82話 友との約束
ついにあの大帝国の軍勢が到着します!
拒絶により体育館への攻撃を防いでいるシエラに限界が来ていた。
個力は何でもできる特殊な力だと思われがちだが色んなリスクが付き物だ。
共通しているのはゼロ・コントロール状態になること。
そして使い慣れしていないと魔法よりも繊細な制御を伴う必要が出てくる。
個力使いは幼い頃より己の個力を制御する事を常としていたがシエラは違う。
シエラは長年、鉄塔に引き籠もっていたため感覚が抜けている。
それに外に出てからまだ数日ほどしか経過していない。
要するにまだ感覚を完全に思い出していないのだ。
そんなシエラが絶えることなく個力を使い続ければどうなる?
当然、そ疲労困憊になり、その場に倒れてしまうだろう。
そして残り数秒ほどでそれは訪れる。
「シエラさん!もう、やめてください!」
「大丈夫…これぐらいシエラは何ともないから」
そして限界が来た。
倒れそうになるがシエラはその場に止まって最後の力を振り絞り全神経を集中させて認識を阻害させる。
その時のシエラはまるで狩る側の存在になった竜のような目つきをしていた。
竜の血がそうさせているのかはわからないが目でこう訴えかけているように見えた『シエラにもプライドがある』と。
大好きな人が再び戻してくれたこの場所を守るためにシエラは全力を尽くす。
だがやはり気力でどうにかなるモノではなかった。
シエラは崩れるように倒れた。
拒絶により守られていた体育館に魔法が次々と着弾する。
体育館の外で戦っている風紀委員会フィアナ達もその場に膝を突いた。
だが間一髪、絶望で塗り尽くされた空間に希望が広がった。
「貴様らの悪逆もここまでだ!貪狼騎士団!」
その声がした方角をこの場に居る全ての人々が目次する。
ある者は窓から顔を覗かして。
ある者は踏みとどまりながら見上げて。
ある者は攻撃の手を止めて。
不自然に空いた大きな異空間から次々と武装した魔族が戦場に軍靴を揃える。
ルシフェル大帝国からの援軍がアリスの空間歩行者の能力により到着したのだ。
「ルシフェル大帝国軍?」
その中には王の護剣の四人の姿もあった。
「やれやれまだリーダーが不在の中、こんな事が起きるとは私達も落ちましたね」
「だがやることは同じだアヴェル。我らの主を助けるぞ」
アヴェルの横にいる大柄な鬼のような魔族は王の護剣、四人目のメンバー、キース・オウガ、愛国心が誰よりも強く、そして王の護剣であることを誇りに思っている。
更に今は主の危機に駆けつけれた事に高揚感を抱いている。
「陛下、足元に気をつけてください」
「ありがとう。だが私は代理だ。陛下じゃなくて名前で呼んでね」
異例なことにルシフェル大帝国代理皇帝クラウス・ベルブゼラの姿も確認された。
「全軍に通達!各団長の指示に従いシュトルツ騎士王国の国民を捕らえろ!なお第一から第四騎士団はここに残れ!これより作戦を開始する!一人も欠けずに帰るぞ!」
クラウスの言葉が全軍に伝わるとルシフェル大帝国軍の兵は各団長の指示のもとユルグレイト王国内に散っていった。
「うん、上出来だな」
(さて、シュトルツ騎士王国の王子様はこの状況をどう見るかな?)
突如として出現したルシフェル大帝国軍によりアイザックは動揺して攻撃の手を止める。
その間に龍は一気に階段を駆け上がる。
「何故、ルシフェル大帝国軍が来ているんだ!いや、あいつは魔族で要人並みの扱いを受けている生徒だから当たり前か…。だがどう見てもほぼ全兵力が来ているぞ!?どういう事だ!?というかさっきから舞っているこの白煙は何だ!」
どういう事って俺が次期皇帝だからだよ!
ありがとうアリス!
これで気にすることなく思う存分、暴れられる!
それと闇の球と表面を黒色で覆った石灰の粉が白煙の代わりになった!
これでアイザックは思うがまま動けない!
今なら行けるぞゼロ!
「そろそろ目的地だ!準備はいいな!」
『いつでも行ける!一発、ぶちかましてやれ!』
前はいい忘れだがこれを言わさせてもらうぞ!
平和主義者はキレるとそこら辺の奴よりヤバいんだよ!
「平和的解決はしねぇ!精々、後悔しないよう全力を尽くすことだな!」
次回!龍VSアイザック!
だが時間が経つにつれ希望を失っていくユルグレイト王国の民達。
その時、龍は衝撃の行動を取る!
それではまた次の話で!




