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小咄其の弐 『怪奇電送人間』

 「――そんな次第で、我がエクスプローラ社がこの度発売する次元転位装置“リアル=ブラウザ”は過去のどんな機種より格段と優れており、まあ最早ライバルはないと自負しております。」


 ひととおりの説明と概念を述べた後、隣にあるいかつい箱をぽんぽんと叩きながら、開発担当のビル博士は会見に集まった記者たちに余裕の笑顔を見せた。

「最初の転位装置が発表されてから随分かかりましたね。エクスプローラ社は3番手ですよ。」

意地の悪い記者が言った。

「はん、最初の名誉を得んがために愚行を重ねたグールグール社製のがらくたのことですか? ハエと合体したり、機械と合体したりでそりゃもう散々な評価でしたな。あれのせいで信用回復に時間がかかったと言ってもよいでしょう。」

博士はひるまない。

「だいたいファイヤーボックス社のまがいものも似たりよったりだ。個体を識別し、電子レベルの分解・再形成? ハエは混じらなくても体内の微生物と合体して目も当てられない化け物を作っただけじゃあないか。水虫と合体したのもいたっけ」

さすがに記者も気色ばんだ。

「で、では貴社のリアルなんとかはそういうことは」

「絶対ありません。空間そのものを次元的に切り離し時間のベクトル乗算し…失礼、その説明はもうしましたな。論より証拠です。

 まもなく電送人間第1号がこのリアルブラウザの中から現れます。これから新しい産業革命が始まりますよ。乗り物は観光の手段としてしか意味をなさなくなるのですから。」


 ビル博士がキーを操作する。はたしていかつい箱から閃光がもれた。扉の前のパネルには地球の裏側のエクスプローラ社の7.5バージョン機から最新の8.0バージョンの機種へ社員をひとり送った、と表示されている。博士は自信満々に扉を開けた。

 


 出て来た男は一部が女だった。髪の一部は金髪で、皮膚の一部は黒人だった。ある部分は金属でまたある部分は木で、そして大半は裏返っていた。



「しまった。バグった・・文字化けだ・・・。」


                                  <おしまい。>

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