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作られた悪役令嬢  作者: 白羽鳥(扇つくも)
呪われた伯爵編
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王国の守護神アモレア

 我がクラウン王国は、建国されてからまだ二百年も経っていない、そこそこ若い国である。その割には興国の過程が神話じみていて、疑わしい点が多い。当時、この地は別の国によって治められており、そこから革命によって無法地帯となった時期が何年か続いた結果、今の王家の祖先が統一したのが始まりなのだが。


 その手助けをしたのが、女神アモレアだという。


 神殿によれば、アモレア様は『裏世界』と呼ばれる領域に住み、普段は表世界に干渉はしない。王家に関する神託を、一代に限り一回、歴代の神官長の夢を通じて伝えるのみ……と聞いている。

 しかしそれなら、王国の統一に女神がどのように関わったのか。この二百年の間にも何度か戦争はあった訳で、同盟国もほとんどなく、経済・軍事共にそれほど恵まれてもいない我が国が力を借りたのは、一度や二度ではないはずだ。


(あたしって、何にも知らなかった……いいえ、知ろうともしなかったんだわ。よく考えたら不可解な事だらけなのに。もう、()()()()()()だと思い込まされてる)


 あたしに限らず、国民みんながそうかもしれないけれど。この国の事にも、外の世界の事にも、疑問を持たずに受け入れてしまっている。クラウン王国は、王家の願いと女神の力によって作り上げられた、閉じた国家なのだ。

 例外は外交によって国外の知識に触れる機会が多いリューネの実家ぐらいだろうか。あたしも殿下の婚約者時代に外国からの客人と接する機会はあったけれど、言葉を覚えるのが精一杯で向こうの国の文化にまで手が回らなかったし……


(国内の事だって、全て知っているとは言えないわ。必死になって覚えた事も、婚約破棄されて無駄になったと諦めた瞬間、頭から飛んでいたもの)


 つまり、今までの自分は学生が徹夜で暗記するのと同じく、嫌々覚えさせられていたために、解放をきっかけに忘れ始めているのだ。いくらもう殿下の婚約者ではないとは言え、こんな不真面目な有り様ではとてもボーデン男爵領を発展には導けない。


 これからは自分の意思で知識を身に付けていかなければ。情報は自身を守るための鎧であり武器なのだ。反省したあたしは、図書館で地理や各地の文化に関する書物を探して本棚から抜き出していく。


「なになに……ボーデン男爵領は作物が育ちにくく、樹木も木材には適さず家畜は痩せている……いいとこなしね。特産品はないが、他にはない植物が自生し、数種類の薬草を調合した薬の開発に力を入れている。ボーデン男爵領の出身者には薬剤師が多いが、特許数はそれほどでもない……?」


 ふむ、うちは薬草が採れるのね。それに、薬も作れると……。こういう人命に関わる仕事って、善意を強要される事が多いし、おとうさんを始めとして、人がいいんだから、足元見られてそうよね。もっとこう、開き直って金儲けできる方向に持って行けたらいいんだけど。

 誰かいいアドバイザーがついてくれないかしら? あたしはそこでようやく、学園でのもう一つの目的を思い出したのだった。


 そう、現在の婚約者アステル=ディアンジュール伯爵である。



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