57話 明かされる秘密
タイトル通りです。
植物園を出る頃には太陽が地平線に沈みかけていた。
俺はレイとエイジを寮まで送った後に学園長の寮、というか自宅に向かった。
植物園の鉄塔で出会ったシエラという少女について訊くためだ。
「学園長、居ますか?」
「どうした?こんな休みの日に」
学園長は居間で煙草を吸いながら本を読んでいた。
ヘビースモーカーではなさそうだが煙たいなぁ。
「植物園の鉄塔について訊きに来ました」
「ああ、あれは周辺の魔力を調整するために配置した魔導具だよ」
「へ~、あの少女が魔導具ね」
俺が少女の事を言うと学園長は煙草を灰皿に押し付けて読んでいた本に栞を挟んでこっちを睨んだ。
これは禁断の領域に足を突っ込んじまったか?
「どこまで知っている」
「鉄塔の中にシエラという少女が居た所までです」
「そうかそこまで知ってしまったか」
「監禁でもしているんですか?返答によっちゃあ陛下に報告しますよ」
頼む学園長、あんたを信じさせてくれ。
最悪な返答だけはしないでくれ!
「…ん!?何で覚えているんだ?」
「…何のことですか?」
「まさか龍君、今日の出来事を全て覚えているのか?」
はい?何を言ってんだこの人は?
「確かに俺は百歳を越えてますけど物忘れはヒドくないですよ」
百歳を越えてるからって物忘れがヒドいとでも思われているのか!?
というかそれとこの件に何の関係があるんだ?
「いや、あの子に近づいたら記憶が飛ぶ筈なんだが…。まさかその魔眼の力で!?」
魔眼の力?
ちょっと訊いてみるか。
「少し待っていてください」
おい、魔眼、何か知っているのか?
『…そういえば昼頃に外部からの魔力干渉を跳ね返したぞ』
外部からの魔力干渉?
そういうのがあったら報告しろよ。
まあ、礼を言っておくありがとう。
「何か跳ね返したらしいです」
「そうなのか。…まあ、それなら話しても問題はないな。ゼロ・コントロール状態は習ったよな」
「習いましたよ」
個力が暴走するあれだろ。
ということはシエラは個力使いなのか。
「先ほど記憶が飛ぶと言ったよね」
「確かにそう言いました」
記憶が飛ぶってどういうことなんだ?
…アリスとキャラが被ってる気がする。
「彼女は君のように個力を二種類持っているツヴァイと呼ばれる者なんだ。そして暴走した個力は拒絶、能力は可能な限りの絶対的な拒絶」
「…よくわからないんですが」
「ま、深く考えないでくれ。例えば拒絶を持つ者に下級魔法を撃った。するとどうなる?」
「避けないと当たります」
当然の答えだ。
魔法を知らない俺でもわかる。
「普通ならその通りだ。しかし、拒絶を発動するとその攻撃は当たらない」
「要はそれを発動していたら攻撃は当たらないのか…。無敵じゃん!」
「可能な限りだ。個力や中級以上の魔法は無効化できない。まあ、その応用的な感じで彼女は自らの存在を拒絶した。つまり、周りから自分への認識を消し去ったのさ。私もこの彼女が自分について綴った本がないと彼女の存在を忘れそうになるんだ」
「何か解決策はないんですか?」
「前にも彼女はこのような状態になったそうだ。その時にある花を見せたら治ったらしい」
だからシエラは植物園に居るのか!
カモフラージュだけではなくシエラのゼロ・コントロール状態を治すために。
「その花の名前はなんですか?」
「それがわからないんだ」
「じゃあ、家族に聞けば…」
「彼女の家族は全員、亡くなっている。ゼロ・コントロール状態になったのもそれが原因だ」
精神的なショックによりゼロ・コントロール状態になったのか。
それは辛いだろうな。
世界から逃げたくなるわけだ。
そして知ってしまった俺のすべきことは一つ!
「学園長、俺にやらせてください。その花を俺が見つけます!」
「…頼めるか?」
「はい、もちろん。…そういえばもう一つの個力は何ですか?」
「精神観測者、相手の心を読む個力だ。だから彼女に近づく際は不用意なことは考えないことだな」
確かにそれは気をつけた方がいいな。
龍はシエラを救うことができるのか!?
次回は久しぶりフィアナ登場させます!
それではまた次の話で!




