85話 笑う貪狼 煌めく暁
犯罪シンジケートのリーダーが二名登場します!
後、二人とも直接的ではありませんが龍の関係者でもあります。
龍とアイザックの戦いが終わり、シュトルツ騎士王国の国民が次々と正気に戻っていく。
戦いの熱が冷めようとしている中、偶然にもジェイス、レイ、エイジは同じ場所で戦っていた。
「シュトルツの国民の手当てをしろ!」
「終わったらしいな」
ボロボロになったジェイスがこの場に居る筈のない二人に駆け寄る。
自分の身の回復よりも一教育者として生徒の安全を確かめるために自然と飛び出た行動だ。
「学園長!結構やられてるな!」
「君達こそ何故こんな場所に居るんだ!後で反省文を…いや、よくやってくれた。それよりも今は学園に戻りなさい」
実際にレイとエイジはシュトルツ騎士王国の国民を無傷で捕縛かつユルグレイト王国の騎士の手助けまでもした。
それが評価に繋がったということだ。
「だとさ。龍の方に戻るぞレイ。…おい、聞いてるか?」
駆けつけた学園長に目もくれずにレイはユルグレイト学園の方角を凝視していた。
そして僅かだが殺気まで出している。
肩を叩かれたことで気づいたのかやっと振り向く。
はっきり言ってさっきのレイは普段とは違っていた。
「…ああ、何の話?」
「疲れたのか?何かお前らしくなかったぞ。まあいい学園に帰るぞ」
「そういえば君達、ガイを見なかったか?」
ガイは元騎士団長のためこの騒動に駆り出されている。
しかし、ジェイスはガイを一切、見かけなかった。
「ガイ先生?俺様達は見なかったぜ。なあレイ」
「うん、見なかったわ」
「おかしいなぁ。あいつ、仕事をほっぽりだして何処で油を売ってんだ?」
その頃、ユルグレイト学園の図書館、本の楽園の屋上ではアイザック以上に狂った笑い声を上げている男がいた。
そして男の横には龍と一戦交えたリュカが佇んでいる。
要するにこの男は貪狼騎士団団長。
難なく警備を突破して宣言通り特等席で観戦していたのだ。
「…まさかリュカの言っていた気になる奴がルシフェルの孫だったとはな」
「はい、自分でも驚いています。どうしますか団長?」
「殺りたいけど…面倒な奴が来たからな」
「面倒な奴?」
貪狼騎士団団長が腰に携えていた剣に手をかけながら後ろを振り向くと二匹の狼を狙う狩人の如く鋭い殺気か二人に襲いかかった。
その殺気にリュカはやられて脂汗を垂らす。
体の奥から震えが伝わってきて振り返ることができない。
それに気づいた団長がリュカの背中をさすって
「大丈夫だ。殺させはしないから」
と言う。
「おいおい、もう少し穏やかに出てこれないのか?天魔の暁のリーダーさんよぉ」
現れたのは龍を助けた経歴がある黒鎧の男だった。
この男が所属しているのは独断で動いたのなら幹部にすら制裁を下す自称義賊集団、天魔の暁、しかもそのリーダーだった。
「黙れ外道!貴様、アイザックは仲間ではないのか!」
「使えないゴミを仲間と呼べるのか?呼べないだろ!」
「…殺すぞ」
(ヤバいってこの状況!俺の未来視で打開策を探してるが見えてこない!あいつの強さ団長と互角、いや、それ以上だ!こんな化け物が天魔の暁のリーダーなんて聞いていないぞ!)
リュカは必死になって団長を逃がす未来を探す。
だが見つからない見えるのは二人が戦闘をして自分だけが死ぬ未来、二匹の猛獣に挟まれた兎である。
「今はやる気が起きねぇよ。何かやったら目立って出れなくなりそうだし」
「賢明な判断だ」
「でも、爆弾ぐらい仕掛けていこうかな?」
「この学園には貴様の実弟も在学しているんだぞ!」
(実弟!?団長に弟がいたのか?)
実弟、その言葉が出た瞬間、貪狼騎士団団長の顔つきが変わった。
先ほどまでは笑顔で話していたが冷酷無慈悲な冷たい顔で睨む。
「おい、それ以上言うとマジで殺すぞ。それにあの魔族の師のような立場にあるんだろ?正体をバラされたくなかったらとっとと消え失せろ。なあ、ユルグレイト学園の体育教師ガイ・エレイザーク先生」
「貴様こそ実弟に居場所がバレないうちに尻尾を巻いて逃げたらどうだ?フィースベル新聞社の長男にしてレイ・フィースベルの兄ゼノ・フィースベル」
黒鎧の男は甲冑を外して素顔をさらした。
天魔の暁のリーダーは貪狼騎士団団長が言うとおりガイ・エレイザークであった。
そして貪狼騎士団団長のフードが風で脱げてレイにそっくりな猫人族のハーフのような顔立ちを現す。
それもその筈、彼はレイ・フィースベルの実兄ゼノ・フィースベルだから。
「まあ、仲良くしてこうや」
「無理だと思うがな」
二人の殺気は完全に消え去って本の楽園には誰も居なくなった。
というわけでガイは裏切り者でした!m(_ _)m
まあ、ほとんどの登場人物には疑いの目を向けておいてください!
ガンガン予想を裏切っていくスタイルで行くので!
まだ章は終わりません!
事後処理的な話があるので(-ω-;)
それではまた次の話で!




