29話 逆ギレの王子
まあ、アイザックがいろいろとやらかしてくれます。
風紀委員会に顔を出そうとしたが思っていたより、時間が過ぎていたため寮に戻った。
部活動終了は六時、門限は遅くて十一時だ。
そうそう、この世界の一年は向こうの世界の一年と同じく三百六十五日である。
それとフィアナにレイのことを訊いたが個力の事は全く知らないそうだ。
何の個力かは知らないがレイが『個力使いだ』という事だけは知っていた。
この認識は生徒共通らしい。
そして何の変化もなく翌日を迎えたのだが教室に行くと俺の机が無くなっていた。
「酷い!誰が盗んだんだろう」
おそらくアイザックだろう。
盗んだというよりかは壊したの方が正しいだろうな。
朝早くからこんな事をするとはご苦労なこった。
「龍!絶対に犯人を捕まえて懲らしめてやるから!」
「犯人探しは時間の無駄だ。創造」
それに個力で創れるから盗まれようが壊されようが関係ない。
いや、備品がなくなるから学園長には関係あるのか?
「でも、むしゃくしゃする!」
「何でフィアナが?」
「何でだろう?」
「知るか」
予想だがアイザックはこうやって嫌がらせをしていき段々とエスカレートさせて精神的に追い詰める。
そしてエレノアから男を引き剥がしてきたのだろう。
なのであえて乗らなかった。
相手にする方がバカバカしい。
更に昼休みにも嫌がらせをされた。
移動教室だったので自分の教室には居なかったからだ。
嫌がらせの内容は机にイタズラ書き、そして花瓶とどこで撮ったのか俺の写真が置いてあった。
解除した方が良かったな。
「ねぇこれってもうイジメのレベルを超えてるよね」
「頭にきた!龍!先生に言おう!そして犯人を殴る!」
「…先生には言うな余計にイジメが悪化する。それに先生に言ったとしてもロクに対応はしてくれない。教師というのはそういうものだ。創造発動」
「ティルミッド先生はそんな先生では」
「悪いティルミッド先生を悪く言ったんじゃない。…俺の経験からだ。親父の仕事の関係で別荘に住んでた時にこの容姿というか余所者?のせいかイジメられていたんだ。先生に言っても叱るだけで何も対処されず元の町に戻るまで続いた。戻る時に知ったことだがそのいじめっ子のリーダーはその田舎の偉い人の子供だったとさ。その教師は上の奴らの顔色をうかがっていたんだよ。…この話はここで終いだ!フィアナ、花瓶をぶっ壊せ!」
まあ、二度と会うことはないだろう。
あれ以来、その別荘には行ってねぇし。
はぁ、マジであの時は辛かった。
まず第一にイジメを生徒から相談されたなら叱るだけではなくもっと根本的に対処しないと消えんぞ。
それに無視してもエスカレートするだけだから余計にたちが悪い。
何でそんなつまんねぇことやるかねぇ?
「…わかった!」
フィアナは花瓶を粉々に砕いた。
無論、破片が飛び散らないようにゴミ袋の中でだがな。
その花瓶の破片が入ったゴミ袋を片付けに行こうとしたらエレノアが後をついてきた。
「龍、これはアイザックの仕業です」
「だろうな」
「注意して止めさせます」
「大丈夫だ」
こういうのは注意したらエスカレートするものだ。
そしてエレノアに八つ当たりするだろう。
「それに俺は平気だ」
昼休み以降、アイザックからの嫌がらせはなかった。
挑発に乗らなかったので諦めたのかと思っていたがそれは俺の勘違いだ。
そんな勘違いをしている事に気づかず寮に戻ると部屋の前に野次馬が集まっていた。
「何かあったの?」
フィアナは野次馬を飛び越えて部屋に戻った。
人の上をまたぐなって教わらなかったのか?
「どうした?こんなに群がって」
「龍君とフィアナちゃんの部屋が…」
俺達の部屋がどうかしたのか?
部屋の前に行くとフィアナが泣き崩れていた。
俺は恐る恐る部屋の中を覗くと部屋は荒れてベットは破壊されクローゼットの中身は散乱、俺の物は全て部屋の外に放り出されており水道は破壊されて水浸しになりベット同様家具はほとんど壊されていた。
俺が甘かった…。
あのクズがこんなにも常識外れだとは…。
本気で怒ったのは久しぶりだ。
「すまん、誰かフィアナを泊めてくれないか?」
「私の部屋でいいなら…龍君は?」
「明日は休みだし徹夜で部屋を直す。が、その前に用事がある。フィアナ悪かった」
龍が立ち去ってからの話しだがそこにいた一部の女子生徒は龍に対して恐怖を感じていたらしい。
背筋を走った強烈な悪寒と励ましの言葉を掛けたくても口が開けない威圧感。
この時、初めて龍は魔族の王としての風格を見せたのだった。
そして龍は男学園へと走っていき新聞部の扉を開ける。
「龍!どうしたのかなぁ~」
「レイ、普段アイザックが居る場所を教えてくれ」
「個人情報は教えられないなぁ~」
「教えろ」
龍はレイに少し脅し気味で訊いた。
手段を選んでる暇がないからだ。
(…怒ってるね。この目、まるで獲物を狩る竜のようだわ)
「今日は部活動があるからそこに居るわ。乗馬部、学園の後ろの森の横にある牧草地よ」
「感謝する」
龍は急いで牧草地に向かった。
「アイザック!!」
「おやおや、龍君ではないか。何かあったのかい?」
馬から下りてきたアイザックを俺は殴った。
普段は感情を抑えて話すが今は何故か抑えれない!
あの時もあの時もあの時もあの時も!
何でテメェは平然とやってのける!
「そんなのテメェがよく知っているだろ!」
「何のことかさっぱりだ」
アイザックは痛みを感じていないのか涼しげに笑い飛ばした。
「シラを切る気か!」
「『シラを切る気か』と言われても僕は何も知らないからね」
「あんな事をしてもか!!俺に何をしようが構わないが他の奴を巻き込むな!」
龍の堪忍袋が切れた理由はアイザックがフィアナを泣かせた事だ。
龍は自分が何をされようとも徹底的に無視するつもりだったがフィアナを泣かされて遂にキレたのだ。
「だから何も知らないって!君はそんなに僕のことを疑いたいのか!」
知らない!?疑いたいのか!?
この現状を見てこいつはわからないのか!
また、我を忘れた龍はもう一度、アイザックを殴る。
アイザックはそれにより鼻血が出た。
「…少し大目に見ようと思ったが王子である僕にする事か!?死刑だ!死刑にしてやる!」
「王子なら尚更だ!それにテメェが王子だと…。ふさげるのも大概にしろ!王子なら民を導き国をよくする存在!だがテメェは王子、いや、人の風上にも置けない行動をした!その行動が王子としての義務なのか!吐き気がする!…決闘だ!俺はテメェに決闘を申し込む!俺が勝ったらこの学園から立ち去れ!決闘は明日、拒否権はない!」
「わかったその申し込み受け取ろう!僕が勝ったら君は広場で首切りだ!」
龍は怒りを露わにしたまま牧草地を立ち去っていく。
他の乗馬部は怖じ気ついて馬から落ちていた者もいる。
また、馬は龍の風格に怯えて興奮状態になってたという。
生物の本能にさえ龍の怒りは響いていた。
「やるね龍」
「レイ、頼み事がある」
「何?…うんうんなるほどなるほど!任せて」
「アイザックを潰すぞ」
この日、初めて龍は怒りの感情のままに行動したのであった。
「僕達の初めての共同作戦だね」
「ああ!」
こうして次の日、クズと俺は決闘することになった。
というわけで次回!
アイザックVS龍!
怒りに燃える龍はアイザックと直接対決します!
それではまた次の話で!




