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62話 クリメリア地方へ

クリメリア地方編スタート!

そして王の護剣のメンバー、二名登場!

 授業も終わり昼過ぎの鐘が鳴る。

 そして俺と学園長は長距離転移装置を使用する事ができる転移の館にやってきた。

 それにしても入り口で渡されたこの袋は何に使うんだ?

 訊いてみるか。


「学園長、この袋って何に使うんですか?」


「後でわかる」

 

 …何か超嫌な予感。


「アルファスに転移します。行ってらっしゃいませ」


 そうそう、アルファスというのはクリメリア地方にある街の名前でシエラの家がある街だ。

 というか名前の通り例の洞窟があります。

 アルファスの街にあるからアルファス洞窟。

 

 龍とジェイスは一瞬にしてアルファスに着いた。

 しかし!


「「オェ~」」


 これってゲロ袋だったんだ…。

 何か車の中でゲームしてたら来る酔いを数倍にした感じだな。


「転移は金がかかるし転移酔いというものが起こるので貴族でも一大事にしか使用しないんだ」


「ゲロ袋はこちらのゴミ箱に入れてください!」

 

 職員もゲロ袋って言ってるし!

 ああ~気持ち悪ぃ~!


「さて食べ歩きをしながら例の洞窟まで行くぞ」


「…わかりました」


 今日の昼飯、喉を通るかな?

 朝ご飯らしき物が殆ど出たぞ。


 まだ振り払えない吐き気を堪えながら二人は転移の館から出た。

 そしてジェイスは龍をその場に置いて近くの露店に顔を出す。

 どうやらジェイスはこの露店の常連客ようだ。

 その証拠に店主と詰まらない世間話をしている。

 その世間話のついでに名物である洞窟蛇の薫製焼きを買って龍に渡した。


「何これうまっ!」


「旨いだろ!洞窟蛇の肉を薫製にして焼いたものだ。噛めば噛むほど味が出てくるぞ」


 ちょっとは抵抗したが口に入れると案外行けるものだな。

 それに塩というシンプルな味付けがいい。

 だがハーブとかで香り付けがしてあるので嗅覚でも楽しめる。

 はっきり言って飽きない味だ。


「さて本題に入るぞ。今から行く場所はアルファス洞窟という水晶が採れる大きな洞窟だ。一応、整備はされているが魔物も出没する危険地帯でもある。なので冒険家を連れて入るしかない。だが我々は別の方法を使う」


 別の方法?

 学園駐屯騎士団を連れてくとか?

 

『小僧、自分の身分をもう一度、思い出せ』


 ああ、そういえば俺って次期皇帝だった。

 自分が王族なんてまだ自覚がないんだよこっちは。


「王の護剣ですか?」


「そうだ。二名、同行している。それとアヴェル殿は用事で来れないらしい」


 何か悪い事をしたな。

 来てくれた方には謝ろう。


 食べ歩きをしながら二人はアルファス洞窟に到着した。


「王の護剣はもう到着している筈だが…」


 …一応、魔族の姿に戻ってみたがわからないのかな? 

 けっこう目立ってると思うぞ。

 漆黒の角と大きな黒い翼、竜のような尻尾、絵に描いたような姿だ。

 目立ってなかったらおかしい。

 …あれかな?

 さっきからずっと岩の後ろで揉めている。


「あの二人じゃないですか?」


「そうそう、あの二人だ!ヘイス殿!ウルミナ殿!ここです!」


「ヘイスのせいでバレたじゃない!」


「ウルミナが騒いだせいだ!」


 何か隠れていた方が良かった的な会話をしてないか?

 まさか裏切りパターンじゃ…。


「お目にかかれて…これは違う。…お会いできて光栄で痛って!」


 緊張のせいかヘイスは途中で舌を噛んだ。

 そしてウルミナは恥ずかしさのあまり赤面している。

 いや、今すぐにでもヘイスを殴りたいのか拳を握っている。


「何やってんの」


「しょうがないだろ。緊張してんだ」


 ああ、緊張してただけか。

 確かに初めて誰かと会うときは緊張するよな。

 俺の場合は嫌でもガキの頃に強制的に慣れさせられたが。


「お会いできて光栄です龍様。私は王の護剣所属のウルミナ・レイティスです。で、このバカはヘイス・ウィディア」


 おお、ウィディア家の魔族だ。

 爺ちゃんの家臣の子孫だな。


「バカとは失礼な!龍様、今回は我々が護衛として同行します」


「忙しい所、申し訳ございません。よろしくお願いします」


 当然のように龍はお辞儀をした。

 何かをしてもらう相手にお礼をするのは当たり前だが龍の場合は違った意味になってしまう。

 初対面ほど相手の器を理解していない状態はない。

 二人は龍に対して厳しく規律にうるさい印象を抱いているのだ。


「ちょっとヘイス!龍様に謝られたよ!」


「ヤバいって!絶対に首が飛ぶぞ!」


 おい!ちょっと待て!

 俺ってどんな奴に見えてんだ!?

 恥ずかしさによる緊張ではなく、そっちの方面での緊張か!

 まるで理不尽な上司に接する部下だな!


「普通に接してください」


「無理です!無理です!」


『小僧、話が進まんからお前が合わせろ』


 それもそうだな。

 魔眼にしては良いアドバイスをするな。


「俺はそんな残虐なことはしませんよ」


「そうなんですか!?良かった~」


 これで話が進む。

 変な誤解、生まれすぎな。


「では、そろそろ行きましょうか」


「そうですね。その前に龍様のサインをお願いしてもいいですか?」


「え?何で俺なんかの」


「いやぁ、理由は単純で皇帝のサインって滅多に貰えるものじゃないですし側近系の職業で流行っているんですよこれ」 


「別にいいですけど何その流行り」


 側近系の職業にとって主人はアイドル的な立ち位置なのか?

 …ガチの色紙を出したしサインの文化ってこの世界にもあるんだな。

 騎士団長とかもその立ち位置になるのかな。


「ちょっとした自慢ですね。『こんな人に会ったよ』って同業者に見せるための。あ、俺もお願いします。親父に自慢できるので」


 というか君に関しては俺と同レベルの有名人の子孫だよね。

 お父さんに自慢しても意味なくない?

 ま、減るもんじゃないからするけどな。

 王の護剣ってアヴェル以外、こんな感じなのか?

 もしかしてアヴェルもサイン、欲しかったとか…。

 いや、そんな事はないと断言したい。

 もし仮にそうだったら俺が抱いてるアヴェルの印象が崩壊する。

 今回の件で初対面で抱く印象はどれほど違うものかって事を学んだな。

 

これで残りは二人ですね!

アヴェル、ヘイス、ウルミナが今まで出ている王の護剣です。

三人とも魔族です!

それではまた次の話で!

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