67話 地獄から愛を込めて
シエラが病んでいた時代の話ですね。
まあ、黒歴史ぽい物が出てきます(ー_ー;)
クリスタルローズを採ってきた龍は翌日にそれが入った鉢を持って植物園の鉄塔を訪れた。
何でシエラがこんなことをしたのかわからない。
だけど俺の為すべきことは変わらない。
この寂しげな鉄塔からシエラを必ず助ける。
『小僧、善意とは時に悪意になるということを覚えとおけ』
それで誰かが救われるのなら俺は喜んで悪役になる。
悪役は時には主人公になるんだよ。
『好きにしろ』
龍はいつものように扉を開けて、シエラにクリスタルローズを見せた。
だがシエラのゼロ・コントロール状態は治らなかった。
そして龍はわかっていたのか鉢を机の上にそっと置いた。
…それからいつも通り、龍は鉄塔で過ごす。
知らぬ間に日が沈みだし龍は帰ろうとするがシエラに止められた。
「今日、何か閉館時間が早めになってる。多分、外に出れないよ」
マジっすか…。
そういうことは事前に言ってくれませんかね職員さんよ!
てか、閉館の確認とかしないの!?
というわけで龍は鉄塔に泊まることになった。
「開館は翌日の八時、その時に出たら間に合うよ。寝床は下の広間。上は立ち入り禁止」
「了解しあした~」
夕飯は転送装置で俺の分も何故か送られてきた。
学園長は俺が鉄塔に居ることを知っているので何ら不思議な事ではない。
っていうか夕飯を転送する前に助けに来いや!
あんたの権限でどうにかなるだろこの状況!
ああ、明日のフィアナの第一声が脳内で鮮明に再生される。
「今更だけど風呂はあるのか?」
「地下にある」
地下とかあるんだ。
何回も来ているのに気づかなかった。
きっと巧妙に隠されているんだろう。
「シエラは今から入浴する。…覗いたら許さない」
「覗きません。覗いたら何か得でもあるのか?」
「…少しは下心持て」
シエラは少々、怒りながら地下の風呂場に下りていった。
ところで何故、怒ってたんだ?
不快な気持ちになるだけだろ?
その後、俺も入浴を済ませて寝床に入った。
しかし、その数刻後、俺は物音で目を覚ました。
詳しく説明するとシエラの寝言である。
寝言にしてはえらく大きな寝言だったからだ。
「何だ今の?」
『ドラゴニュートの寝言だな』
「やたらデカかったぞ。…心配だし様子を見に行くか」
俺はシエラの様子を見に行った。
シエラはまるで悪夢を見ているかのようにもがき苦しんでいた。
そして『ごめんなさい』、『置いてかないで』、『一人はやだ』等の寝言を言う。
どんな夢を見ているのかわからないが想像もしたくない。
そしてシエラは起き上がり寝ぼけながら泣き出す。
俺はとっさにその手を取る。
「大丈夫だ。大丈夫だからゆっくりと休め」
「お父さん、お母さんごめんなさい。シエラのせいでお父さんとお母さんが…」
数分ぐらいで落ち着いたのかシエラは再び眠りについた。
「深刻だな」
『小僧、あの一角、怪しくないか?周りの床と少し色が違う』
何かを隠しているのか?
…気が引けるが悪い調べさせてもらう。
龍は不自然な色をしている床を静かに外す。
そこには魔法で削り取ったかのように後に作られた何かを隠すための穴が開いていた。
そして赤黒い表紙をした分厚い本が入れられていた。
「何だこれ?」
『贖罪の書、己が犯した罪を忘れぬように文字として綴るための書物だ。要はこのドラゴニュートが犯した罪がわかる』
シエラが犯した罪…。
俺は躊躇いながらも贖罪の書を開けた。
初見は目を背けて本を閉じたが深呼吸を入れて再び開ける。
その本には『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい』と何度も何度も書かれていた。。
何かに取り憑かれたように気が狂ったように。
やっと『ごめんなさい』が終わったと思ったら次のページはこの本の表紙のように赤黒く血で染まっていた。
そしてまた『ごめんなさい』の連続。
こっちも気が狂いそうだ。
だがそれ以降のページにはそんなのはなかった。
ただこれまで自分に起きたことを全て綴ってある。
「確定だな」
そして最後のページにはこう記されていた。
私は私自身の罪を赦すことができない。
だから私は私自身をこの世から消すことにした。
もし、この書を見つけたのなら私はもうこの世にいないのだろう。
この書を見つけた方にお願いがありますどうかこの書を燃やして処分してください。
また隣に私の遺骨と思われるものがあるのなら粉々に砕いて土にまいてください。
例え天国行きの切符をもらったとしても私はそれを捨てて地獄に飛び降ります。
そして永劫に苦しみを味わいながら業火に焼かれてそこで過ごしていきます。
運命の傀儡人形より地獄から愛を込めて。
「ほぼ遺書のようなものだな。安心しろシエラ、お前は死なない。俺が生きることの喜びを教えてやる」
贖罪の書を床に開いた穴に入れると龍は立ち上がり部屋を後にする。
常人なら憂鬱な表情を浮かべるとこだが彼は違う。
また一歩、また一歩と段を下りるに従って決意を増していく。
世界に見放された少女が居たのなら彼は迷わずに助けてみせる。
それも絵本に出てくる白馬の王子様が逃げだす程の運命を背負った少女ですらもだ。
乞われたから助けるのではない。
泣いていたから助けるのだ。
その行動こそが英雄魔王ルシフェルの血を受け継ぐ証拠である。
寝床に戻った少年の心はより強いエゴで満たされていた。
そろそろ、この章は終わります。
血まみれになることもあんまなかったし平和な章だったんじゃないですかねえ。( ・ω・)
え?『ホーンランスドラゴンの時に血塗れになっただろ』って?
さあ、何のことでしょうか(^◇^;)
それではまた次の話で!




