義弟の演説
続いて壇上に上がったのは、義弟のジュリアンだった。進行としては新入生代表の挨拶の頃なので、彼が選ばれたって事ね。まあ昔から義弟は優秀だって言われていたから、実際そうだったって事なんでしょう。
「新入生代表、ジュリアン=デミコ ロナルです。この学園に入学するにあたり、宣言させていただきます。
先ほど殿下がおっしゃられた、ラク=ハイド様を迫害した愚かなる生徒とは、我が姉エリザベス=デミコ ロナルの事です」
ざわっと構内が沸く。みんな知ってたけど……わざわざ身内の恥をここで晒すって何なの?
「神殿で行われた事件に関しては、まだ容疑の段階ですが……私は弟として断言します、あの姉ならばやりかねないと! 一時投獄された際、姉は頑なに否定をしていましたが、殿下の婚約者である姉上が、大切な客人を周囲の悪意から守ろうとしなかったのは何故なのか? 醜い嫉妬以外にあり得ないでしょう」
大声でただの推測を事実であるかのように吹聴しないでくれないかしら……殿下に口も手も出すなと命令されたからに決まってるでしょう? だけど殿下がそれを信じさせるだけの説得力を持つ容姿なのも確かで……女の子なら誰だって騙されちゃいそうだわ。(あたしにはただただ怖い人なんだけどね)
「私が敢えて身内の恥を公にするのは、私の手によって姉に穢された公爵家の汚名返上のため、在学中に功績を残すという誓い。もう一つは、姉に悔い改めて欲しいという願いのためです。
我がデミコ ロナル公爵家は、既にエリザベスを絶縁しております。しかし彼女はのうのうと公爵家の財産で学園に居座っているのです。罪を認めず、なおも殿下に付き纏おうとするそのさもしさを、弟としては見過ごせません。
私は公爵家の者として同級生の手本となると同時に、恥ずべき身内に己の立場を理解してもらうため、この場を借りて訴えさせていただきました。こんな私ではございますが、ぜひとも三年間、共に協力していって欲しいと思っております」
……どこが新入生代表の挨拶なの? ただの私事なんですけど。
あと一応、エリザベスはこの場にはいない事になっている。義弟のこの演説はあたしに訴えかけたいのではなく、同級生を巻き込んであたしを徹底的に叩き潰すための大義名分なのだろう。公爵家としては娘が容疑者として王太子との婚約が破棄されてしまったので、ごまをするためにあたし一人を悪者にする算段なんだろうな。
こんな言いがかりもいいところの演説でも、新入生の半数近くから拍手が沸き起こった。残りは当然戸惑っているけれど、義弟もまあ、お義母様に似て顔がいいもので……
「あの代表、本当に優秀なの? どうもそうは思えないんだけど……」
リューネ様が眉根を寄せて呟く。おっと、ここにも殿下や義弟の美貌に釣られない女子がいたわ。婚約者がいるとは言え、彼らに懐疑的な目を向ける彼女には、それだけで何だか好感が持てそうだった。




