209話 式典数時間前
まだ式典は始まってません。
皇帝陛下お目覚めシーン
時間的には7時前
「…流石に『今までの全ての出来事は夢でした』なんて展開は起きてないよな」
昨日までとは違う現実味のない朝が訪れた。
まあ、異世界に転校した時点で現実離れしてはいるのだが戴冠式の朝になるとまた違ってくる。
何度も思うことだが平凡な日常ほど素晴らしいものはない。
学園で初めて迎えた朝も平凡な日常とさほど変わらなかった。
…いや、訂正する、まともな状態で自室で目覚めた時のだ。
よくよく考えたら初っ端の俺って変な場所で目覚めているよな?
まあ、そんな事は置いといて今日は平凡な朝ではない。
平凡な日常に別れを告げて一国の皇帝としての最初の一歩を踏み出す朝だ。
「さてと二度寝する前に動くか」
龍がベットから起き上がるとドアをノックする音が聞こえてきた。
そして音の主はレンではなくフローレンスだった。
「起床されていますか陛下?フローレンスです」
「今、起きたとこだ。朝食の準備ができたのか?」
「左様でございます。失礼致しましす」
フローレンスはドアを固定するとキッチンカートを寝室に入れた。
喉の渇きを潤す飲料水だけなら納得できる。
しかし、飲料水以外にもサンドイッチにベーコンエッグ、温かい野菜スープに新鮮なサラダと朝食一式が積まれていた。
ルシフェル大帝国の皇帝は寝室で朝食を取る習わしがあったという訳でもなく今回は時間短縮のためだ
「ん?この部屋で食べるのか?」
「はい。戴冠式という事で御着替えや準備の方にも多少の時間を要します。そのため今回は特例で寝室での御食事となります。…やはり御不満が?」
「いや、大丈夫だ。そのまま続けてくれ」
「畏まりました」
龍の承諾を得るとフローレンスは寝室の一角からテーブルと椅子を魔法でこちらに動かす。
そして手際よくテーブルに朝食を載せていき一礼を入れて龍にナプキンを着ける。
また、この一連の動作を受けた元凡人の龍は何とも言えない表情で席に座った。
「ありがとう。いただきます」
これぐらい自分で用意はできるが赤ん坊に戻った気分だ。
だが自分で用意するとフローレンスの仕事を取ってしまう。
…皇帝として仕方がないが当たり前にしないよう気をつけよ。
「恐れ入りますが本日の予定を伝えます。あ、陛下はそのままお食事を続けてください」
「わかった。その前に式典開始は何時からだった?」
「九時からです。また現在の時刻は七時五分ほど、お着替えは三十五分後の七時四十分からになります」
「移動の時間を考えると約五分前には食べ終わった方がいいな」
「はい。ですが焦らずに噛み締めてください。式典開始まで約二十分の余裕を作っておりますので」
朝食を取りながら俺は戴冠式の全体の流れを聞いた。
また、戴冠式の開始時刻はアヴェルから列車の中で事前に聞いたものと変わらず九時からだ。
…原稿も動作も列車の中で王の護剣と練習してきたが本番に勝てるか不安だ。
そして現在は朝食とその後に控えていた着替えも終わって八時三十五分、残り二十五分で戴冠式が始める。
次回は御披露目パレードの準備!
それではまた次の話で!




