小咄其の八 『正義の味方』
小咄其の九 正義の味方
「私は銀河うるとら組長、ソフィーである。」
いきなり会社員、月形半平太の前に現れた光の巨人は頼まれもせんのに自己紹介を始めた。
「君は今まで1度も嘘をついたことのない正直者だそうだな? 私はそういう心の正しい若者を探していたのだ。君を地球を守る正義の味方、超うるとらスーパーマンに任命する。平和を乱すものが現れた時、君はいつでも私のよーな超人に変身できるのだ。んーお礼はいいからね。」
こちらの意見もへったくれもないまま、ソフィーは続けた。
「さあ、変身だ! ただし正義の味方はその正体を他人に悟られてはいけない。くれぐれも見つからないように。いざとなったらしらばっくれるコト。」
「ああ、は、はい。」
見つからない様に嘘をつかなきゃなー、と思ったとたん、正直な若者は正直ではなくなった。
月形半平太は遂に変身することはなかった。
<おしまい。>
続・正義の味方
「私が銀河うるとら組長、ソフィーなんだから。」
なんだからと言われても困るが、月形半平太の前に現れた光の巨人はなおも話し続けた。
「こんだけ就職難なのに正義の味方になりたいってヤツはいないんだよね〜。そこで選考基準を甘くした。おめでとう、今日から君は地球を守る正義の味方、『超うるとらスーパーマン(パート)』に決定した。んーお礼はいいからね。」
相変わらずこちらの意見もへったくれもない。よほど敵が多いのだろう、自分の正議論ばかりゴリ押ししてくるどこかの国の大統領のよーである。
「さあ、変身だ! すぐに50mの大巨人になれるぞ。あとはテキトーに」
「ああ、は、はい。」
まばゆい光に包まれると月形半平太はソフィーそっくりの姿なった。みるみる巨大化する。10m、20m…。
そこで半平太は思い出した。自分が高所恐怖症だったことを。急激な視線の変化に立ちくらみ、50mの大巨人は周りのビルを崩し、広場を荒らし、ソフィーを押しつぶしてぶっ倒れた。
<今度こそおしまい。>