小咄其の九 『犬と少年』
「おじいさんが死んじゃった。どうしよう、パトラッシュ?」
「わん」
絵を描くことと犬の世話だけが好きな少年フランコ=ボウクン=ネロ。彼は寝たきりの祖父の年金だけで暮らしていた。介護もせず、たまに外に出てもブラブラしては公共物や店のシャッターにペイントスプレーで落書きをする程度。
しかしその祖父も亡くなった今、彼を援助してくれる者は誰もいない。ヤンキー時代に付き合った少女アロアは「不良がうつる」と親が会わせてくれない。
「わん」
「ピトラッシュ、おなかが空いたんだね。でももう食べるものもないんだ」
「わん」
「おやめプトラッシュ、僕を食べても美味しくないよ。共食いもおやめ。あ、おじいさんはどうしよう」
モラルも何もない現代っこのネロだが働く気力はもっとなかった。仕方なく半ダースの犬とフラダンスを踊る日々を送っていたが体力も限界に近づいた。彼の最後の望みは冬コミケで同人作家の生絵を見ること。もちろん違反で前日から並んで。やっと開場し、その絵を見ることができた時、飢えと寒さで彼の命の灯火も消えようとしていた。
「わん」
「疲れたかい? ぺトラッシュ。ぼくも眠いんだ…」
その時、どこからか天使のような声が聞こえた。もと彼女のアロアだ。彼女の悲痛な声がドームに響く。
「寝〜〜ろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
暴君は永遠の眠りについた。
「わん×6」犬たちは早々に立ち去った。何人かの同人作家さん達も巻き添いで寝た。
<おしまい…失礼しまひた^^;>