『悪役令嬢』の立ち位置
オリエンテーションの後、あたしは担任に呼び止められた。クラス委員をやって欲しいのだという。一年の一学期は入学試験の総合点がクラス一高い者が選ばれる。まあ、あたしは二度目なので納得だけど。ちなみに去年はもっと成績上位の人がクラスにいたので、委員ではなかった。
放課後、各学年のクラス委員が集まり、生徒会主導の下、委員会が開かれた。あたしの二つ隣にジュリアンが座ったので、バレやしないかとビクビクしたけれど、義弟はこちらを見ようともしない。
机を円の形に並べ、委員たちを席に着かせると、殿下は書類を綴じて作った冊子を配らせる。
「今日の議題は、ラクの学園生活を過ごしやすくするためのサポートと、エリザベスの監視についてだ。在校生にはあらかじめ伝えておいたが、新入生にも改めて徹底させておきたい」
は――??
言われた事の意味が分からず、思わず冊子を二度見する。
【客人ラク=ハイド殿と交流する上での注意と、罪人エリザベスの学園内での取扱について】
……あたしはまだ、執行猶予中の容疑者ではなかったかしら?
「知っての通り、ラクは現在私と同じ二学年だが、異世界から来てまだ日が浅い。思慮が至らぬ言動が見られるだろうが、そこは気付いた者がフォローしてやってくれ。決して見下したり腹を立てる事のないように」
はっきりと明言はされないが、言外に『ラクを将来の王太子妃に考えている』事を滲ませている。ならばラク様を特別扱いするのも分かる、けれど……この世界に留まっていずれは王妃となる事を、ラク様は納得されているのか。
「このエリザベスという女は私の元婚約者なのだが、ラクに嫉妬し、婚約を破棄した事を逆恨みして彼女を害する危険性がある。そこで可能な限りエリザベスの動向を監視の上、報告してもらいたい。
ああ、そうそう。くれぐれも、手は出すんじゃないぞ」
たぶんこれは、リンチされていても見て見ぬふりをしろって事よね。ラク様との扱いの差があからさま過ぎて、笑ってしまいそうだわ。もっとも、呑気に笑えるのは別人になっているからこそだけど。
「殿下、一つよろしいでしょうか? エリザベス=デミコ…「奴はもう公爵家ではない」…失礼しました。エリザベス嬢のクラスはどちらになったのでしょう? そのクラスの委員が主に受け持つ事になると思うのですが」
「その事なんだがな、学園長に名簿を要求したところ、生徒のプライバシーには一切関わらせないと、突っぱねられてしまったのだ。どうやら春休み中に学生寮の部屋が荒らされたそうでな……
ただクラスに関して言えば、特定の場所に留まって危害を加えられる可能性を鑑み、日によって授業を受ける場所を変えるともおっしゃっていた。そこでその冊子には、校舎内でエリザベスが利用すると思われる部屋を一通り載せておいたので、それを参考に行動範囲を予測しておいて欲しい」
殿下は一体、誰と戦っているのかしら……だけど、これは良い物を手に入れたわね。どうしてもエリザベスとして来なければならない時は、ぜひとも参考にさせていただきます!
ちなみにここでも軽く自己紹介はしておいたのだけど、殿下や義弟には全く気付かれる事はなかった。ましてや「エリザベスはプラチナブロンドの髪で緑の瞳の美少女」と聞かされている、他のクラス委員たちにはね……




