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序章

2/22 アドバイス頂き、序章を少し改稿しました。




 ここは、どこだろう。

 見た事がない風景、なのにどこか懐かしい気がする。

 からりと晴れた空に、少しの雲。

 更にそこに彩りを沿えるように、濃淡の豊かな緑の森が形作る稜線。


 周りは何かの映画で見た景色なのか、土と石と木だけで構成されたような、シンプルな作りの質素な家々。

 しかしどうしたわけかそれらの家も、それどころか家畜囲いの柵も垣根も道脇の植樹ですら、巨大な重機が暴走した後のような損壊があちこちを襲っており、何故だかそれが妙に少年を悲しい気持ちにさせた。


 それに。

 少年の目の前には、ひどく傷ついたボロボロの姿の少女が倒れている。

 

 土埃と血のようなどす黒い染みに汚されていても、肩までの髪も青白く生気を失った顔も、少女の可愛らしさを隠し切れていない。


「タク、さん…」

 気を失っているように見えたその少女が、ゆっくり目を開け、少年を弱々しく見上げた。 そして、ほんの少しだけ微笑んだ。

 

 その瞬間に少年を襲った感情は悲しみだったのだろうか、それとも安堵だったのか。

 色んな気持ちがないまぜになって、熱風のように少年の胸の中を激しく渦巻き、、それが喉を通って口から出ていく。


 これは、夢…。

 でも、遠い記憶が偶然に呼び起こされたかのような、懐かしい感情が同時に少年の心をすっぽり覆う。


 これは、夢…?

 そう問いかけた少年の声にはしかし誰も答えてくれず、そして少年の意識はまた暖かい泥に沈んでいくような感覚と共に、曖昧になっていくのだった。


--------------------------------------------------------------------------

 

 春も半ば過ぎた5月のある日、ここ秋葉原の路地裏にぽつんと一人、少年は立っていた。

 電車を乗り継いで一時間と少し、郊外から臨むにはやや遠いこの地にわざわざ少年がやってきたのには、もちろん理由があった。たとえそれが他者からは一笑に付されるような理由であったとしても。

 

「良し、オーケ。行くか。」

 手に持ったスマホをまるで人目を避けるかのような素振りで、そっとズボンのポケットにしまいながら少年は呟く。

 

 お目当てのゲームタイトルを改めて確認したとは言わない。少しだけ、そうほんのちょっぴりエッチな表現が含まれるインディータイトルのゲームをわざわざ、そうわざわざ地元の人の目に触れないこの聖地まで足を運んで探しに来たなんて言わない。

 ゲームのパッケージの美少女を見た瞬間にふと何かを思い出しそうな妙な感覚を覚えたが、数秒逡巡して何も出て来ないとみるや、気にしないことにする。

 

 (イク)()(ヒロシ)、16歳。

 人に自慢できるような長所も特技も特には無く、多少の得手不得手を諸々合わせた上で全体で見れば、概ね平均的な少年。

 身長160cm、体重47kg、黒髪黒目。

 スポーツも成績も大体が人並み。

 友達はあまり多くないが、敵もおそらく居ない。

 たまに馬鹿な話を気兼ねなく出来る相手が一人二人居れば充分だ。

 彼はゲームと漫画をこよなく愛する高校生。

 

 今少年は足を踏み出す。路地裏から、輝かしい……とまではいかないが雑居ビルの入り口に続く路地裏の聖別された(レツドカーペツト)を。


 新しいゲームはどんなだろう…



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