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異世界通いと契約ヒロイン  作者: 秋月創苑
第一章 はじまりはチュートリアル
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1-8

1-8.


 異世界二日目は、合計6頭の魔狼を仕留め、帰り際に無事レベルが一つ上がった。

 レベルが上がった直後は残り時間のカウントは変わらず、次に来た時にどうなっているか楽しみにしている。


 ステータス欄をチェックすると、ステータスは微増している程度だったが、新しくスキルという項目が増えていた。

 取得したスキルは二つ。

 ・解体(Lv.1)

 ・片手剣(Lv.1)


 スキルの取得とかいよいよゲームっぽいが、思春期男子高校生としてはいやがおうにもテンションが上がる。


 続く、三日目。

 活動可能時間は14時間となっており、どうやら1レベル毎に2時間ずつ増える可能性が高まった。


 また、この日は来る前にある試みをしていた。

 地球のベッドで目覚めると、前日の記録と最終保存時の所持アイテムが書かれているのを見て思いついたこと。

 アイテムが書かれている部分に、自分で持ち込みたい物を書き加えてみた。

 念の為、実物をベッドの足下に置いておいた。

 結果は―


 ザクザクとスコップで土を掘り返し、解体した魔物の臓物を穴に投げ込む。


「よくスコップなんて思いついたっすねー。」


 魔道書に書き加えたアイテムその1。

 毎回解体時に穴を掘るのが大変だったのだ。

 もう一つ持ち込んだのは水筒だ。

 よくある保温性に優れたおしゃれな感じの物では無く、古い映画などで見る平べったい円形の物だ。

 アルミ製だから今後この世界の住人に見られたときに困るのかもしれないが、ステンレスの物よりはトラブルになりにくい気がしたのだ。


「水は大事っすよねー。うんうん。」

 なぜか食いつく謎ガイドネーレ。


 この日も地道に魔狼や猪を狩ったが、肉が増えていくばかりでさすがに簡単にレベルは上がらない。


 この辺りは緩い丘陵の頂上に近いらしいが、付近のマップも概ね埋まった感じだ。


「そろそろ町の方向に向かって進み始めましょうか。」


 北東の方角に向かい、間道を抜けて本道と思しき山道を下り進めることにした。


 マッピングされていない新たな領域に入ってしばらく。

 大型の鳥が数羽、頭上をすごい速さで飛んでいった。

 遅れて、そこかしこから小鳥たちが飛び立つ。

 なんだか森がざわついている感じだ。


「静かにっす。」

 珍しくシリアスな雰囲気でネーレが辺りを伺う。


 やがて、大きな獣が繁みから顔を覗かせた。


「でかっ」


 それは初日に見た猪よりも遙かに大きな猪だった。

 体高は2mは軽くありそうだ。体長も6mくらいあるのではなかろうか。


「…魔猪っす。」


 魔猪…つまりあれは獣では無く、魔に墜ちた生き物なのか。

 たしかに禍々しさが倍増し、凶暴な牙は多くの血を吸ってきたかのように黒々としている。

 モノクルに表示されたレベルは6。

 明らかに格上だ。


「あれは、少しマズいかもしれないっす。挑むのはもう少し待った方が良いっすよ。」


 まだ数十メートル離れているから、気付かれた気配は無い。


 拓は黙って頷き、こっそりと二人は来た道を引き返し、繁みに身を隠した。


「しかし、アレはもっと西の方にいると思ったっすが、ずいぶん縄張りが広いんすねー。」


 膝が触れそうな程の距離でしゃがんで身を寄せ合ってる間、退屈したのかネーレが話しかけてきた。


「どうします?暇だし、恋バナとかしちゃいます?」


「しねーし!」

 緊張感のかけらも無いネーレに呆れながら拓は言う。

 最近馴染んだせいか、ツッコみに容赦が無くなってきた。


「つれないっすねー、タッくんは。いつの間にかタメ口になってるし、油断ならないっす。」


 何故だか満更でも無さそうな様子のネーレ。

 

 それに対して何か口にしようとした矢先、ドスンと言う音と共に地面が揺れた。

 続けてザザザ、と葉擦れの音がして、一頭の魔狼が飛び出してきた。

 いや、既に息は無く、飛ばされてきた、と言った方が正しいのだろう。


 慌てて周囲を見回すと、やや離れた場所からキャンキャンと吠える魔狼の声が聞こえてくる。

 声のする方に静かに近付いてみると、森の中のやや開けた場所で、二頭の魔狼と先ほどの魔猪が争っていた。


「いつの間にこんな所まで…」


 15mほど先で激しく戦っている魔物達。


 一頭の魔狼が脇腹に噛みついているのをまるで気にしていないような素振りで、魔猪がもう一頭の魔狼に突進した。

 避けきれなかった魔狼は背中から激しく大木にぶつかり、力なく倒れ込む。

 続けて身体を大きく揺すり、脇腹に噛みついていた魔狼を振りほどき、牙ですくい上げるように魔狼の身体を軽々投げ捨てる。


 そして、魔猪はゆっくりと振り向いた。

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