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小咄其の四 『宇宙からの帰還』

 「…地球か。なにもかも皆懐かしい……。」

亡き家族の写真を胸に、老兵は静かに呟いた。


 14万8千光年を旅し、ようやく地球へ戻って来た、宇宙戦艦ヤマトンチュ。しかし、その代償はあまりに大きかった。ぼろぼろの戦艦、多くの戦死者…。艦長代理コダイ・モドルは最後の戦いで犠牲になったフィアンセのアワモリ・ユキを抱き上げ、眼前を覆う大スクリーンを見た。

「ユキ、帰ってきたよ。」

紅く干上がった、だが紛れもなく我々を産み育んだ母なる惑星がそこには映し出された。敵星一つを滅ぼしさんざ虐殺をしてきたことはどこかにほっぽり出し、

「愛し合うことが大切だった〜」

…と、似非ヒューマニズムなたわ言を吐き、コダイはその場に立ちつくした。

(もうすぐ帰れる、そしたら結婚だ…。結婚するはずだったのに!) 

1年間禁欲生活を送ってきた遠洋漁業の船員のごとく蓄積したフラストレーションのぶつけ先を見失い、お若い艦長代理さんはおいおい泣いた。


 第一艦橋から肉眼で地球が見えるころ、偉大なる老兵…ヤマトンチュの艦長オキタは、むっくり起きた。だが悲劇は悲劇を呼ぶ。冒頭のお決まりの文句をたれ、彼はまた永い眠りに就いたのであった。

「?」

 その時奇跡が起こった。ユキのネグリジェ越しに押し付けられた胸から、微かな鼓動が響く。たった今英雄の死を見届けた船医が驚きの表情を浮かべた。コダイは、大人として恥ずかしい行為をしたタレントのように半ベソをかいていたが、ようやく最愛の女性がお伽話のお姫様のように目蓋を開けたのに気が付いた。

「ユキ…。ユキ! 生き返ったんだな!?」

コダイの問いかけに、うっとりとした表情で彼女は応えた。



「わしじゃよ、コダイ。」



                                   <おしまい。>

大人として恥ずかしい人ではなく、木村さんが主演で映画化されるそうです。無理~。

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