247話 天賦贋作
一気に終盤まで持っていきますよ!
決着は次回です。
「撤退するつもりは?」
「ないよ!」
ゴットフリードは一直線に矢を放った。
対象はアヴェル、ヴィクトリアは遊び相手から除外されている。
しかし、新たな玩具は取扱注意のラベルで包まれている。
その証拠に飛んできた矢を剣で真っ二つに両断して、その勢いのまま前進する。
そして再び飛来した矢は至近距離にも関わらず回避した。
(あれを回避するか!)
「遅い。汝に刻まれしは復讐の誓い!追放の果て望まぬ死地に至る!」
(灼熱の咆哮の詠唱を至近距離で!?こんな受ければ続行は困難!何としても突き放す!)
ゴットフリードは灼熱の咆哮の直撃を避けるために縦横無尽に動き回る。
しかし、走れど走れど二人の間隔は少しも変わらない。
つまり、アヴェルはゴットフリードど同等の速さで走っているのだ。
遂にゴットフリードは逃走を止めて障壁を張り、魔法を防ごうとする。
だが、その隙に腹を蹴られて魔法発動の妨害をされた。
「それ故に高潔なる骸は頤を開く!彼方の大地より灼熱を伴いて!灼熱の咆哮!!」
「古語るは不落の城壁!!」
それでもゴットフリードは多大なる量の魔力を犠牲にして無詠唱で古語るは不落の城壁を発動させる。
これにより攻撃は防げたが瞬時に仕上げたせいか接触と同時に崩壊した。
そしてゴットフリードは弓矢を構えて反撃に出る。
だがアヴェルならば突貫で仕上げた防御魔法が崩壊ぐらい予想できる。
そのため灼熱の咆哮を防御魔法の誘発目的で放ったのだ。
故にこれが本命である。
「雷虎双爪!!」
よし!今のは剣技は直撃した!
魔法の崩壊を想定して剣技での追撃!
まさに魔術師と剣士の戦いを混成させたやり方だな。
しかも強引に膨大な量の魔力を消費させた。
連合王相手に一手で優勢に持ち込むとかヤバすぎだろ!
「確か山羊座は逃走能力を持っていましたね」
「回復!!」
「大人しく敗走しますか?」
「端から使わねぇよ!」
というか闘争心を刺激する挑発も入れやがった。
確かに立場や性格が相俟って逃走は取らねぇよな。
「弓技!」
アヴェルは雷虎双爪を当てて距離を取った。
一方でゴットフリードは回復で怪我を癒して今度弓技で反撃に出ようとした。
恐らく、普通に矢を放っても打ち落とされると思ったのだろう。
だが弓技を放つ寸前で弓が消滅した。
射手座の時間が終わり、逃走能力だけの山羊座の時間になったのだ。
「「宴への強襲はちぐはぐを生む」」
(タイミングが悪い!山羊座は逃走特化の能力、つまりは逃走時のみ発動する能力なんだよ!)
その隙にアヴェルは再び距離を詰めて攻撃を仕掛ける。
御自慢の個力が劣勢に至ったゴットフリードは防戦一方だ。
そしてアヴェルは近距離戦という一度の判断ミスが死へと繋がる状況の最中で詠唱を開始した。
またもや至近距離で魔法を直撃させるつもりだ。
だがゴットフリードも同じ手を簡単には使わせない。
ヴィクトリアの魔法を封じたように魔法封じを放った。
魔法封じは光弾を放って相手に直撃すれば発動する魔法だ。
それを全方位を囲まれたヴィクトリアに当てるのは容易い。
ましてや今回の対象は至近距離、目と鼻の先に居る。
要するにそんな外れもしない状況を説明して何が言いたいのか?
何とアヴェルは光弾が放たれたのと同時に体を捻らして回避したのだ。
これにはゴットフリードも驚きのあまり絶句する。
詠唱を防ぐことができずに極寒の咆哮が直撃してしまった。
更に無詠唱で誘発雷撃を当てた。
この魔法は次の水瓶座の対策に繋がる。
水瓶座の主たる能力は水属性魔法を大幅に強化するだ。
誘発雷撃は水属性魔法の発動をキャンセルさせて代わりに同威力の雷属性ダメージを与えてしまう。
これでゴットフリードは迂闊に水属性魔法を使えなくなった。
「まだやりますか?山羊座のうちに撤退した方が身のためですよ」
「…いいや、まだ運に見放されていない。古語るは不落の城壁!!」
(防御魔法をどうしてこのタイミングで?…切り替えが速い!)
「「大きな瓶は氾濫を呼ぶ」」
(違う!防御目的ではなく時間稼ぎが狙いか!)
「水の球!」
古語るは不落の城壁を発動させた真の目的は時間稼ぎである。
誘発雷撃は水属性魔法ならば何だって反応してしまう。
初級魔法の水の球だとしてもだ。
それにより今のゴットフリードは何の警戒もせずに超強化された水属性魔法を放てる。
ゴットフリードは土壇場でアヴェルを追い越した。
「地上に遍く生命は退廃へと至った!故に恐れ敬い慟哭を上げて迎え入れろ!それは星の代弁者!荒波の如く粛正を下す者!咆哮轟かし天を下れ蒼き竜よ!蒼帝降臨!!」
蒼帝降臨、上空から竜を模倣した大量の水が降り注ぐ魔法である。
そして最後には巨大な竜王が対象に襲いかかる。
この魔法は紅龍来迎や樹龍天昇等の来迎と天昇の上に位置する。
その水属性魔法こそがこの蒼帝降臨である。
そんな蒼帝降臨が発動したのと同時刻に龍とレンによる星降る庭園も目撃された。
本来ならば戴冠式当日の帝都には星以外にも水竜が降り注いでいたのだ。
本来ならば、ということは蒼帝降臨は発動しなかったことになります。
しかし、現に蒼帝降臨はちゃんと発動してますよ。
まあ、それはとある疑問が解決してくれます。
それではまた次の話で!
ちなみに水属性の来迎、天昇は蒼龍来迎と海龍天昇です。
蒼帝降臨は優しい側面ではなく怒った側面というイメージですね。




