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96話 交流試合①

王の護剣の力を知るために交流試合をします!

とりあえず一番はキース・オウガ!


「勝ち抜き戦でいいか?」


「ルールはそちらに任せます。龍様、指揮をお願いします」


 現在、俺達は当初の目的地とは違い道場に居る。

 急遽、異世界交流試合をすることになったのだ。

 何でも王の護剣の実力を計りたいらしい。


「最初はキースだ」


「期待に応えられるよう頑張ります!」


 というかあっちの指揮は親父がするのかよ。

 …端から見たらただの親子喧嘩だな。


河野鉄平(かわのてっぺい)


「はい!」


 鉄平さんか…。

 キースにはいい刺激になりそうだ。


「防具を着てやるのか?」


「そうだ。実践用の防具のため生半可な攻撃は効かんぞ。使用武器は木刀か薙刀、それか素手だな」


「お前らって鎧とか武器とか持ってきている?」  


「はい。しかし、今から着替えますと多少の時間を要します」


 時間が掛かるのならしょうがないな。

 俺だけができる裏技で解決しますか。


「キース、武器はどれを使いたい?」


「…木刀ですね」


「よし、わかった」

 

 キースは高身長で肩幅が広いからな。

 後はあっちの世界の鎧と体格に合わせた木刀を創り上げる。

 初めての試みだが我ながら良くできている。


創造(クリエイト)!さあ、行ってこい!」


 龍は個力でキースの体格に合った防具と木刀を創った。

 だがキースは一向に前進しようとしない。

 そして何故かキースの足元に水溜まりができてる。


「…小生、感激のあまり、一歩も動けません!」

 

 水溜まりの正体はキースが流した涙であった。

 キースは主君に渡された鎧と武器で戦うことになる。

 更にその鎧と武器は主君の能力で創られた物だ。

 その二つの最高の事象が重なり感極まっているのだ。


「…動かんくても行ってくれ」



 冷静を取り戻したキースは中央まで進んだ。

 そして対戦相手である鉄平さんに一礼をする。

 キースって意外と礼儀正しいよな。


「勝利条件はギブアップかダウンのみ!それでは始め!」


 始まりと同時に鉄平さんはキースに突っ込んでいく。

 鉄平さんは小柄な体格を活かした戦闘が得意のため自分より身長の大きい相手は有利になる。

 しかも体格に似合わない怪力の持ち主である。

 ちなみに明野流は実践形式の流派で門下生同士の試合ではこれが当たり前である。

 まあ、ちゃんとした普通の大会にも出場するけどな。


「龍!鉄平は妖怪河童だ!馬鹿力が自慢の奴じゃ攻略できんぞ!」


「俺の部下を舐めんな!キース!見せつけてやれ!」


 キースは全力で木刀を振るうが鉄平は寸前で回避した。

 更に鉄平はまだ振り切っていない右腕に剣先を素早く叩きつける。

 それにより木刀は床に落ちるがキースは左手で鉄平の右腕を掴んでいた。

 壁際まで投げ飛ばされた鉄平だが態勢を立て直して反撃した。

 反転後に木刀を顔面に投擲して防御の隙を作り出す。

 また、投擲と同時に鉄平は突っ走っていた。

 そしてがら空きになった胴体を連続で殴打する。

 大男のキースもこれには流石に耐えられないと思えたが微動だにしていない。


「まさに金剛!」


 胴体に効果はないと判断したのか顎を蹴りあげた。

 だが、それでもなおキースは動じない!

 今度は軽く飛び上がって頭部に右足で蹴りを入れた。

 しかし、それは鉄平の敗因になってしまう。

 驚くことにキースは右足を掴んで防いでいたのだ。


「あの猛攻を受けても動けるのか!」


 キースの肉体の強靱さに翔龍は驚き声を上げる。


「言っただろ?俺の部下を舐めるなと」


「歯を食いしばれ…。鉄平とやら」


 己の敗北を悟ったのか鉄平は全力で抵抗を始めた。

 だがキースは抵抗に対して微動だにしない。

 右腕を振り上げて再び壁際に投げ飛ばす。

 今回は牽制ではなく攻撃手段に成り変わっている。

 そして利き腕の使用が威力の底上げの原因になった。


「おらあぁぁぉぁぁ!!」

 

 態勢を立て直す暇もなく鉄平は壁に激突した。

 その衝撃で壁に穴が空き外に放り出された。


「鉄平さん、大丈夫かな?」


「あんなんでくたばるたまじゃない。ほら、直ぐに立ち上がった」


 マジか衝突で物凄く大きな音が生じたが大丈夫なんだ。

 それにしてもこれほどの強さがあるのならクラウスさんを襲ってもおかしくはないな。

 アヴェルは良い部下を見つけてくれた。


「勝者!キース・オウガ!」


 キースは鉄平さんの前に行って深々と礼をした。

 やっぱり、王の護剣になる前にアヴェルに畳み込まれたのか?


「龍様、勝ちましたぞ!」


「うん、良くやった。これからも精進してくれ」


「ありがとうございます。小生にはもったいない御言葉です」

 

 …こう目の前で跪かれると俺ってこいつらの主君なんだなって実感が湧くな。

 さて、次はどうなるのやら。

 

①なのでまだ続けます!

だいたいあと二話ぐらいかな?

その後、本編にあるとおりお母さんのところに行きます!

それではまた次の話で!

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