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201話 第四騎士団帝都滞在用駐屯地

第四騎士団団長登場、そして再会。

 ルシフェル大帝国騎士団を知らぬ者はこの世に居ないとされている。

 起源もルシフェルと初代五王家当主が対魔王軍へ反撃する時に各地から終結した猛者達で編成された軍団と古い歴史がある。

 そして現在は第十騎士団まであり第一騎士団以外は九つの地方に散らばっている。

 これは第一騎士団が帝都を管轄しているためだ。

 だが地方を担当しているとはいえ定期報告や会議等で帝都に滞在する事は珍しくない。

 なので龍とヴィクトリアが訪れたこの第四騎士団滞在用駐屯地のように帝都には第二から第十までの滞在用駐屯地が置かれている。


「団長、ヴィクトリア様がお見えです」


「通すな。さっさと帰らせろ」


「いやいや、そんなつれない事を言わずに入れてくれよヴィン兄ちゃん」


「もう入ってんだろ!関係者以外立ち入り禁止だ。というか『兄ちゃん』呼び止めろ。普通に呼べ気色悪い」 


 おお、双子独特の上下関係が曖昧の会話だ。

 仲が悪そうに見えるが絶対に普段から笑顔が絶えないぞこの二人。


「残念だが今の私は関係者なんだよなぁ」


「妹だから関係者ってか?問答無用で牢屋にぶち込むぞ」


「この方の顔を拝みなさい」


「『この方』だと?…ちょっとこっちに来いヴィクトリア!!」


 おっと俺が明日の主役だとわかったのかヴィクトリアを連れて部屋に入っていたぞ。

 来る途中でヴィクトリアに聞いたけど名前は確かヴィンセントだったな。

 何というか『ヴィクトリアが男だったら絶対にこの姿だ!』と言いたくなるほど雰囲気も見た目も似てた。


「ヴィクトリア!!何で明日の主役を連れ出してんだ!?何で俺の永久忠誠兼護衛対象と一緒に居るんだ!?」


「クラウスが連絡した筈でしょ?『王の護剣二名に遠くから護衛させるので自由にさせてください』ってさ」


「だからってその管轄はウルミナとヘイスだろ!俺が訊きたいのは何でお前があの二人の代わりに護衛してんだって事だよ!」


「それには深い理由があってね」


 ヴィクトリアは龍と合流する発端となった演劇場でのトラブルについて理解してもらうよう説明を始める。

 そしてヴィンセントは妹の行動に反論の余地がないのか黙り込んだ。

 それでも今の状況については反論したいのか再び喋り出す。


「今までの経緯は理解したが何で俺んとこに来た!!今すぐ城に送れ!」


「ヴィンセントの仕事を見せようと来たのさ。さっきの表情、マジで笑える。ま、これは冗談なんだけどな」


「だろうな。ヴィクトリアがそんな無駄な事をしないのは俺が一番わかっている。あいつの事だろ?」


「ああ、久々の再会だ。存分に話し合いな龍様」


 二人は真剣な眼差しになり、お互いが見てきた因縁の二人が果たしてどの様な再会を遂げるか心配になる。

 龍とその者は未遂には終わったが嘗て殺し合いをした関係である。

 この再会が何の意味になるのかは二人すらもわからない。

 だが起爆剤になろうとも二人を再会させなければならない。

 まだ夏の余韻が残る長月の始まり、喜びを交えながら戦友と時を分かち合い談笑する声が廊下に響き当たる。

 そして呪縛から解き放たれた少年は羽化したばかりの皇帝と久方振りに顔を合わす。

 以前は叫声を上げて振るっていた筈の剣は落ちて少年は感涙と共に跪く。

 涙を堪えながら必死に振り絞った第一声はこうであった。


「私めに居場所を下さり誠にありがとうございます。一層の忠誠をあなた様に捧げたい所存です」


 少年の名はアイザック・シュトルツ、元だがシュトルツ騎士王国第二王子でありながらも犯罪シンジケート貪狼騎士団に所属していた者である。

 だが、それは忌まわしき過去の経歴、これまでの罪を償うが如く心身の鍛錬を積み重ねて戦友からの信頼を物する。

 幼き日に憧れた立派な騎士様。

 でも、振り返れば深淵の底に堕ちてた夢。

 それでも憎んでいた筈の彼が救い上げてくれた成りたかった自分。

 諦めきれずに必死に足掻いて掴み取った誇らしき未来。

 気づけば彼は憧れた騎士に成っていた。

 

次回、本格的にアイザックとの話し合いをします。

一応、戴冠式前にやりたかったことです。

それではまた次の話で!

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