243話 厄災の魔人ゴットフリード
ヴィクトリアVSゴットフリード!
かなり苦戦しますよ。
「思ってた以上にガキだな。歳は?」
「今年で二十四歳になります」
「礼儀正しいな。あれか?先代にでも叩き込まれたか?」
「…いや?支配者としては当然かと。それより元気にしてますか先代は?」
「らしいな。相変わらず現役でやってるよ」
ディルフェアン連合は勇者一行に与した諸国の末路であるが意外にも善の心を持つ王が一人だけ存在していた。
それがゴットフリードの言う先代である。
礼儀正しく善良で賢人、先代が即位していた期間中のディルフェアン連合はかなり大人しかった。
だが、それは五年ばかりしか続かずゴットフリードに敗れて以降は六魔王と手を組んだ国で騎士団団長を勤めている。
まあ、そんな事は後程わかるとして今は目の前の事案を先に解決すべきだ。
ゴットフリードは先代を十五歳の時に倒している。
つまり、青年の頃より実力は折り紙付きだ。
果たしてヴィクトリアは彼を撃退できるのか?
「さて、挨拶はここまでにして殺り合おうか」
「…そこは同感だ。いつまでも仲良しこよしで話してたら埒が明かん」
「…個力天を統べるは十二の王発動。正義は地上を見捨てた。カウントダウン開始。そうそう、部下には手を出さないように伝えているから安心して」
「舐められたもんだな」
名前からして十二星座に関連する個力だろう。
…恐らく時間差で能力が切り替わると予想できる。
ってことは能力は十二種類あると思っていた方がいい。
私も流石に個力を発動させるか。
「個力幻想刻む時計塔発動」
「その時計、壊しても大丈夫系かな?」
「私の個力だよ。破壊不可能な物体を出現させる個力があるくらい知ってるだろ?」
「やっぱり、アルターと同じタイプか」
ヴィクトリアが個力を発動させると背後に時計塔が出現した。
時計塔の高さは彼女の身長の二倍程度だが霧に飲まれていて全体は確認できない。
これが幻想刻む時計塔、保持者に支援を行う時計塔をその場に出現させる個力だ。
そしてヴィクトリアが凱旋という無敗を象徴する称号を送られた由縁でもある。
「じゃあ、先攻はもらうとしよう!」
…真っ直ぐこちらに突っ込んでくる。
何かを仕掛けた素振りは見られない。
強いているのならは個力発動後の言葉か?
とりあえず障壁でも張って防ご……。
なるほど、そういう能力か。
「刻め」
ゴットフリードは直進して拳を振り下ろす。
だが攻撃対象は正面ではなく背後で武器を構えていた。
場所の入れ替りや転移ではなく別の手段で彼女は攻撃を回避したのだ。
「…流石に反則じゃない?自分だけの時間を進めるとか」
「未来位置に転移しただけだよ」
幻想刻む時計塔は保持者を未来位置に転移させる能力を持っている。
未来位置とは保持者が指定された時間に居る場所の事だ。
また、指定時間は長針が一に進むのならば十秒後、二に進むのならば二十秒後と長針が指す数字掛ける十倍で求められる。
そして現在、長針は一を指している。
そのためヴィクトリアは十秒後の未来位置に転移したとわかる。
それ以外にも能力はあるが、それは追々説明するとしよう。
「というかテメェには言われたくはない。障壁が無効された。それと能力も上昇しない。さしずめバリア無効と強化無効の能力か?」
「初見で見破るの?いやぁ、こんなの久しぶりだ。五王家ってそんな感じなの?」
「はっ。私より強いヤツなんてゴロゴロ居るわ。…個力発動後の言葉と現在の能力から予測すると乙女座だな。現在の月からスタートするんだろ?」
「うわっ、それは初めてだね。うん。君の予想通り今は乙女座の能力を使っているよ」
天を統べるは十二の王、九月発動時には乙女座から開始される。
この個力は月日と密接な関わりを持っている。
例えば蟹座から始めたければ六月二十二日から七月二十二日に、魚座から始めたければ二月十九日から三月二十日となる。
そして現在は九月六日、乙女座の月日だ。
また、乙女座の能力はバリア無効及び強化無効の能力である。
だが、能力はランダムな時間で切り替わる。
要するに切り替わるタイミングはゴットフリードにすらわからない。
けれども次にヴィクトリアの相手をするが天秤の王だとは理解できた。
「…魔族化百パーセント」
「ま、種族差を活かすよね」
「いや、年齢差を活かす」
ヴィクトリアは普段から考え事が多い性格なので瞬時に次の一手を導き出せます。
まあ、元第四騎士団団長の社長ですからね。
それと連合王先代が逃げた国は物語の重要な舞台になります。
けど、かなり先のことです。
それではまた次の話で




