68話 理不尽再び!
久しぶりにあの子、登場させます。
ああ、フィアナです。
十話ぶりの登場ですσ(^_^;
(起きるとあの人の姿が何処にもなかった。行っちゃったんだ。もう会えないかもしれない。少しだけ幸せに浸っていたことは認める。でも、両親と姉を殺した私がこんな幸せを味わってはいけない。もうすぐそっちに行くから待っててね。)
シエラが最悪の結末を迎え入れる決意を決めた同時刻、龍は教室の壁を突き破り地面に転がっていた。
これが昨日や一昨日などの一階よりも高い階層なら死んでいただろう。
でも、彼は不死身なので死なない。
さて、何故にこの様な状況に陥っているのか?
その答えはは考えなくてもわかる。
彼の相部屋の相手に殴られたのだ。
想定内だが想像以上の威力だったな…。
ユルグレイト、一階にしてくれてありがとう。
「昨日は何処に行っていたのよ!」
「ちょっと帰れないトラブルがあって…」
「だったら一つや二つの連絡くれたっていいでしょうが!」
そして、この痴話喧嘩らしきものをクラスメートは止めようとはしない。
見捨てたわけではなく『いつもの事だ』と半ば呆れているのだ。
一方でエレノアは机に顔を当て呑気に寝ている。
まあ、龍に彼女ができたと勘違いして現実逃避しているのだ。
実際、この鈍感男に彼女ができるなどまだ先の話なのに。
「だからっていきなり殴るか!?普通!『おはよう』の返しが『歯を食いしばれ』とか初めての経験だったぞ!」
「こっちは心配してんのよ!」
「心配してるなら殴るなよ!」
「うるっさーい!!」
龍も『説明できるものならしてやりたい』と内心ではそう思っている。
しかし、ゼロ・コントロール状態の影響を受けているフィアナにシエラについて説明するは不可能なことだ。
何故なら存在そのものを世界から抹消しているから。
「まあまあ、そんなに怒ると龍君に嫌われるよ」
「龍に嫌われる!?…そうなの?」
何で怒ってる張本人が訊いてくる。
仲裁されるとすぐに収まるよな。
「別に嫌いになんてならない。連絡しなかった俺の方も悪いし」
「そうよね~。今回は龍が悪いもんね~」
「あぁ!?いきなり殴るフィアナも悪いだろ!」
(…仲裁したのにこの二人は何ですぐに痴話喧嘩するのかなぁ)
二人は女子生徒の仲裁がなかったかのように再び睨み合う。
フィアナの睨みは機嫌を損ねた猛獣のようで近寄りがたい雰囲気を醸し出す。
そして仲裁した女子生徒は刺激しないように友達の方に行って、喧嘩の終わりを見守るのであった。
「どうせ龍には素敵な彼女がいるんだしすぐに嫌われるわよ~」
先ほどから起きていたのかエレノアが愚痴を零した。
それは二人の周辺に満ちる重圧感のある空気をかき消すが決して重みが取れた訳ではない。
逆にクラスの女子から注目を浴びるきっかけになってしまった。
「誰が!いつ!どこで!素敵な!彼女が!できたって!」
そして身に覚えのない言葉を聞いた龍は直ちに否定を始める。
この際に言っておくが龍に彼女がいたことなど一度もない。
故に女学園に登校すること自体が龍への苦行になっている。
「…そうじゃないの?」
「できとらんわ!」
「…私にもまだ望みはある!?」
エレノアは完全に目を覚まし立ち上がる。
その目はいつものエレノアらしい輝かしい光で満ち溢れていた。
「何の!!」
「朝っぱらから龍っちのクラスは賑やかだねぇ」
教室の中央にアリスが現れる。
ちょうどエレノアと俺の視線を遮るかのように。
相変わらずアリスの個力は神出鬼没で恐ろしいな。
「お前のクラスは百二十一階だろ。早く教室に入れ」
「ほいほい」
アリスは転移の扉を出して自分の教室に戻っていった。
それと入れ替わるようにティルミッド先生が入ってくる。
「はいはーい、皆さ~ん。もうすぐチャイムが鳴りますよ~。席に座ってくださ~い。龍君も早く教室に戻らないと追い出されますよ」
本当だもう再生している。
修復機能半端ないな。
「それでは朝礼を始めます!エレノアさん、お願いします」
「起立!気をつけ!礼!」
エレノアの授業開始の合図によりいつも通り摩訶不思議な授業が始まった。
シエラ、何してんだろうな。
『小僧、今日、決着をつけるのだろ?』
ああ、そのつもりだ。
そして今日の午後にシエラの運命は大きく変わるのであった。
しかし、結果はまだわからない。
龍の予想が当たっていたら皆が幸せの最高の結末に外れていたら取り返しのつかない最悪の結末に。
まだ結末は定まっていない。
龍はシエラの運命を変えることができるのだろうか。
次回、シエラのゼロ・コントロール状態を直すためシエラと言葉の戦いをします!
この物語のヒロインって結構、闇が深いんです。
それではまた次の話で!




