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69話 龍VSシエラ①

殴り合いはしませんよ。

口喧嘩しまくります!

It's show time!!

 放課後の鐘が鳴ると龍は直ぐに学園長室に向かった。

 誰に話しかけられようとも全て振り切って一直線に突っ走った。

 理由はただ一つ、女の子を助けるため。


「学園長、今日、シエラのゼロ・コントロール状態を直します」


「シエラ?そんな名前の生徒はいないぞ」 


 これまでにないぐらい状況がかなり悪化している!

 もう例の本による記憶保持は効かないのか!?

 シエラを認識しているのはもう俺だけなのかよ!!

 手遅れになる前にやらないとシエラが!


「とりあえずこの本、借りますよ!」


「ちょっと待ちなさい!何処に行くんだね!!」


 そんなの一日前のあんたなら訊かなかったぞ!

 しっかりしろよ!あんたの生徒だろうが!


「植物園ですよ!…それとこの世界では勇者と魔王、どっちが正義の味方でしたっけ?」


「魔王だ」


 だろうな。

 魔王の爺ちゃんが崇められてるぐらいだ。

 だったら俺は今だけ勇者になる。

 何を言われようが地獄から引きずり出してやる!


「ありがとうございます。…昨日、何をしたのか思い出してください。きっと後悔しますよ」


 魔眼、サポートを頼む。

 こっからは言葉の全力勝負だ!

 気を引き締めていけよ!


『心得てる。小僧、何故そこまでしてあのドラゴニュートを助けようとする』


「理由なんているかよ!誰だってそう言うぞ!」


『相変わらず面白い奴だな』


 龍はシエラの事が書かれた本を持って植物園の鉄塔に行った。

 鬼気迫る表情で学生証を提示し何も語らずに秘境エリアに入る。

 そして鉄塔を登って扉を開けると部屋の中央付近で胡座をかく。

 シエラは一瞬だけ戸惑ったが心を読んで今の状況を理解する。

 

(全員からシエラの存在認識を消したんだけどな。やっぱり龍はシエラのことまだ認識できるんだ)


「シエラ、状況はもう理解しているな」


「うん。でも、無駄だよ」


 シエラの目からは初めてあった時に見た輝きは失っていた。

 よく、見ると朝食がそのまま置いてある。

 …信じたくなかったが確定した。


「死ぬ気か?」  


「そう」


 よくもまぁそんなこと躊躇なく言えるな。


「…シエラ、勝負しないか?力ではなく知恵で」


「つまり、口喧嘩?」


 口喧嘩ね、確かに今から俺はシエラと言葉の勝負をする。

 口喧嘩って捉えられても仕方がないな。


「そうだ。俺がシエラに勝ったらシエラはゼロ・コントロール状態を治す。シエラが俺に勝ったら俺の存在認識を消すことができる。悪くないだろ?」


「…乗った。けどシエラの意志は絶対に変わらない」


 よし乗ってきた。

 短い付き合いだがシエラが勝負好きだということはわかっている。

 魔眼、手筈通りやってくれ。


『了解』


 魔眼にはシエラの精神観測者(マインドウォッチャー)を無効化させるよう頼んである。

 次の話すことが読まれてしまったらいくらでも言い訳を作ることができるからな。


「構わない。変えてやるからな。そんで諸注意だ。口調が激しく変わってしまうからビビるなよ」


 これぐらいやらないと伝わないからな。

 さて、これより観客不要の推理ショーの始まりだ!

 そんなカッコつけ台詞はゴミ箱に捨てて気を引き締めよう。


「まずはゼロ・コントロール状態についてだ。シエラ、クリスタルローズを見てゼロ・コントロール状態が治ったっていうあれ嘘だろ?」


「どうして?」


「文献を調べた」


 帰ってから早々に俺は拒絶(リジェクション)について調べた。

 だが調べてもシエラから得た同様の情報しか出てこなかった。

 まあ、写真にすら影響を与えれるんだ。

 情報を隠蔽するために文献に工作をしているのは間違いない。

 なので魔眼を使って解除させた。


「正解なら学園長が既にやってる。それこそ嘘でしょ?」


(さっきから龍の心が読めない)


「大方、『前の保持者がいた』という存在認識を消したんだろ。文献には『保持者を俗世間に触れさせたら治った』と書いてあった。しかも全ての保持者をだ。要はお前を俗世間に触れさせたら治るんだよ」


 このゼロ・コントロール状態を俺達の世界風に現すと心が傷ついて引きこもった若者だな。

 俗世間に触れさせるというのは再び生きる希望を持ってもらうっていうことかもな。

 つまり、このゼロ・コントロール状態は自殺願望の表れ。

 …名前の通り保持者の生を拒絶する最悪の個力だ。


「そして最も大きな理由はクリスタルローズがあるアルファス洞窟とお前が住んでいた屋敷との間の距離、約五キロだった。なりふり構わず周りの人間の存在認識を消す奴が五キロも歩いてたらとっくにお前の存在認識は完全にこの世から消えてる」


 学園に帰る前に調べてみた。

 商店街や民家も沢山あったため確実に消えているだろう。


「何が言いたいの?」


「要は矛盾してんだよ。過去のお前と今のお前がやっていることが。過去は外に出ても良し、けど今はダメ。そう簡単に能力は変わらねぇよな!どういうことか説明してくれるか?」


「龍の言う通り嘘だよ。シエラを外に出せばゼロ・コントロール状態は治る。でも、絶対に出ないから。そして嘘をついた理由も言わない」


「別に聞かなくてもわかるから。これな~んだ?」


 龍は持ってきた鞄から一冊の本を取り出した。 

 ジェイスが読んでいた本ではない。

 昨日、拝借したヤツだ。


「…それってシエラの贖罪の書!?何で龍が持っているの!?今朝確認したのに!返して!」


 確かに昨日、俺は贖罪の書を元の場所に戻した。 

 だが戻したのは創造(クリエイト)で創った偽物だ。

 核心を突かれて徐々に口数が増えてきている。

 シエラが動揺している証拠だ。


「返さない。何故ならこれとジェイスから奪った本を照らし合わせるとお前が隠し続けてきたことがわかるからな」


 龍はシエラが本を奪い取らないように強化ガラスの壁を創り贖罪の書とジェイスが記した本を読み出した。


次回、シエラの自殺願望の理由がわかります!

それではまた次の話で!

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