40話 狼の捜索
龍達は空き巣のようなことをします!
以上!
俺達はスラム街の路地裏に行きそこに設置してある魔力メーターを確認していた。
「これで五十軒目」
「何処も動いていませんね」
五十軒も回ったが何処も動いていなかった。
シアン先輩の言う通りスラム街の住人は電気や水を使わないようだ。
これは予想が外れたか?
「ボクの知る限り、ここの人達って電気や水を使わないからね」
「フラメルはスラム街に良く来るのか?」
「ボクのことはアリスで良いよ!そうだね。授業をサボった時に良く来るよ」
「その話、後でゆっくり聞かせてもらいます!」
シアン先輩が鬼の形相になってる。
風紀委員長の前でそんな事を言うから。
…良く来ているのならスラム街の変化に気づいてるかもな。
「じゃあ、最近になってから何かおかしなことってあったか?」
「う~ん。…あ、そういえば昨日」
「昨日?」
声まで変わり始めた。
これ以上、地雷を踏むなよ。
シアン先輩ってマジであのフィアナの姉ちゃんなんだな。
怒った時の口調が物凄く似ている。
「一週間前」
シアン先輩に睨まれて日付を変えやがった。
日付を変えても怒られるのは確実だぞ。
「スラム街の広場に行った時、ここら辺では見かけない人が歩いてたよ」
「それって」
「おそらく、貪狼騎士団の下っ端ね。で、その人達、何処に行ったかわかる?」
「スラム街にある古びた屋敷に」
「もしかしてあそこ」
シアン先輩の顔が青ざめた。
何かその屋敷にあるのかな?
「うん、幽霊が頻繁に目撃される屋敷だよ」
「私、幽霊とか苦手なんだけど」
半分、幽霊みたいなヤツが隣に居ますよ。
魔族ってホラー系に入りますよ。
っていうか幽霊なんてこの世に存在しません。
「幽霊なんて迷信ですよ」
「え!?龍っち、幽霊を見たことないの!」
何その幽霊が存在している前提の話。
てか、この世界は誰でも幽霊が見えるの?
そんなの怖すぎでしょ。
「見たことない。てか、『龍っち』ってなんだ?」
「龍のあだ名!」
会って間もないのにアリスの中での俺の信頼度や親密度ってどうなってんだ?
「フィアナも『フィアナっち』って呼ばれてます。アリスは友達として認識している人には名前の後に『っち』を付けているようです」
…逆にそれほど人を信頼しているのなら授業に出るよな?
それよりも、そう呼ぶ関係の友達とは遊んでいるのか?
「シアンっちは残るの?」
「風紀委員長ですし行きますよ!」
流石は風紀委員長!
だけど、
「気絶はダメですよ」
「しません!」
「フィアナから『お姉ちゃん前に気絶した』って聞きました」
「あの子は…!」
シアン先輩が説教した後にフィアナに殴られるな。
いつでも殴られていいよう気を引き締めないと。
龍達は貪狼騎士団が逃走しないよう急いで目的地に向かう。
しかし、シアンは目的地が幽霊屋敷のせいで渋ってるのか歩みが遅い。
だが目的地は遠ざかることなく徐々に近づいている。
そして遂に幽霊屋敷が目に見える場所に到着した。
「マジで何か出そうだな」
屋敷の門は長い年月の影響で劣化して外れている。
手入れをしていたと思われる庭は雑草が生えて、水を勢い良く出してお客様を迎えていたであろう噴水は砕けていた。
そして屋敷の窓ガラスはかなり割れており、壁は腐ってるようにも見える。
幽霊屋敷っつうよりかはただの廃墟じゃないか。
「双眼鏡で見たけど動いてるわ」
「持ち主は?」
「不明よ。スラム街の住人はこの屋敷を怖がって住もうとしないわ」
住人すら近づかないマジものの幽霊屋敷かよ。
というかあえて言わなかったけどスラム街に何でこんな立派な屋敷があるんだ?
スラム街の住人には失礼だけど場違いすぎるぞこれは。
「確証はないが旅行でこんな所に泊まる奴なんて居ないよな」
「宿泊していたのならば王国騎士団に突き出します」
頼むから貪狼騎士団であってくれ~。
じゃないと鬼が暴れるから。
「どう入りますか?」
「そのためのアリスよ。アリス、屋敷の中で目立たない場所に移動できる?」
「できないよ」
シアンはアリスの頭を鷲掴みした。
こんなシアン先輩、初めて見たんだけど!?
「正直に答えなさい!どうせ中に入ったことあるんでしょ!」
「ある!ある!あるから離して!」
フィアナといいシアン先輩といい怒ると怖いな!
まあ、フィアナの怒りは理不尽な怒りだけどな!
「よろしい」
「龍っち、手を握って」
「手を?」
「うん!」
俺はアリスの手を握った。
すると、
「空間歩行者発動!…到着!」
屋敷の小部屋に着いた!
「瞬間移動じゃん!」
「こういう使い方もできるんです。さて、張り切って探索しますよ。気を引き締め」
「シアンっちシアンっち」
アリスはシアンの肩を叩く。
まるで構ってほしいかのように。
「何ですか話の途中で」
「幽霊」
おお!変な白い靄が人の形をしてる!
これが幽霊ってものか!
「シアン先輩、俺、初めて幽霊見ました。…シアン先輩?」
俺は刺激された好奇心を伝えたくシアン先輩の方を見た。
そして先輩は俺とは真逆で恐怖と驚きのあまり固まっている。
本当に付いて来て正解だったのかこの人は!?
「シアン先輩!しっかりしてください!」
シアン先輩、まさかここまで怖がりだったとは…。
ということで屋敷に侵入します!
許可?主がいないのでとってません!
それではまた次の話で!




