84話 ハッピーエンドには程遠い
ハッピーエンドとは誰もが幸せな結末であるということ。
だが、悪役は違いますね。
龍の目指すハッピーエンドには程遠い。
龍はアイザックに鋭い眼差しを向けながら着地した。
大剣ではなく日本刀にして構え腰を少し下げて深呼吸をする。
そして地面を蹴り上げアイザックの懐に潜り込み斬る。
アイザックはまだ戸惑いながらとっさに反り返って交わし後退する。
「どうした?俺が魔王ルシフェルの血を引く者だと知って臆したか?」
「ふざけんじゃねぇぞ…。魔王ルシフェルの血筋だぁ?何でそんな奴がここにいるんだよ!」
「さあな?俺だってよくわからん。いきなり家に押しかけてきて異世界に飛ばされたからな。でも、これだけは言える」
刀を構えて龍は左右の木を蹴りながらジグザクにアイザックのもとに迫る。
だがアイザックはまた避けた。
摩擦を無効化しているのにアイザックは今、斬撃を恐れている。
「テメェを倒すのに血筋なんてもんは関係ねぇよ」
「ああぁぁ!!」
頭に血が上りアイザックは斬りかかってきた。
俺はそれを交わして背中に軽い切り傷を入れた。
やっぱりこいつの弱点というか天敵がわかってきたぞ。
そして一番の天敵はこの俺だ。
「なあ、俺の魔法は無効化できないんだよな?だけど摩擦は無効化できる。けど魔力を纏った刀で斬ったらどうなるんだ?」
『考えたな。摩擦は無効化されていても魔法は無効化されていない。なら無効化されていない魔法、つまり魔力を武器に纏わせれば斬れる。龍に魔法という概念が存在しないからこそ成せる技だ』
「まあ、斬れるだろうな。テメェの個力って変換した常識より変換されてない常識の方が優先度は高いんだろ?」
龍に問い詰められたアイザックは歯を食いしばって龍を睨みつける。
「そして継続して変換できる常識はおそらく三つか四つまで!今は身体の限界の常識を変換させて疲労をなくし、地面は武器にならない常識を変換、斬撃を無効化するために摩擦の常識を変えてなくした!」
今度は捉えた!
斬られた後にすぐに回復されたがダメージはある!
(全部、見抜かれた!ここはいったん撤退して団長の助けを…)
「逃がすかよ!」
龍は魔眼の力を使って創造で盛り上げて創った土壁を鉄に変えて周りを覆いアイザックの逃げ場をなくした。
「もう観念しろ!今なら何とかなる筈だ!両親や兄弟だって心配しているだろ!」
「両親や兄弟…?そいつらのことを口に出すな!!俺はもう全部、失っていたんだよ!生まれた時、この瞬間も何も得てねぇんだよ!誰かが心配するだと…?居ねぇよ!そんな奴ら!だから俺は貪狼騎士団に入ってこの世界を破壊すると決めた!俺を見てくれない世界、俺を認めてくれない世界なんて存在しても意味ねぇんだよ!だからさ…。ここでくたばれえぇぇぇぇぇ!!」
今の言葉でお前のことが全部わかった気がする。
大丈夫だもう悲しまなくていい。
お前の世界は俺が新しく創ってやる。
だからもう、そんな悲しい顔はするな。
今はおとなしく黙って寝ていろ。
龍は鞘に収められた刀を創る。
そしてアイザックが大剣を振り下ろすのと同時に前に踏み込んで素早く引き抜いた。
抜刀という動作は振り下ろす動作よりも速い。
だから龍の方が速く打ち込むことができたのだ。
「何で皆、俺のことを否定するんだ…」
腹に打ち込まれたアイザックはその場に倒れて気絶した。
魔力を一点に集中さけた峰打ちである。
「こういうのをハッピーエンドと言うんだと思うけど俺の思うのとは違うな。ああ…ハッピーエンドには程遠いな」
俺の思うハッピーエンドになるようにできるだけ頑張るとしますか。
クラウスさんや王の護剣の方にどやされると思うな。
今、この時を持って貪狼騎士団として生きてきたアイザックの人生に幕が下りた。
龍VSアイザック、終わりました!(°∇°;)
一応、まだ章は継続して次回の第七章に行く前に六.五章をやります!
まあ、第七章に行く前の前日譚的なものです!
それではまた次の話で!




