262話 戴冠式幕間⑤
龍VSフレイヤ!
騎士団相手の戦闘は初めてですね。
今回はフレイヤの個力御披露目!
今まで登場してきた個力とは一味違います!
今回も後書きなし!
「…あの陛下、それにはどういう意図が?」
それはまさに突然の出来事、自分の上司の上司に当たる人物からの試合の申し込みである。
その申請者、騎士団総長が一介の騎士ならまだしも、この国の騎士団総長は皇帝が務めている。
おいそれと『はい、了解しました。全力でいきますね』と承諾できる話ではない。
龍が騎士団総長ではないにしろ相手はこの国の皇帝、フレイヤが困惑するのには充分すぎる理由だ。
「別に大した理由ではない。俺は半年後、いや、下手したら一ヶ月後にゴットフリードと戦わなければならない。で、今ふと思った。お前ら団長、副団長クラスを倒さなければ俺はゴットフリードましてや国主には勝てないなって」
まあ、自分でも本当に今更な話だと思っている。
フレイヤ達に勝てなければ俺は国主にすら勝てない。
そんなのいつかは誰かに言われるし、気づかされる事だ。
…それにガイ先生はユルグルイト王国の元騎士団長だとジェイス学園長から聞いている。
フレイヤ達に勝てないのならばガイ先生を越えることなんてできない。
あの人と俺は真っ正面から話し合いたい!
当然、そのためにも俺は強くならなければならない!
まずはフレイヤで今の自分の力量を確かめる!
(…そうは言っているけど恐らく別の理由があるのだろう。その思いを蔑ろにするのは騎士の行いに反する!)
「承りました。一介の騎士として全力でお相手致します」
こうして始まったフレイヤと龍の試合、修錬場は非番や待機中の騎士で溢れた。
いや、職員までもが修錬場に繰り出して一時的ではあるが第一騎士団本部が休業状態になっている。
この試合を知って見逃そうとする者はまず存在しない。
あの転校生とおてんば少女の試合、転校生と元王子の試合とはレベルが違う。
ルシフェル大帝国皇帝とルシフェル大帝国第一騎士団副団長の一戦なのだから。
「これより第一騎士団副団長フレイヤ・クルーガー対、…えっと」
ああ、俺を対戦者として呼び捨てにするか悩んでいるな。
「呼び捨てで構わない」
「…ルシフェル大帝国二代目皇帝ノボル・インフェルノの試合を始める!決着は一方の試合用バリアが破壊された時のみとする!」
試合用バリアとはこの腕輪型の魔導具から展開されている全身を覆う膜のようなバリアの事である。
このバリアの耐久性は使用者と同じになるよう設定される。
要するにこのバリアの膜は使用者のコピーだ。
例えば筋肉体質の使用者、痩せ型の使用者が攻撃された場合を比較てみる。
すると筋肉体質の使用者はそれなりにダメージを抑えれるが痩せ型の使用者はかなりのダメージを受けてしまう。
体を鍛えた、鍛えていないと身に付けた身体能力が耐久力に反映されるのだ。
言ってしまえば心臓を一突き、首を落とす等の絶命に直結する行動をすれば一撃で相手を倒せる。
更には魔法での防御力強化や回復も反映されてしまう。
実戦味を帯びた練習試合をするのには持って来いの魔導具だ。
「双方、準備の方は?」
「ちょっといい?…ありがとう。陛下、個力って不思議なものですね。まるで魔法のように様々な事を行える。例えば雷を体に纏ったり、片方の目で死の運命を目視したり、剰え自分専用の武器庫を持てる。以上です」
…いったい何を話したかったんだ?
自分の個力のことか?
だが会話にその様な内容を伝えるフラグは見当たらない。
ただ緊張を解すため?
「…はい。いつでも行けます」
考えても仕方がない!
敵が快く自分の弱点を話すか?
それと同じ、仮にヒントを与えられたとしても今の話は忘れろ!
「それでは試合開始!」
「創造発動!」
龍は試合開始と同時に個力を発動させた。
そして上空に何百もの刃を創り出す!
「先代流刃雨!」
龍はこの何度も使用してきた初見殺しの名前を改めて叫んだ。
先代流、則ちルシフェルから学んだ創造の扱い方だ、その全てがあの分厚い本に書かれている。
その本でこの技の名前を知ったのだ。
流石にこれで決着が付くとは考えられない!
仮にこれで終わったらフレイヤを副団長の席から下ろす!
「…個力荒神万象流発動、陸刀荒潮蜿蜒」
龍が放った刃雨をフレイヤは荒潮の激流の如くうねる蛇のようにジグザグな動きをして素早く打ち落とした。
この動きこそが荒神万象流陸刀目荒潮蜿蜒である。
しかし、刃雨を打ち落とされた龍はいつになったら次の行動に移すのだろうか?
それほどフレイヤの動きに感動してしまったのか?
いや、流派が個力になることに対して驚いているのだ。
「嘘だろ。流派って個力になるのか…」
「ええ、『個力は不思議なもの』と先ほど仰いましたよね」
ああ、確かに個力は不思議だよ。
けどまさか流派が個力になるとは思いもしなかった!
…でも、ゼロの事例を出すと個力の基準は明確ではないと理解できる。
個力は何でもありを具現化する力!
何が起こっても不思議ではない!
「伍刀」
抜刀の構え!
まず前方に斬りきるのは間違いない!
だからとりあえずは岩壁で進行と攻撃を妨害する!
(岩壁で防御に出るのは読めてましたよ。だから伍刀を使用したのです!荒神万象流は荒々しき神の如く舞い、この世の全てを師として仰ぎ模倣する流派!)
抜刀体勢のまま移動して背後に回った!?
両手を塞いだ状態で攻めるとかよっぽど相手の攻撃を交わす自信がないとできないぞ!
っていうか移動よりも転移の方が正しい!
岩壁が完成する寸前にまるで転移魔法を使用したかのように背後に回ったんだ!
「瞬雷!…この抜刀速度に反応するとは流石」
「突然、現れる物には慣れてるもので…」
創造で瞬間的に創った武器に変更するのは慣れている。
だから半ば強引に何も考えずに武器を創れたが耐久性がいまいち!
爺ちゃんは例外として、今まで戦ってきた相手はそれなりに目立つ隙は見られた。
けどフレイヤはほんの一瞬しか見せてくれない。
しかもそれを良かれと思い攻めたとしても命取りになる!
これが副団長クラスの実力!
そんなのを『越えろ』とか無理難題にも程がある!




