おとうさん以外では初めてだったから……


(って、こっちが一方的に抱き着いただけなんだけど)


 思えば食事中ジロジロ見たりと、随分失礼な真似をしてしまい、迷惑じゃないかとも思ったけれど、アステル様は許してくださった。本当に優しい人だ。この人となら……


「リジー、何をニヤニヤしてるの?」

「……えっ、やだあたしったら、そんな顔してた?」

「してたよ、思いっきり緩んでた。ねぇ何があったの? 白状しなさいよ」


 リューネから問い詰められて、迷った末に耳元で小声で話す。人前で聞かせる訳にはいかない。


「あのね、お昼休みにアステル様とお話しして、仲良くなれたの」

「へぇ……私は会った事ないけど、リジーの婚約者様って恐ろしい風貌って聞いてるけど。そういうのは大丈夫なの?」

「そりゃあ、慣れない内は仕方ないと思う。だけどあの方は優しくて照れ屋で……とっても可愛らしいのよ」


 あたしがフォローしているのは内面的な事ばかりで、リューネの疑問への答えにはなっていないけど……美しい外見の男の人は、みんなあたしを傷付ける人ばかりだから、もう懲り懲りなのよね。


「まあ、趣味は人それぞれだものね……そんなにすぐにベタ惚れになるなんて」

「ベタ惚れ? そうなの?」

「だって、そんな婚約者様と結婚してもいいって事でしょう?」


 結婚はするつもりだけど、ベタ惚れかと言われると少し自信がない。何せ王妃様によって決められた相手で、まだ交流を始めて日が浅いのだ。惚れたと言うよりは、受け入れたと言った方がいい。


(恩人だし、すごく心が美しい人だから、好きになる()()()()とは思ってるけど……本当言うと、恋が何なのかはまだよく分からない)


 あの素顔も、牛という見知った生き物に似ている事に親しみを覚えたからで……やはり指摘通り、あたしが変わり者だったからだろう。

 女神アモレアにその美を独占されるために、魔法で姿を変えられたアステル様……本来ならテセウス殿下に負けないくらいの美貌なんだろうけれど、それなら魔法なんて解けなくてもいい。


(だって元に戻ったらきっとあたし、身が竦んでしまうもの)


 こんな身勝手な理由は、やっぱり恋とは違うような気がするのだ。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


「それでは、クラス委員会を始める」


 恒例の集会で、いつものように『エリザベス』に関する定期報告をする。

 『彼女』は授業で基礎を学んだ後は自習と課題提出で済ませている。授業が終われば教師についてさっさと教室を出てしまうため、各クラスはそれほど嫌悪を感じる間もないようだ。ラク様への接触も皆無だし、だんだん緊張感が薄れてきているせいもある。


「それに加え、演劇部が稽古と称してプラチナブロンドのカツラ着用で校内をうろついているせいで、非常に紛らわしいと苦情が出ています。聞けば劇の内容は、殿下……生徒会長監修によるものが原作で、許可も出しているとか」


 ひえぇ……こちらとしては、おかげで平穏が手に入ったけれど、演劇部員の人たちが気の毒だ。何もしてないなら喧嘩なんて吹っ掛けなければいいのに……

 案の定、殿下はその話題になると機嫌が悪くなった。


「つまり君は、混乱を招いているのは私の責任だと言いたい訳だな?」

「い、いいえとんでもない! 失礼いたしましたっ!」

「最優先すべきは、ラクの身の安全だ。エリザベスが不穏な動きを見せなければそれで済む事……

ただ、午後からは行方が分からなくなるのがどうにも怪しいな。夕方以降は寮に帰っているとの報告はあるが」


 それはアステル様から貰った火時計のランプのおかげです。部屋に置いたランプは夕方になると勝手に火が灯り、深夜になってから消えるという仕組み。だからいつの間にかエリザベスが部屋に戻っているかのように思わせる事ができる。


 二年のクラス委員をしているアステル様を窺うと、目が合ってパカッとウインクをされた。いや本当に「パカッ」と音がするのよ……そんな動きできたのね、あのマスク。両隣の人がキョロキョロと周りを見回しているのがおかしい。


「まあ、エリザベスの件はこれくらいだが……アステル=ディアンジュール、こちらに来てもらおう」


 今まさに彼に注目していたものだから、殿下にその名を呼ばれてドキンとする。アステル様が返事をして席を立つと、途端にその場がざわつき始める。どうしたんだろう……

 殿下はやや緊張した面持ちで、目の前に立つ彼を睨み上げている。


「今週、貴様が起こした騒ぎについての報告が挙がっている。図書館に化け物が現れた、と」

「……」

「その後、貴様のクラスメートからも話を聞いた。同じクラスにディアンジュール伯爵がいた事を知っていたはずなのに、今まで気にも留めなかった。改めて見ると、何故こんな不気味な男を無視できたのか不思議だと」


 殿下の声に、アステル様よりあたしの方がパニックを起こしそうになった。あのマスクには認識阻害の魔法がかけられていたはずだ。今頃になってどうして……

 そう考えていたあたしは、アステル様の「一度見破られると魔法は解けてしまう」という言葉を思い出して青くなった。まさか、他の人にももう、魔法は効かないの!?



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