小咄其の拾四 『インフルエンザ』
小咄其の六拾伍 イ ン フ ル エ ン ザ
春とは思えない木枯らしの吹く街。たちの悪い疫病が流行り、人々は皆マスクをかけ、生気のない目でふらふら歩いていた。疫病のもととなった家畜は処分され、お役所や病院は感染を防ごうと躍起になってはいるようだが…。ビルの巨大なパネルに映し出されるニュースも不景気だ。 官は汚職、民は不祥事、学校はいじめ、家族は殺し合い。
(これも流行り病だろうか…?)
そんな馬鹿げた考えさえ浮かんでしまう。そんな時。
「地球の皆サん、コンんにちわ」
唐突にビルの大画面は切り替わり、銀色の、「いかにも」な宇宙服を着た人物が映し出された。異様に黒く大きな目がゴーグルから覗く。
「へ、まるで宇宙人だな」
誰かの嘲りの声が聞こえる。 その声に呼応したかのように、大音響で音声が響く。
「わわわ我々は"オーナー"でス。地球の皆さんにはタイヘン申し訳ないいいのデスが、悪質な病原菌が流行しましタタタタ」
ザァ。
突然の雨、と思うとそれは消毒液の臭い。それを撒いているのは…本当に巨大な、銀色の円盤だ。
「お、おい――」
「マジで、宇宙人、だ…」
人々の不安そうな声。
「本当ででででス。皆さんは、"病んで"いまス。我々は必要なぶんだけ育て、搾取してきましたガ、もうここまで感染しては仕方がありまセンン」
よく見れば彼の着ているのは、レトロな宇宙服ではない。
感染防止のためのスーツだった。
「この星は全部消毒して、『養人場』は閉鎖しまス。残念ながら全員、処分しなけれバ。アア、大赤字ダダダダ」
"オーナー"はゴーグルを下ろし、ガスボンベらしき物を操作し始める。
・・・本気のようだった。
<おしまい。>
(リアルで被害の遭われた皆様、たいへんたいへん失礼しました)