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200話 皇帝とスラム街

二百話目、行ったぞ-!!

欲を言うのなら戴冠式の時に迎えたかった!

というのは置いといて今回はスラム街の住人と交流する話です!

「そんなに慌てるな!一列に並んで並んで!!邪な考えを起こさずとも必ず一人一人に三日分の生活ができる量は配るからな!」


「ライズ君!ここは暫く大丈夫だから空いた食器を片付けてくれ!」

 

 ライズとは俺が即興で考えついた偽名である。

 龍を昇に変えて英語に翻訳したらライズだ。

 我ながらかなり良い出来だと思うな。


「魔法の使用は!」


「構わないが子供は好奇心旺盛だから、そこんとこは気をつけろよ!」


「了解です!」


 そんじゃま魔法使用の許可を貰ったし円滑に進めますかね!

 ちなみに個力は俺の意地的なもので使いたくない。

 それに俺は創造(クリエイト)に頼りすぎてる。

 なので、いい機会だから魔法で食器を洗う。

 

「かなり弱めの水の竜巻(ウォータートルネード)を借りてきた空き桶に入れるっと。…最後に食器が割れないよう使っていた支えを使って食洗機みたいにする。重力増加グラビティアディション付与」 


 龍は水の竜巻(ウォータートルネード)で食器を優しく洗う異世界版の食洗機を作り上げた。

 支えも重力増加グラビティアディションにより浮かないよう固定してある。

 宣言通りに魔法のみで食器を洗うことに成功した。

 そして異世界版食洗機によって食器は次々と洗われていく。

 また、その光景に興味を惹かれたのかいつの間にか子供達が龍の近くに居た。

 しかし、近寄りがたいのか物陰から見る程度である。


「見たいのなら近くで見てもいいぞ。これに触らなければな」


 声をかけてみて正解だったな。

 友好的な相手だと教えた瞬間に全員がこっちに来た。

 今日、初めて来た見ず知らずの奴がやってる事だし無理もないか。


「お兄さんって属性をいくつ使えられるの?」


「苦労はしたが全属性を使えれる。…と誇らしげに言いたいが別に君達でもできるぞ」


「え?本当に全属性の魔法が使えるようになるの?」


「ああ、ある程度は各属性に扱いの差は出るがバランスよく鍛えればできる」

 

 これは爺ちゃんから学んだことだ。

 例えば炎属性に長けているが水属性もある程度は使えるといった感じになれる。

 一部の属性が極端に長けている人でも深部には必ずそれ以外の属性があるんだ。

 それを深部に落とさないようになるべく水平状態にするだけ。

 ま、学園にも取り入れられているので、これから属性差が出ることはないだろう。


「でも、そんな時間、俺達にはないよ」


「そうそう、空いてる時間があれば境界から出て仕事を貰ったり、物を売ったり、外に行って薬草を摘んでくるもん」


「今日はヴィクトリア様がご飯をくれる日だから早めに帰ってきたの」

 

「僕達は明日を生きるのが精一杯だからね」


 言わなくてもその格好を見ればわかるよ。

 ヴィクトリアもこうやって配給はしているが限りはある。

 いや、したくてもできない時もあるのだろう。

 彼らが過度に与えられる存在になるのを避けるために見守っているのだ。

 ヴィクトリアが直々に雇ってもいいが、それも与える。

 自分の手で職を見つけてこそ自立ってもんだ。

 だが与えなければ彼らは死んでしまう。

 微妙な距離感を保つのって難しいものだな。


「そういえば明日は戴冠式だな。君達はどんな皇帝が冠を受け取ると思う?」


「強い人!ルシフェル様の血筋だよ!絶対に強い人に決まってるよ!」


「強い人でも優しくないと嫌よ!ヴィクトリア様に貰った絵本に出てくる王子様みたいに優しい人がいい」


「ぼ僕はこの生活を変えてくれる皇帝がいいです…」


「そうか。きっとそんな人だと思うよ」


 君達の理想には程遠いと思うが俺もなるべくは頑張ってみるよ。

 あ、気づいたら全て洗い終えている。

 乾燥も洗ってる最中に思いついて既にやったから問題ない。


「さてと食器を竜車に運ぶとするか」

 

「お疲れさん。乾燥もしているのか、よく考えついたな」


「まあ、普段から色々と創ってるので簡単でしたよ」


「ところで子供達と何を話してたんだ?」


「…今後の方針ですかね?」


 配給は終了して片付けが始まった。

 スラム街の代表として腰の曲がった老人がヴィクトリアにお礼を述べている。

 一方で龍はボランティアの方々と協力して後片付けを進めている。

 黎明期を過ぎているが今日の経験は龍にとって刺激ある最高のものになった筈た。

 次に彼らに会うのは恐らく不要な仮面を取り外した戴冠式のパレードの時かもしれない。

 竜車はスラム街を去ってインフェルノ国際空港の倉庫にテント等の積載物をしまう。

 そして一匹を残して竜はペオル家が所有する竜舎に帰って行った。

 残された一匹は言わずとも龍を送るために走る竜車を引く竜である。


「…予想以上に早く終わってしまったな」


「何か問題でも?」


「問題はないが日が暮れるまで時間があるからな。仕事が残ってるのなら送るが寄った際に『滞りなく定時上がりできそうです』って自信満々に言ってたしなぁ」


 うん、空港の定時上がりってマジでなんなの?

 聞いた所によると飛空艇の夜間の飛行はよっぽどの事態じゃないと行わないらしい。

 夜の空は夜行性の魔物の縄張りになるので対処が難しくなるからだとか。

 それに夜間飛行する際は事前に着陸予定地に連絡している。

 そのため今の流れからいくと今夜のインフェルノ国際空港には夜間飛行の連絡が来てない事になる。

 というか便の数も向こうの世界よりもかなり少ないそうだ。


「よし、兄をからかいに行くか」


「…今なんと?」


「兄をからかいに行く。私が操るから乗ってくれ」


「騎士団長だからお忙しいでしょ?」

 

 と言いつつも興味あるから乗るんだよなぁ。


「心配いらん。毎度の如く団員をしごいているだけだ」


 突拍子のないヴィクトリアの思いつきにより龍は第四騎士団帝都滞在用駐屯地に向かうことになった。


 

超絶久々にあの元王子が帰ってくる!

果たして改心したのか!?

次回、ヴィクトリアの兄とアイザック・シュトルツ登場です!

それではまた次の話で!

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