小咄其の伍 『呪いの携帯電話』
タチの悪い噂だと思っていたのに・・・。
手にした携帯電話が嫌な汗でしめり、生暖かく感じる。不可思議な生物でも握りしめているかのようだ。片山龍次は、おぞましさに身震いを禁じ得なかった。
その画面を見た者は1週間後に死ぬという都市伝説。『ダサ子の呪いのサイト』を開いてしまった彼は、あれこれ解決策を試みた…だが、いずれも水泡に帰す結果となった。自室に閉じこもり、日に日にやつれる片山。そうして、とうとう期限の1週間めを迎えた。
ピコピコと、深夜に着メロが響く。
「ひいいいいっっっっっ!!」
手にしたくないのに、見たくもないのに携帯の画面を開く片山。ワンセグの画像に古い井戸が浮かび上がった。黒髪をざんばらに垂らし、ずるり、と女が井戸からはい出してきた。そのままぎごちない動きで携帯の窓のこちら側に近寄ってくる。
「ダサ子だ! ダサ子は本当にいたんだ!!!」
前髪の隙間から狂気の目が光る。震える手をなんとか動かし、片山はなんとか携帯を部屋の中央に投げ出した。携帯は画面を上にし、カタカタと動いている。それをムンクがアッチョンプリケをするように彼は見守るだけだった。ダサ子の爪のない指が、ずるりと画面からのびる。
「ぴぎゃああ〜〜っっ!!!!!!」
しばらく恐怖で動けずにいた片山だったが、どーもまだ生きているようだ。
「?」
恐る恐る携帯の方向を見てみると、画面窓から指だけ出して、あとはつっかえているダサ子さんがいた。彼女はなんとか外へ出ようと指だけをピコピコ動かし、もがいていた。
ピコピコ、ピコピコと・・・。
<おしまい。>