97話 交流試合②
交流試合第二試合目!
勝ち抜き戦ですがキースはとある理由で敗北します。
「勝ち抜き戦なので次もキースさんですが…」
アヴェルは勝利の余韻に浸りながら意気揚々と戻ってきたキースに近づいた。
そして労いの言葉をかけるかに思えたが腹に拳を入れた。
すると糸が切れた操り人形のようにキースは倒れてしまう。
どうやら痩せ我慢をしていたようだ。
「無理はいけませんね。早く回復魔法をかけないと暫く動けなくなりますよ。勝ちはしましたが引き分けですよ」
「…感謝する」
じゃあ、キースは本当だったら倒れていたのか。
こんな状態になるまで戦ったなんて信じられない。
「『信じられない』と思ってますね?龍様、これが王の護剣です。そして我々は龍様の命を守るためなら玉砕覚悟で敵に立ち向かう意志を持っております。そのため何時かは別れが来ると思います。その時は」
玉砕覚悟、少し嫌な言葉だ。
主君のために死を覚悟して立ち向かうと捉えれるが命を放り出して立ち向かうとも捉えられる。
俺は王の護剣に死なれたら生きてはいけない。
自分のために誰かが死ぬのは嫌だ
だから、
「その時、なんて来させねぇよ。お前達が俺を守るように俺がお前達を守る、それだけだ」
王の護剣を散らせない意志を固める。
「…そう言うと思いましたよ。さて、相打ちになりましたので次の試合に行きましょうか。次はペア戦など如何かな?」
「こちらは構わん。鞍馬空助、鞍馬天也。こいつらは鞍馬天狗だ。双子だからコンビネーションは抜群だぞ」
「ヘイス、ウルミナ。別にコンビネーションならこっちも負けてねぇぞ」
俺は先ほどと同じように二人の鎧を創った。
動きやすいようにキースよりかは軽くしたけど大丈夫かな?
二人組での戦闘ならばこの方が適切だと思う。
「武器は?」
「「木刀で」」
「了解。準備できたぞ」
「…それでは始め!」
最初に動いたのはヘイスとウルミナだ。
縦横無尽に道場内を動き回り撹乱している。
「龍様、二人が旅をしていた頃の通り名をしてますか?」
「知らん」
俺が異世界転移をしてから約一カ月が経過している。
しかし、向こうの世界の歴史すら学んでいない。
そんな俺が二人の通り名を知る筈がないのだ。
「双剣です」
「武器の?」
「ええ、双剣は一本でも武器として成り立つ。しかし、二本揃うと真価を発揮します。要するに二人は一人で戦うよりも二人で戦う時の方が本領を発揮するのです」
ヘイスとウルミナは縦横無尽に攻撃を仕掛けて鞍馬兄弟を道場の中央へと押し込んでいく。
そして鞍馬兄弟は背中合わせの状態になった。
「天也!早く外に出ろよ!」
「兄貴こそ!何やったんだよ!」
「そして仲間割れが起これば二人の掌の上ですよ。あの二人が幼き日より培ってきた絆を見くびっては困りますね」
「決めるよヘイス!」
「おう!」
二人は同時に攻撃を仕掛けて鞍馬兄弟の木刀を落とす。
鞍馬兄弟は木刀を拾おうとするが、それすら儘ならない。
攻撃をした対象は即座に離脱、そして別の対象が間髪入れずに攻撃を仕掛ける。
最大火力で繰り出される連続攻撃が波のように押し寄せる。
それはまさに神業、身体能力が高い魔族ならではの神業、絆の果てに得た神業である。
鞍馬兄弟は成す統べなく敗北した。
「…圧勝かよ」
「お褒めに与り光栄です」
「まあ、楽勝ですよ」
「こら!もっとちゃんとした答え方をしなさい!」
ウルミナは雑な態度を取ったヘイスを軽く叩いた。
前々から思っていたがウルミナってヘイスの姉ちゃんみたいだな。
「さて、我々の勝利は確定しましたが、どうしますか?」
「…酒井喜平。引く気はない。鬼の力を見せつけろ」
「わかりました。その戦意に応えましょう」
アヴェルは一礼すると真剣な眼差しをして歩み出た。
喜平の身長は約二メートル、アヴェルより大きくて体格では喜平が勝利している。
「…武器は?」
俺が初めて出会った王の護剣、戦わなくても勝敗はわかる。
「いえ、必要ありません。一撃で終わらせます」
二人とも素手で戦うようだ。
道具には頼らずに自分の肉体のみで戦う。
それは、その人の純粋な戦闘能力が問われる戦い方だ。
「…それでは始め!」
「アヴェル・ゴブリード参る」
次回!アヴェルが門下生をワンパンします!
ああ、最強の剣ってアヴェルのことじゃないですよ。
それではまた次の話で!




