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21話 エルフの欠点

例のエルフ登場します!

「早く着替えてさっさと食堂に行くよ」


 …さっきから腹の調子が悪いなぁ。

 走ってる時は調子が良かったのに急にこうなった。

 …思い当たる節はあのサンドイッチだけだが…。

 いやいや、それは絶対にない!

 あの時に気になったことをフィアナに聞いてみるか。


「なあ、この学園ってマントを羽織るのか?」


「いえ、生徒会だけよ。生徒会長一名、副会長、書記、会計が二名よ。男女両方に生徒会はあるわ。それと実力さえあれば龍も生徒会長になれるわ」


「選挙じゃなくて?」


「確かに選挙制なんだけど生徒会って治安維持のために動員させるからある程度の武力も求められるの。決闘の時にも動員されてたでしょ?」

 

 そういえば動員されてたな。

 それと実力があっても生徒会長にはなりたくないな。

 だってめんどくさそうだし。


 そんな話をしながら二人は寮の食堂に移動して朝食を済ませた。

 そして、そのまま校舎に向かって今は玄関前に居る。


「マジで内部構造が変化している」


「だから最低でも十分前には玄関に居なきゃ遅刻する」


 フィアナはポケットから携帯を取り出して何かを調べている。

 仮に携帯が使えない状態で朝を迎えるとこの学園の生徒は大変の目に遭う。


「…五階ね」


 何故ならこの様に教室の場所を調べる手段がなくなってしまうからだ。


「携帯で教室の位置がわかるのか?」


「用務員さんが朝早くに調べてるからね」


「朝から大変だなこの学園の用務員さんは。…で、階段で行くのか?」


「疲れるから嫌!五階まで二百五十メートルもあるのよ。飛んで五階の玄関まで行くわ」


 二百五十メートル建ての学園なんてあっちでは聞いた事ないぞ。

 まあ、この学園はその三倍はありそうだが。


 ユルグレイト学園は各教室がある階に広々としたバルコニーのような玄関がある。

 これは生徒の多くが階段を使わずに移動するからだ。

 なので一階に玄関があるとはいえ必ず使われているとは限らない。


飛行(フライ)で五階近くまで飛ぶけど龍は使えるの?」


「まだ魔法の『ま』の文字すら出てきていませーん」


 学園に来て俺は一度も魔法を使っていない。

 そんで欲を言うのなら早く使ってみたい。


「そうなの。…しょしょうがないわね。一緒に運んでやるわ!ほら、早く握りなさい!」


「いや、別の方法で行く」


「言っとくけど翼を出すのはダメよ」


 そういえばそんなの生えてたな。

 魔族と知ったのが最近だからすっかり忘れていた。


「まあ、見てろって。創造(クリエイト)発動!」


 龍が創造(クリエイト)を発動させると足元の地面が膨れ上がり龍を五階玄関まで運ぶ。

 創造(クリエイト)で土を増やしたのではなく、元からある土に創った土を乗せたのだ。


「土を創って積み上げることのより五階と同じ高さにしたわけね。それができるのなら早く言いなさいよバカ。飛行(フライ)」 


 龍よりやや遅れてフィアナも五階玄関に辿り着く。


「よっと…。校舎に入らず何やってんの?」


 フィアナが五階玄関に着くと龍が腹を押さえて悶え苦しんでいた。

 気のせいだろうか表情が徐々に青く染まってきている。


「いや…なんか急に…腹の中に…雷が出現した…」


(要するにお腹壊したのね)


「なんか変なの食ったんでしょ」


「フィアナと一緒の食ったけど…」


 フィアナに変わった様子はないな。

 ということは俺だけが当たったのか!!


「ああれは龍が私のと同じヤツを頼んだからよ!」


「悪いが俺の方が先に注文していた」


 超絶腹が痛てぇー!!何だよこれ!

 向こうの世界でもこんなことなかったぞ!

 何かの副作用かぁ!?


「…拾い食いした?」


「する訳ないだろ!…そういえば生徒にサンドイッチもらった」


「まさかエルフからもらったんじゃないでしょうね」


「よくわかったな。そう…だ」


 それを聞いたフィアナは龍がこの様な状態に陥ったのか原因を理解した。

 それと同時に『またあの子は毒物を盛ったな』と思い、そのことを知らずに悶え苦しむ龍に同情する。


「龍、今日はまともに授業を受けれないよ。トイレは真っ直ぐ行って二つ目の角で右よ。安心して男子トイレもあるから」


「あざっす!先生に『遅れる』って言っといてくれ!」


 龍はトイレの場所をフィアナから聞くや否やまるで銃身から放たれた銃弾の如く突っ走っていった。

 だが、その様な状態になっても龍の本質は変わらない。

 速くトイレに行けばいいもののその行動で驚かしてしまったクラスメートにすれ違い際に謝罪を述べている。

 なお、決闘の翌日に様々な誤解は解けている。


「ええ、先生に事情を言って休ませてあげるから」


「龍君、何かあったの?」


「味覚音痴にやられた」


 それはさて置き龍が早朝に出会ったエルフも五階玄関に降り立った。

 この行動から察するに龍と同じクラスのようだ。

 その子が来たのを確認するとフィアナは近づき挨拶をすると思いきや叱るような声で名前を呼んだ。


「エレノア!!」


「フィアナさん?どうかしましたか?」


「あんたの毒物のせいで龍がお腹を壊したでしょうか!」


「私はとても美味しいサンドイッチをあげただけですよ?」

 

 エレノアと呼ばれた少女は優しそうな笑顔で微笑む。

 まるで『毒物など入っていません』と正々堂々、裁きの神の前で証言するかのような自信に満ち溢れた笑顔で。


「あんたの味覚がおかしいのよ!」


「そうでしょうか?」


 彼女の名はエレノア、女学園の生徒会長だ。

 そして名字はユルグレイト、要するにこの国の王女である。

 文武どちらとも優秀で容姿性格も地位も完璧かつ女学園最強。

 そんな彼女の唯一の欠点が超絶味覚音痴である事だ。

 なので家庭科の調理実習では彼女だけ一人の班になるのだ。

 噂では彼女が作った料理の味見をした執事やメイドが二十人ほど倒れたとか。

 今回はそんな味覚音痴なエルフのお姫様の物語。


「あぁ~助かった~」


 トイレは天国だぁ~。

 

さて、お腹を壊した龍は大丈夫なのでしょうか?

無事ではありません(-_- )

それではまた次の話で!

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