75話 近づく軍靴
今回は第五章の後日談と第六章の展開を含んだ話になっております。
…それだけですσ(^◇^;)
書くことがない(*´▽`*)
あの件以降はシエラも通常通り授業に参加している。
それと外の世界に触れさせるとゼロ・コントロール状態は治るというのは間違いなかった。
だが万が一に備えてゼロの能力でゼロ・コントロール状態を抑え込む事ができる俺の隣部屋になった。
そのことでやたらフィアナが文句を言ってくるが無視している。
文句を言われても変えられない。
仮に変えて再び起きたらどう責任を取るんだ?
てか、転校してから女子と相部屋の俺の方が文句を言いたいぐらいだ。
「お疲れ。ガイ先生の稽古、どうだった?」
「授業と違って加減をしてこないから結構、疲れた。避けようとしてもすぐに回り込まれる。流石は元騎士団様だ」
「あ、龍」
風を入れるため開けっ放しにしていたドアからシエラがひょっこりと顔を出した。
冷房は取り付けてあるが節電のためだ。
そして、まだ学園に残っている人も同様に扉を開けているので部屋が丸見えの状態になっている。
エイジが入れたら鼻の下を伸ばして通っている筈だ。
「よう、シエラ。何か用事でもあるのか?」
「幸せ感じに来た」
「シエラさん、そこを退いてください」
おいおい、シエラの次はシアン先輩とアリスかよ。
それに大きなテレビまで運んで映画の鑑賞会でも開くのか?
同居人のフィアナはともかく何で俺の部屋に人が集まってくるんだよ。
「そこのテーブルを借りますね」
「うぇ~。やっと解放されるよ~」
こんな暑い中、重たい物を運ぶとかご苦労なこった。
今度はエレノアまで入ってきやがった!?
今日はどんだけ人が来るんだよ!
本当に鑑賞会をするつもり…ではなさそうだな。
エレノアから笑顔が消失している。
太陽のような笑顔を浮かべていたエレノアが何故、あの日の顔付きに戻っているんだ?
「何やってんの?お姉ちゃん」
「ちょっと一大事が起こってね。龍、これを見て」
シアンはテレビの電源をつけて龍にニュースを見せた。
画面には大勢の人々が軍隊のように行進している様子が映った。
避難民ならば納得のできる光景だが彼らは武装している。
それに五列編成と隊列を乱さず無表情で歩み続けているため恐怖の感情が湧き上がってくる
軍隊よりも無表情のことから蟻の群という言葉の方が似合う。
『ご覧ください!この軍勢を!これは全てシュトルツ騎士王国の国民です』
「シュトルツ騎士王国…それって確か」
「アイザックの母国です」
アイザックの母国の連中が何をしているんだ?
しかもこんな大勢で。
『この軍勢は南西に向かっております。当然、各国の軍隊が進軍を止めるよう忠告しますがそれを無視し攻撃を行い撃退して今もなお歩み続けております!いったいこの軍勢は何処に向かっているのでしょうか!?』
場面は変わり何処かの王国の王都が映し出された。
ユルグレイト王国の王都ほどではないが広い。
しかし、優雅な街並みに反して誰も道を歩いていない。
『シュトルツ騎士王国は幼児や病気、寝たきりの者、ケガで動けない者を除き全ての国民が消えております!現在は隣国の軍隊が救出に来ている模様です。今の所、被害報告は出されておりません』
シアンは立ち上がってテレビの横に立ち視線を集めた。
「どう考える?」
「どう考えてもここに向かっているよな。でも、その前におかしすぎる」
「ええ、まるで国民のほぼ全員が何かに取り憑かれたかのように進軍してるわ。それに進軍する理由がない。もし、それがアイザックが引き起こした事件の報復によるものならユルグレイト王国との関係をより悪化させるからやる意味がないの」
じゃあ、何で国民は進軍しているんだ?
理由がないのにずっと歩いている。
何かに取り憑かれたかのように。
待てよ…。
「そもそも理由がなかったりして!」
言おうとしたがアリスに先を越されたか。
「理由のない進軍…。何で?」
「さあ?」
『さあ?』ってそれ以外、何も考えてないのか。
しっかし、この状況ってあの物語に似てるな。
何だっけ?そうそうあれだ。
「ハーメルンの笛吹男」
「何それ?」
向こうの世界の物語だから仮に知っているのなら驚く。
物語っつうよりかは伝承の方が正しい。
わかりやすいよう説明するか。
「ハーメルンという町にネズミが大繁殖しました。困り果てた村人に町を訪れた色彩豊かな服装をした笛吹男が『報酬をくれるのならネズミを退治してみせましょう!』と持ちかけてきた。町人達は承諾して笛吹男にネズミ退治を依頼した。すると笛吹男は笛を吹き、その不思議な音色でネズミ達を操り川に入れて溺死させた」
「まるで魔法だね」
アリスの言うとおり魔法のようだ。
まるで精神操作系の魔法を使ったかのように。
「ネズミ退治をした笛吹男は報酬をもらおうとしたが町人達はその約束を破り払わなかった。その後、笛吹男は町を去ったが再び町に現れた。笛吹男は町人が子供のそばにいない時を見計らって笛を吹いた。そして、その不思議な音色で町の子供達を連れ去りました。そのうち二人の子供が付いていけず無事だった。そして笛吹男と連れ去られた子供達は二度と戻ってこなかったとさ。そこで話はお終い」
伝え方を変えれば真実は伝承に変わる。
それが摩訶不思議な出来事なら尚更のことだ。
「その話と今、シュトルツ騎士王国に起きている状況が似ていると…」
「確かに似てるね。それに人を操る小さな角笛のような神器がある。でも、それは冒険家ギルドが厳重に保管してるから別の」
「それは間違いよシアン。その神器は盗まれている」
王女だからそういう情報は直ぐに入ってくるんだな。
「エレノア、盗んだのは何処の誰だ?ギルドが厳重に保管していたのならただの盗人じゃないだろ?」
「憶測だけど貪狼騎士団ということになってる」
アイザックは貪狼騎士団の団員…。
考えぬまでもない盗んだのは貪狼騎士団だ。
そしてこの軍勢を率いてるのはアイザックで間違いない。
「この軍勢を率いているのはアイザックだ。ユルグレイト王国に攻めに来るぞ」
「私、お父さんと話し合ってくる!」
エレノアは寮を飛び出してユルグレイト城に走っていった。
「フィアナ、私達もお父さんの所に行くよ!」
「…ボク達はどうしよう?」
「…国民を少しでも避難させる。それまでにはエレノアが話をつけてくれる筈だ。それに早くしないとマズい」
「何でなの?」
「あの軍勢とそれほど距離が離れてない。直に到達する」
こうして俺達はアイザックが操るシュトルツ騎士王国の国民を迎え撃つことになった。
もちろん、アイザックは俺がこの手で倒す!
あと何話かでシュトルツ騎士王国軍がやってきます。
そんでそれを迎え撃つそんな章です。
それではまた次の話で!




