93話 異世界転移(帰省)
今回の話で日本に転移します!
要するに帰省で~す。
長旅の終着駅、ルシフェル大帝国の飛び地に列車は停止した。
そこは町と呼べるような場所ではなく異世界転移装置を防衛するための要塞のような作りになっていた。
周辺諸国と連携して守っており、要塞の周辺の町に兵士が在住している。
飛び地というよりかは皆の領土的な感じだな。
そんな要塞の近くの駅で降りたのはいいけど物凄い要人扱い。
俺の周りを体格の良い騎士が密集するように囲っている。
当然、隣町に住む住人は『何事か!』と家を飛び出してくる。
そしてマスコミがこの街になだれ込んでくるとさ。
マジでハイエナだな!
『異世界情報網の速さ侮れないな!』と言いたいとこだが隣町に俺の世界で言う所の放送局があるらしい。
そりゃあ、納得。
「皇帝陛下が御到着なされた!門を開けよ!」
門が開かれると様々な音色が飛び込んできた。
おそらく、ルシフェル大帝国の音楽隊だ。
それにしても素人がわかるぐらい演奏が上手い。
「アヴェル、この音楽隊ってルシフェル大帝国のか?」
「そうです。初代五王家当主やルシフェル様の生誕祭のパレードで演奏したりしますよ」
やっぱり、そうだった。
「今更だけど異世界転移って気持ち悪くならないよね?」
フィアナの言う通り、あれは本当に止めてほしい。
ほぼトラウマになっている。
今度から遠出する日はアリスに頼むだろうな。
「大丈夫です。門を通るだけなので」
「そういえば学園長とシアン先輩はこれで来たのか?」
「はい、その通りです。ルシフェル大帝国の皇帝の許可証がなければ使用できません。ジェイス様はクラウス様から頼まれて転移しました」
ジェイスも何かと忙しいんだな。
今もシアン先輩を連れて全世界を駆け巡ってるし。
俺達は砦の中央にある祭壇のような場所に通された。
そして祭壇のような場所に古びた門が置かれている。
これが異世界転移装置か、色々な魔導具に繋がれている。
多分、これで異世界転移装置をサポートして転移させるんだろうな。
いや、ちょっと待て!
「別の魔導具と繋がっているがちゃんと転移するよな!?門の向こう側が変な異空間だったら承知しないぞ!」
「そこは保証します。なんせ転移と言っておりますが門を開けて通るだけなので。門も魔導具の一種です。門を外すと黒い穴が浮かんでいます」
「だから要塞になってんのか」
「ええ、何者かに悪用されないために」
門を通るだけなら大丈夫そうだ。
てか、そんな摩訶不思議な黒い穴、いつ頃にできたんだよ。
この地に隕石でも落ちたのか?
「それはさて置き、通ると何処に出るんだ?」
「ご自宅の山です」
「自宅なら心配ないが念のために人の姿になってくれ」
「畏まりました。門を通った後に変装します」
やっとこれで帰省できるんだな。
でも、帰ってきてからが大変そう…。
そういえばあっちで魔法とか使えるのか?
シアン先輩は個力を使っていたが…。
念のために訊いておくか皆のためにも。
「魔法は使えるのか?」
「使えるには使えますが一日に数回程度ですね。あっちの世界では大気中の魔素が少ないので」
「魔素って大気中に気化した魔力のことだよな?」
洞窟の時のあれだろ?
「だいたいあっております。普段から私達は魔法の発動をそれなりに魔素によって支えられています。しかし、先ほど説明した通り、向こうは魔素が少量しかありません。そのため普段よりも魔力を使用します」
「けど少量はあるんだな」
「少量でも多大なる影響が出ます。詳細は省きますが魔力使用量は八倍になるという研究成果があります。魔法を使用しても魔力は回復していきますが使用は避けてください。何が起こった時のために」
要するに非常時のために温存しとけってことだな。
「ということだ。お前ら理解したな!」
六人は話を理解したのか快く返事した。
流石に向こうの世界の状況は習わないらしい。
「ですが使用する場合は人目につかない場所でお願いします!それと個力はいつも通り使えますがこれも同様に人目につかない場所で!」
何かアヴェルが引率の先生に見えてきたな。
仮に爺ちゃんが異世界転移していなかったらアヴェルが俺の家庭教師になっていたんだろうな。
「転移の準備ができました!」
「準備ができたようです。私とヘイスが先行しますので龍様と御学友の方はその次に通ってください」
「開門!」
門は大きな音を立てながら動き始めた。
そしてヘイスとウルミナが通り抜けると龍が誰よりも向こうの世界に走っていった。
門を潜ると何時も窓から眺めていた素晴らしい景色が広がっていた。
本当に戻ってこれたんだな。
「ただいま」
次回!日本編開幕!
まあ、のんびりとした章になると思います。
それではまた次の話で!




