86話 ハッピーエンドを目指して
ハッピーエンドを目指して!
龍の戦いが始まる!
今度は口です!
アイザックを討伐してから一日後、俺はその功績を称えたいとシュトルツ騎士王国の国王に城へ招かれた。
そして現在は謁見するために客室で待機している。
保護者として変装したクラウス、同じく変装した王の護剣が連れ添っている。
言うまでもなく王の護剣のリーダーは居ない。
「クラウスさん、例の物は全て用意できていますか?」
「用意しておりますが…。これから何をするつもりですか?」
「龍様、玉座の間に移動してください。陛下がお待ちしております」
やっと謁見の時間になった。
そういえばこの国に俺が魔王ルシフェルの孫という情報は伝わってないらしい。
その証拠に俺は普通の学生として扱われているしな。
「うーん、そうですね。一言で言うのなら無血戦争かな?」
「無血戦争…」
さてと俺の望む未来を掴み取るためにも頑張るとしますか!
とりあえず猛々しく燃え盛る心を落ち着かせてから行こう。
今回の件でかなりキレそうになってるから。
一同は玉座の間に移動してシュトルツ王と妃に対面した。
また王と妃の隣にはアイザックの兄と姉が立っていた。
更に端には煌びやかな服装をした高い地位を持つ貴族も見られる。
そして玉座から少し離れた所にボロ布を纏わされ手錠と足枷をつけられ虚ろな目をして佇むアイザックがいた。
あれがシュトルツ王、何となくアイザックに似ている。
顔付きではない雰囲気といった見た目には現れないモノが。
「そなたの此度の活躍は見事であった。感謝してもしきれない。余ができることなら何でも申すがよい」
「それは後に申し上げます。先に私がお訊きしたいのはアイザックの処罰です」
「もちろん、あいつは処刑する。明日な」
「なら今、この瞬間に執り行ってもいいですよね?」
龍の発言にクラウスと王の護剣は動揺した。
あれほど平和主義者と言っていた主が言うセリフだと思ってもいなかったからだ。
しかし、シュトルツ王と妃は表情すら変えなかった。
いや、この姿にした時点で彼に感情を向けていないのだろう。
「よかろう。罪人を前に出せ!」
「ああ、胸糞悪ぃ」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
アイザックは言葉を発することなく処刑所から運ばれてきた断頭台の上に首をのせる。
死刑執行人に押さえつけられることなく自分の意思で。
「これよりアイザック・シュトルツの処刑を執り行う!異議のある者は唱えよ!」
音は何処からも零れ落ちなかった。
たった一言もこの処刑に反論する言葉は飛び出なかったり。
そして王はまるで氷のように冷たい目でアイザックを見下ろして言い放つ。
「執行せよ!」
断頭の刃を吊していたロープが切られて罪人の首に落ちる。
だが刃は途中でアイザックの首ではない何かに弾き返された。
それは鉄板、突如としてアイザックを守るように現れたのだ。
無論、こんな芸当ができるのは彼しかない。
「異議あり!…自分の息子を処刑するとか親か?ああ、本当に胸糞悪いわ。ガキから人生をやり直してこいや!クズ王!!」
「貴様!何だその口の利き方は!」
「いやいや、だってこれぐらいの口の利き方の方が正解でしょ?…それでもテメェ騎士道を貫いてんのか!?弱者を見捨てろ!実の息子は処刑しろ!いやぁ、随分と腐った騎士道を持ってるようで!虫酸が走るよテメェの性格にはな!!」
「…その者を捕らえろ!」
王の護剣は龍を守るために武器に手をかける。
そして王命を受けて周囲で待機していた騎士は剣を引き抜き龍を捕らえようとした。
しかし、
「偽物の騎士は出てくんな!それとお前らも手ぇ出すんじゃねぇぞ!」
龍の怒号で怖じ気つき半歩後退する。
仕舞いには構えを解いてしまう。
まさにその風格、威厳は魔王そのもの。
そして龍は魔族の姿に変わった。
「貴様…魔族か!」
「ああ!魔族だよ!何か文句あるか!こちとらテメェより年齢は上だ。年長者を敬え。…アイザックを見た時からこいつの親はどんな顔をしてるのかなぁとは思っていたが…。まあ、よく似てるわ。性格もまるっきりな」
「余がそこの罪人と似てるだと!?何処がだ!」
「はぁ!?今すぐに鏡を見てこい。何なら創るかこの場で?そっくりだぜあんたら。…てかさ親なら子に似てるって言われたら喜ぶものだろ普通?…報酬を言う。アイザックを引き渡してもらおうか!」
クラウスと王の護剣は息を呑む。
龍の発言の真意が理解できないからだ。
わかるのは龍はアイザックを助けようとしている。
昨日まで敵だった者を。
「ついでにテメェらの醜態をさらしてやるわ。泣いて喚いても止まらんからな俺は」
次回!龍VSシュトルツ王、妃!
なぜ龍はアイザックを救おうとしてるのか!
それではまた次の話で!




